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 ――ヴィイイイイン!


 そこで菜々美のスマホが震えた。


「むうぅ~……! しゅーくんとわたしのエンジョイタイムを邪魔するなんてぇ~! 誰だぁーーー!」


 菜々美は頬を膨らませながらも、スマホを手にとった。

 しかし、画面を見て顔色を変える。


「どうした?」

「神寄さんから謝罪行脚のスケジュールが送られてきたよぅー! いきなり今日からー!」


 なるほど。ただ高級ホテル暮らしというわけにもいかないよな。

 (あめ)(むち)というわけか。


 まぁ……菜々美は多方面に迷惑をかけただろうからな……。

 俺の想像が及ばないレベルの額の損害を各方面に与えただろう。


「むうぅ~……! 神寄さんったらの謝罪行脚をしないとホテル暮らし中止だって言ってるぅ~! 横暴だよぅ~!」


 生放送中に俺への愛を叫んだ菜々美が言っても説得力がないけどな。

 横暴というか爆発炎上というか。


「……菜々美ちゃん、ここは神寄さんの言うことを聞くべき……」


 優秀な妹である瑠莉奈が意見具申する。


「むうう~、瑠莉奈ちゃんはどっちの味方なの~!?」


 ますます頬を膨らませてフグのような顔になって怒る菜々美。

 こんな珍妙な顔をしてもかわいいのだから美人は本当に得である。

 もはやチートだ。


「……瑠莉奈は誰の味方でもない……そのときそのときの最善を判断する………このまま神寄さんに対して後ろ足で砂をかけるようなマネをすると、のちのち絶対によくないと思う……あの人は絶対に味方にしておくべき……」


 確かに、神寄さんには底知れぬ恐ろしさがあるからな。

 あの人だけは絶対に敵に回してはいけない気がする。

 なので、俺も加勢することにした。


「……神寄さんには世話になったんだろ? それなりに筋は通しておいたほうがいいんじゃないか。今回のことで迷惑をかけた人はたくさんいるんだろうし」


 俺たち兄妹から一致した意見を言われて、菜々美のほっぺたが徐々にしぼんでいった。

 面白いな。なんというわかりやすさ。しかも、あざといのにかわいい。


「む~……確かに一理あるよぅ……」


 ようやく菜々美のバーサーカーモードが解けてくれたか……。


「まぁ、しゅーくんといっぱいキスできたから、今日のところはいっかぁ……」


 俺が意識不明になったことが、こんなかたちで役に立つとは……。


「でもでも! しゅーくん、謝罪行脚一緒についきてね! そうじゃないとヤダ!」


 菜々美は両手で拳を握りしめてイヤイヤと首を振る。

 バーサーカーモードの次はワガママモードか。


 こういうあざとい仕草をするのが体の奥底にまで沁みついているのだろう。

 かわいいし尊いからいいけど。うん、眼福だ。


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