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籠城と落城

 このまま捕まってしまったら、一巻の終わりだ。

 上杉謙信モードになっている菜々美と野戦になってしまったら、俺の理性に勝ち目はない。

 なら、ここは――。


「籠城モード!」


 俺は勢いよく湯船に入った。


「あー! しゅーくん! 体洗わないでお風呂入っちゃダメだよーーー!」

「やむをえない状況だ」


 俺は湯船の中で体育座りになってガードを固める。

 なお、寿司を食べに行く前に菜々美は湯を入れておいたようだ。


「むうぅうぅう~~~…………」


 菜々美はいつもよりも長く唸り声をあげる。

 なにかしら策を考えているようだ。


 しかし、今の俺は無敵の忍城モードである。

 童貞守備力は格段に上がっているのだ。


「こうなったら力攻めあるのみだよ!」


 というか菜々美の行動に力攻め以外の選択肢がこれまでにあっただろうか?

 そんな疑問を浮かべたときには、菜々美は湯船に突入してきた。


「亀の陣!」


 俺はさらに両手足を縮こまらせて体育座りを強化する。


「むうう~! 鶴翼の陣!」


 菜々美は両手を広げる。

 それ絶対に鶴翼の陣じゃない。


「荒ぶる鶴の舞!」


 だからそれ絶対に鶴翼の陣じゃない!

 というか、両手を広げる=胸が思いっきり強調される!

 なんという凶悪な凶器! 大量破壊兵器!


「しゅーくん覚悟ぉーーーーー!」


 菜々美は両手を広げたままこちらに突進!

 そのまま俺の顔面を真正面から抱きしめた!


 思いっきり顔面にあたる大量破壊兵器!


 だが、俺は誇り高き坂東武者の末裔だ!

 こんなものに屈するわけにはいかない!


「力攻めぇーーーーーーーーーーーー!」


 しかし、敵もさる者。

 軍神上杉謙信の猛攻もかくやという勢いで、怒涛のおっぱい押しつけ攻撃を敢行してくる。

 これが毘沙門天か。 


「んぐぐぐぐぐぐぐぐおおおおおおおお!」


 これでは昼間の二の舞だ。

 耐えているだけでは負ける。

 ならば――反撃しかない!


「んむうううううううう!」


 俺は両手を伸ばして菜々美の肩を掴んで押し返す。


「むうう!? 負けないよ! しゅーくぅん!」


 菜々美は俺を抱きしめる力に手をこめた。

 菜々美はパワフルアイドルなだけあって、パワーがある。

 アイドルの筋力すごい! 文化系の俺なんかより腕力がある!


「んむぅううううううううううあああああああ!」

 

 再び顔面に思いっきりおっぱいを押しつけられて呼吸が止まる。

 やっぱり菜々美は強い、強すぎる……! ただの埼玉県民の俺では抗しきれない。


 やっぱり、初めから勝てない戦いだった……。

 西国の大軍に囲まれたような気分になりながら、俺の意識は遠ざかっていった……。


 ………………。

 …………。

 ……。


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