脱ぐアイドル
ここでその提案にのるのは、どうだろう。
世間一般の感覚ではメチャクチャ魅力的な提案かもしれない。
だが、そんなものに軽々しく乗るなんて陰キャ硬派な俺としては肯定できない。
「すまん、菜々美……その提案には乗れない。というか、普通に考えてつきあってもいない男女が一緒に風呂に入るというのはおかしいだろう」
「えぇえ!?」
菜々美はショックを受けた表情で愕然としていた。
「わたしたちつきあってるも同然だよぉ!」
「……いや、でも、やっぱり菜々美と俺とはあまりにも釣りあいがとれないというか……つきあうだなんて畏れ多いというか……祟りが起きそうで……」
「だからわたしを信仰や崇拝の対象にしないでよ!」
そんなこと言ってもなぁ……。
実際に菜々美のファンは完全に信者といってもいいくらいだし。
俺もファンだから、よくわかる。
仮に祟りが起きなくとも、信者から撲殺されそう……。
つきあうとか一緒にお風呂に入るとか、もうそれ絶対に、うらやま死刑を宣告される。
私刑に処される。恐ろしい。
「……おにぃ……まぁ……賢明な判断かもしれない……菜々美ちゃんの信者……すさまじく熱烈だし……」
瑠莉奈も一定の理解を示してくれた。
それだけアイドルとつきあうということはリスキーなのである。
「でも! でもでもでもー! このホテルであったことは誰にもわからないから! 瑠莉奈ちゃんも黙っててくれるでしょ?」
「……まあ……善処しないでもないけど……でも……おにぃがデレデレしてるのを見るのはキモイので、瑠莉奈の視界の範囲外でやってほしい……」
だが、瑠莉奈の監視がないと菜々美の暴走に歯止めがかからなくなる気がする。
しかし、妹からキモイものを見る目で延々と見られ続けるのも精神的にキツイ。
ある意味、幼馴染をとるか妹をとるか、みたいな状況である。
もっとも、兄としての威厳や尊厳なんて最初からないようなものかもしれないが……。
「むぅぅー、やっぱりこうなったら押しの一手あるのみだよぉ! 脱ぐっ!」
そう宣言するや否や菜々美は本当に着ている服を脱ぎ始めた!
「ちょ、ちょっと待て、早まるな!」
「……露出狂……?」
俺たちがとめるのもかまわず菜々美は服を脱いでしまう!
そして、露わになったのは……下着――ではなく、水着だった。
白いビキニタイプである。
意味がわからない。
「じゃーーーん! しゅーくんのために着ていたお気に入りの水着だよー! これなら一緒にお風呂も大丈ぶい!」
大丈夫とVサインをかけているのか、こちらに向かってピースサインをしてポーズをとる菜々美。すごくかわいい。尊い。
「ありがたや、ありがたや……」
反射的に拝んでしまう。
「だから、拝まないでよ! ありがたがらないでよ! 信仰の対象じゃなくて恋愛対象としてわたしを見てよー!」
そんなこと言ってもなぁ……。
「……むう……さすが、アイドル……抜群のプロポーション……」
瑠莉奈は自らの貧相な体と菜々美の水着姿を見比べてショックを受けていた。
まぁ……確かに菜々美はアイドルだけあって顔だけでなく体も美しい。
というか、すごい巨乳である。
でかい、でかすぎる……。
こんなものを直視し続けたら、目と体に毒だ!
菜々美「みんなー! 面白かったらブックマークと評価よろしくねー!」




