アグレッシブすぎるエキセントリックアイドル
「それじゃあ、待望のお風呂タイムだよー! 今度は全裸で!」
「だから自重してくれ!」
「『自重』って、わたしの一番嫌いな言葉なんだよ! 人生一度っきりなんだよ! 全力フルパワーで生きないと!」
菜々美が言うと説得力はあるけど、それを認めらると俺の貞操の危機が強まる。
「しゅーくん! いつでもわたしを押し倒していいからね! バッチコーイ!」
もうやだこのエキセントリックアイドル……。
こうやって全力で「よっしゃこーい!」みたいにされると、逆に引いてしまう。
いやまぁ、贅沢な悩みなんだろうけど……。
しかし、さすがに全裸の菜々美を前にして自重し続けることができるのか?
鉄壁の童貞守備力を誇る俺ですら、厳しい気がしてくる。
そして、頼みの綱の瑠莉奈がいなくなってしまった。
絶対的ピンチである。
「えへへ~♪ もうわたしからは逃げられないよ~、しゅ~くぅ~ん♪」
両手の指をワキワキさせながら迫ってくる菜々美。
まさかトップアイドルから、こんな迫り方をされる日がくるとは……。
「……わ、わかった。一緒に風呂に入ることについては許可する。しかし、一線を超えることだけはダメだ! だって、俺たちまだ再会して一日だろ? もっとお互いのことを知って愛情を確かめあってから、そういうことはするべきだっ!」
なんで童貞の俺が健全な愛について熱弁せねばならないんだ……。
「むうぅ……さすが、しゅーくん……手ごわいよぉ~……」
いや、菜々美のほうが遥かに手ごわいから。
というか、エキセントリックすぎるから。
ここまで振り切れてるとホラーの領域だから。
「……でも、うん! それでこそ、しゅーくんだと思う! こうして再会するまで十一年もかかったんだから、すぐに攻略できちゃうのも面白くないかも!」
ハイパーポジティブシンキングな菜々美は、あくまでも前向きにとらえてくれたようだ。
というか、押しが強すぎて押しきられるのも時間の問題な気がする……。
「よーし! それじゃ、しゅーくん! 一緒にお風呂ターイム!」
そう言うや菜々美はいきなり服を脱ぎ始めた!
せめて脱衣所で脱いでくれ!
「きゃーーーーーー!」
早くも下着姿になった菜々美を前にした俺は悲鳴をあげて、浴室へ向けてダッシュで逃げだした。
「あ、待って、しゅーくん! わたしから逃げないでー!」
逃げるだろ!
なんで見た目は完全な清純派アイドルなのに、行動が大胆かつ極端なんだ!
本当に露出狂か!
……ともあれ俺は脱衣所へ避難した。
しかし……。
「しゅーくん! 逃げても無駄だよー!」
当然のことながら菜々美も脱衣所へ入ってくる。
これで俺は袋のネズミだ!
「しゅーくん! 早く覚悟を決めて! ほら、脱いでー!」
菜々美は俺の服に手をかけると強制的に脱がしにかかった!
「ひぃい!? ケダモノーーー!」
「実力行使! 突破あるのみだよーーー!」
パワフルすぎるというか肉食すぎる!
アイドルの貞操観念はどうなってるんだ!
そんな自問自答も虚しく、俺は圧倒的全裸にされてしまった!
「あはは♪ しゅーくん、すっぽんぽん~♪」
そこ笑うところか!? アイドル怖い!
「見ちゃだめぇ!」
俺は情けない声をあげながら両手で股関を隠す。
そして、浴室へ退避した。
「しゅーくん待っててねー♪ 今わたしもヌギヌギするから~♪」
背後からは菜々美の声。
俺としては密室でガクブルするしかなかった。




