埼玉勾玉ガールズ
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コーヒーをゆっくり飲んでから再び三十分ほど散策。
ホテルの部屋に戻ってきた俺の視界に入ってきたのは――。
「じゃーーーん! どうっ!? しゅーくんっ! 瑠莉奈ちゃんも二三香ちゃんもすっごくかわいくなったでしょーーーー!?」
菜々美はライブのときのようなアイドル衣装をまとっていた。そして、手を(白い手袋を装着した完全なライブスタイルである)バッと後方に勢いよく向ける。
「……お、おにぃ………」
「しゅ、修人ぉっ……!」
そこには同じくアイドル衣装をまとって、恥ずかしそうに身をちぢこまらせる瑠莉奈と二三香の姿。
菜々美とお揃いだが、みんな胸元が開いており露出度が高い。
あと、腋の下も露わだ。それと、臍も。
テレビでお馴染みの衣装なのだが、リアルで見るとかなりキワドイ。
そして、メチャクチャかわいい。輝いて見える。というか、実際に衣装がキラキラしている。
「ほらほら、ふたりともー! 胸を張らないとだめだよー! せっかくのかわいい衣装なんだからー! かわいさを全力アピールする! プロ意識足らないよーー!」
衣装を着たことでアイドル魂が刺激されたのだろう。
菜々美は部屋の隅にいたふたりに手を伸ばして強引に立たせた。
「はい! それじゃ、さっき練習したようにポーズをとる! いくよー!」
菜々美が真ん中、瑠莉奈が左、二三香が右にポジションをとる。
まずは、菜々美が――。
「わたしたち埼玉勾玉ガールズです! わたしはリーダーの玉瀞菜々美!」
菜々美は万歳するように両手を高らかに伸ばした。
続いて、瑠莉奈が――。
「…………越草瑠莉奈……です……」
瑠莉奈は右手でピースサインを作って顔の横に持ってくる。
よくアイドルがやる横ピースサインというやつだ。
嫌々やっている感がモロに出ていた。
「戸川二三香ですっ!」
二三香はヤケクソ気味に横ピースサインを作って(瑠莉奈と対になるような左手ピースである)、ビシッとポーズをとる。
これは……なんというか反応に困るな。
いや、まぁ、かわいいのだが……。
「しゅーくん! リアクションが薄い、薄いよー! そんなことじゃマネージャー失格だよーー! ここはわたしたちを絶賛して気分を盛り上げないとダメーーー!」
菜々美からも厳しい指導が飛んだ。
すっかりアイドルモードである。
「……わ、わかった。……三人とも、すごくかわいいぞ!」
実際、三人はかわいい。
なので、全力で褒め讃える。
「もっと! もっとだよ、しゅーくん! 大絶賛してよーっ!」
厳しいな。