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生贄と化粧

「……おにぃがコソコソ隠れて菜々美ちゃんの写真集を見てニヤニヤしている姿は実にキモイものがあった……」


 ぎゃああ!? 見てたのか瑠莉奈ぁ! 


「えへへ♪ しゅーくん写真集ちゃんと堪能してくれてたんだね~! ありがとう~~~♪ やっぱりしゅーくんわたしのこと大好きだよねぇ! えへへへへ~~~♪」


 菜々美がどんどんデレデレていく。

 俺としては恥ずかしさで体温が上がる一方だ。


「で、でも、俺よりも二三香のほうが菜々美グッズをいっぱい持ってるぞ! コンサートやイベントにも欠かさず行ってたし!」


 俺はイベントやコンサートにはほとんど行っていない。


「そ、それは……そうだけど……」


 二三香はモジモジする。


「わああ♪ ありがとう~♪」


 再び菜々美は二三香をハグする。

 愛情表現が過剰だ。


「……こうなったら、菜々美ちゃんと二三香さんでくっつけばいい気がする……そのほうが絵的にはいい気がする……」


 まぁ、確かに瑠莉奈の言う通りそのほうが美しい。


「むうう、でも、わたし、しゅーくんひとすじだし! 二三香ちゃんみたいにかわいい女の子大好きだけど!」

「か、かわいい? あたしなんて、そんな、ぜんぜんかわいっくないですよっ……!」

「ううん、そんなことない! ちゃんとかわいい衣装着て軽くお化粧すれば芸能人になれるよー! 菜々美ちゃんが保証する! 絶対にアイドルになれるー!」


 菜々美は二三香の両肩を掴むと熱弁する。

 まぁ……素材的には、二三香を悪くないとは思う。

 この体育会系っぽさをなくせば、かなりよくなるのでは?


「それじゃ暇だし、二三香ちゃんをかわいくするー! あと瑠莉奈ちゃんもー!」

「ええっ!?」

「……瑠莉奈も……?」


 菜々美の思いつきに二三香が驚きの声をあげ、瑠莉奈は首を傾げる。


「そう! せっかくの逸材を眠らせておくのはもったいないよー! 午後には神寄さんも来るし、さらにかわいくしたふたりをお披露目しちゃうーー!」


 相変わらず菜々美は突拍子がないというか行動力の塊だな。

 でも、かわいくなったふたりを見てみたい気もする。


「ふたりを神寄さんの生贄(いけにえ)にして、わたしは楽をするー! もう馬車馬のように働きたくないー!」


 打算の塊だった!

 でも、この三人でアイドルグループを作ったら面白そうだと思ってしまう俺もいる。


「よーし! 燃えてきたよー! ふたりをめちゃくちゃかわいくしちゃうよーー! メイク道具あるしーー! あと、会社の人に頼んでふたりにあう衣装も持ってきてもらうーーー!」


 菜々美は荷物の入っているトランクを開けると化粧箱を取りだした。


「しゅーくんは、ちょっと部屋の外に一時間くらい行っててね! お化粧の過程は乙女の領域だから! 秘密の時間!」


 そんなものなのだろうか……。

 まぁ、菜々美の好きにさせよう。


 俺は言われたとおり部屋の外に出ることにした。

 ちょうどいい。少しホテルを出て、外を歩こう。


 なんだか昨日今日と室内にいてばかりだからな……。

 そういうわけで……俺は外へ散歩に行くのだった。


菜々美「みんなーー! 応援よろしくねーーー!」

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