GoTo高級寿司店
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あれから俺は謝罪行脚という名の菜々美と偉い人の触れあいタイムにつきそい続けた。
みんな菜々美を前にするとデレデレになるので、謝罪なんてないようなものである。
罵倒を所望する人は、ほかにもいたが、まぁ、萌豚社長ほど酷くはなかったのでよしとする。
かわいいは正義。かわいいは無敵。かわいいはメチャクチャ得だということを目の当たりにした一日だった。世の中理不尽だ。
ちなみに途中からは「弊社期待の新人瑠莉奈ちゃんです~」とか言って、瑠莉奈が紹介されたりしていた。ほんとに瑠莉奈、芸能界に行くつもりなのか……。妹の心は秋の空のように変わりやすい。
まぁ、兄としては最終的には妹の意思は尊重せねばならないが。
「ふぁー、今日は疲れたよー」
「……疲労感……」
そして、俺たちはホテルに帰ってきた。
すっかり夕飯どきだ。
「しゅーくん♪ 美味しいご飯食べよ~♪」
「……ハラペコ……カロリーを所望する……」
ちなみにホテルには超高級感溢れるレストランなどが入っている。
俺なんかの財力じゃ一食すら払えなさそう。
「しゅーくん! お金なら大丈夫だよ! わたしいっぱい稼いでるからー! ここのホテルに入っているお店も全店制覇してるしーーー!」
もうなんというか俺たちと住む世界が違すぎるな……同じ年齢なのに。
なんだか情けなくなってくる。
「しゅーくん、気にする必要なんてないからね! わたし、しゅーくんとイチャラブするためだけにこれまで稼いできたんだから! しゅーくんと一緒の時間はどんな金銀財宝よりも勝るからー!」
といってもなぁ。
「……おにぃ……マネージャーとなって稼ぐべき……このままでは、ただのヒモになってしまう……」
本当に情けない。もしこのまま瑠莉奈までアイドルになって稼ぐようになったら、俺だけただの高校生である。ある意味、外堀を埋められている。
やっぱり俺も働かねばならないのか。
「しゅーくん! まずは美味しいものを食べよう! 今日はしゅーくんと久しぶりに会えた記念日でもあるんだから! お寿司がいいよね! お寿司にしよう! 高級お寿司ーー!」
相変わらず菜々美はテンションが高いな。
というか、今日はいろいろなことがありすぎた。
まるでジェットコースターに乗ってるいるかのようだった。
「……お寿司……じゅるり……」
瑠莉奈は寿司好きなので、大いに反応している。
俺も好きだ。しかし、こんなところで食べる寿司なんて超高額だろう。
「しゅーくん! 今日はハイパー散財タイムだよーっ! トロとかウニとかいっぱい食べちゃおうーーー!」
庶民の俺にはハードルが高すぎる。
最近最も贅沢したといえば、ラーメン屋でチャーシュー麺食べたぐらいだし。
「……おにぃ……ここはごちそうになるべき……じゅる、じゅるり……」
とことん寿司に弱い瑠莉奈だった。
ここで菜々美から寿司をごちそうしてもらったら、ますます俺の立場が!
返せるアテのない借りが!
「ほら、しゅーくん! 早く、早くぅー!」
「……おにぃ、早く……お寿司、じゅるり……」
「お、おうっ……」
菜々美と瑠莉奈に腕を掴まれて、俺は強引に高級寿司店へ連れていかれてしまうのだった――。




