条件は同棲!?
「条件~? それはなんですか、菜々美ちゃん~?」
「それは! しゅーくんと同棲することですっ! ともかく絶対にしゅーくんと一緒に暮らさないと嫌だぁー!!」
なにい!?
「いいですよ~。その条件、飲みましょう~」
神寄さんはニコニコしながら即座に承諾した。
「って、俺の意思は!?」
「犠牲になってください~♪ 役得じゃないですかぁ~♪」
えええ……。まぁ、言われてみればそうか。
トップアイドルと同棲なんて普通なら考えられない。
「で、でも、俺たちの住む家に一緒ってのは無理ですよ……両親は北海道に赴任してますけど……って、そういう問題でもないな……あと、すでに住所が特定されてるみたいだし」
そして、菜々美の住居に一緒に住むというのも無理がありすぎる。
それこそ写真週刊誌の記者とかが張りこんでそうだ。
「それでもわたし絶対にしゅーくんと一緒に住む! 絶対! それが絶対条件ー!」
菜々美は駄々をこねる子どものように強情だった。
「ふぅ~……なら、折衷策を出しましょうか~。これまで菜々美ちゃんを働かさせすぎていたことは事実ですからね~。ここは譲歩します~。ただ~、警備上の問題もあるので高級ホテル暮らしでお願いしますね~。もちろん妹さんもご一緒でオーケーです~♪ 通学は学校の近くまで毎朝車で送りますので~」
なんだと……。俺たちのような庶民が高級ホテル暮らしだと……?
「……おにぃ……この条件を飲むべき……瑠莉奈、高級ホテルで暮らしてみたい……」
無感情に見えるが、強い意思のこもった瞳で俺に迫る瑠莉奈。
妹は陥落した。現金な妹だ。
「むぅう~、瑠莉奈ちゃんが一緒だとイチャラブに制限がかかるよぅ……でも……しゅーくんと一緒に住めるのならホテルでもいっかぁー」
俺の意思を抜きに話が進んでいっている。
でも、家事だとかなんだとかそういうものがないのは魅力ではあるかもしれない。
「とりあえず一か月、お試し期間ということでどうでしょうか~?」
俺が悩み始めたタイミングで、ニコニコ顔で迫る神寄さん。
「……うーむ……ま、まぁ……そういうことなら……わかりました」
結局、俺は承諾することにした。
それが現状では最善の選択だと思ったのだ。
「わぁあー♪ しゅーくんと同棲~♪」
「……これで家事から解放される……」
「やれやれですね~。とりあえず、これで方向が決まりましたね~。あとはいろいろと後始末をやらないといけませんが~、わたしたちがなんとかしますので~」
昨日今日で激動すぎる。
人生はいつどこでどうなるかわからないな。
「わーい♪」
体操着&ブルマ姿で万歳して能天気に喜ぶ菜々美を見ながら、俺は未だに現実感を持てずにいたのだった……。