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暴走アイドルと修羅のマネージャー

※ ※ ※


「菜々美ちゃん、だめでしょう~? いきなり自転車で爆走して逃走するなんて~」

 

 家に入って部屋に上がってきたのは、スーツ姿かつメガネの女性だった。

 年齢は三十歳くらいだろうか。ほんわかした雰囲気に、ふわふわした髪。


 ニコニコした笑みを絶やさないといった感じなのだが……よく見ると笑ってない。

 強烈なプレッシャーを放っている。


「……あ、う……うぅ~……」


 菜々美はさっきまでのバーサーカーモードからは打って変わって、嘘みたいにおとなしくなっていた。


 なお、ベッドから下りて、自発的に床に正座状態である。

 それだけ、この人が恐ろしのだろう。


「急に申し訳ありません~。申し遅れましたが~、わたしはこういう者です~」


 スーツ姿のメガネ女性は、名刺を差しだしてきた。


 そこに書かれていたのは『タマサキプロダクション マネージャー 神寄修羅子(かみよりしゅらこ)』の文字。


 どうやら菜々美のマネージャーのようだ。

 やはり菜々美を連れ戻しにきたらしい。


 というか、すごい名前だな……。


「ううう……わ、わたし、絶対に戻らないもんっ! 絶対にしゅーくんと結婚するもん!」


 しかし、菜々美の決意は揺らがないらしい。

 勢いを取り戻して抗弁する。しかし――。


「菜々美ちゃん~、これ以上、勝手なこと言わないでくれますか~? あなたの暴走のせいで、いろいろな方面に迷惑がかかってるんですからねぇ~~?」


 声のトーンが低くなっている。怖い。


「ううっ……」


 菜々美もプレッシャーに負けたのか、黙りこんだ。


「…………ところで~……しゅーくんさん~?」


 神寄さんは俺のほうへ視線を向けてきた。


「は、はいっ……!? な、ななな、なんでしょうかっ!」


 ただならぬプレッシャーに声を震わせつつ、どうにか応える。

 なんでニコニコしてるのに、こんなに怖いんだ……。


「あなたが本当に菜々美ちゃんと幼い日に結婚を約束した相手なんですかぁ~?」

「…………そ、そうです……」

「……ふ~ん……そうですかぁ~……なるほどぉ~……」


 なにがなるほどなのだろうか……。

 神寄さんは俺のことを値踏みするようにジロジロとねめ回した。


「ちょ、ちょっと、修羅子さん! しゅーくんは関係ないですー!」

「大ありじゃないですかぁ~?」


 菜々美の抗議は、瞬時に神寄さんに斬って捨てられる。


 ……まぁ、実際問題、あれだけ公共の電波で俺の名前を叫ばれたので無関係とは言えないだろう。というか、完全に当事者である。


「……ふむ、菜々美ちゃんは強情ですからねぇ~……ここはいっそ逆に考えたほうがいいですかねぇ~……もう全世界に拡散しちゃっているような状態ですし~……」


 神寄さんは思案するように顎に手をあてると、あらためて俺の顔をジッと見てきた。

 今度はニコニコ笑顔ではなく、真剣な瞳で――。


 ……なんだろう、すごく嫌な予感がする……。


「…………わかりました~。それじゃあ~、しゅーくんさんはうちの事務所で働いてもらいましょうか~。ぜひぜひ、菜々美ちゃんのマネージャーになってください~」


「はいぃ!?」


 思いもしない展開に、俺は驚いた。


「それがベストだと思うんですよ~。うちの事務所としては菜々美ちゃんにやめてもらうとトンデモナイ損失になりますし~……菜々美ちゃん、どうですか~? しゅーくんさんが一緒ならアイドル続けるのはオッケーですよね~?」


「えぇえっ!? やだー! わたし、今すぐしゅーくんと結婚したい! もうアイドルやめるぅ! 専業主婦になるぅーーー!」


 菜々美、暴走しすぎだ。


「しゅーくん! わたし、これまで稼いだお金たくさんあるからっ! 生涯しゅーくんを養えるくらいの貯金あるよっ! 働かなくていいから! ずっとわたしとラブラブしようねっ!」


 菜々美の意思は無駄に固そうだった。


「……おにぃ……ヒモになるの……?」


 瑠莉奈から冷たい視線を向けられる。


「ち、違う、俺はヒモになんかならないから!」

「えぇっ!? やだよぅ! しゅーくん働いちゃやだー! 家にひとりでいてもつまんないー! おうちでずっとわたしとイチャラブし続けよう! 子どもは五人くらいほしいー!」


 菜々美、本当に暴走しすぎである。


菜々美「みんなーー! 応援してねーーー!」

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