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反省室

※ ※ ※


「……うぅ…………あれ……?」


 気がついたら、見知らぬ部屋のベッドに寝ていた。

 窓のある壁際にダンボール箱が無造作に積んである。

 全体的に埃っぽくて雑然とした雰囲気。


 なんで俺がこんな場所に……。

 体を起こしつつ、回想する。


「……って、まさか、ここ……」


 ガチャッとドアが開く。


「……あ…………おにぃ……意識戻ったの……?」

「意識……? あ、ああ、戻った。というか、俺、気を失っていたのか……」


 尊さのあまり気絶するなんて。


「……とりあえず、神寄さんの意見に従って……おにぃを神寄さんの車に乗せ、芸能事務所に運んだ……」


 そうだったのか。まあ、いいか。

 あのまま家にいても信者に凸されるのは時間の問題だったかもしれないしな。


「……寝ている間に既成事実を作ろうとする菜々美ちゃんが怖かった……」


 そんな尊い……いや、恐ろしいことが……。


「……菜々美ちゃん、エキセントリックすぎる……アイドル、怖い……」


 瑠莉奈が露骨に怯えている。というか震えている。


「……あと、ハイパーお仕置きモードになった神寄さんも怖かった……芸能界は、とても恐ろしいところ……」


 瑠莉奈にトラウマが植えつけられてしまったようだ。

 あの般若のお面はデザインだけで怖かったからな。


 なにはともあれ、神寄さんのおかげで俺の貞操は守られたらしい。


「……菜々美ちゃん、昔は、あんなにおとなしかったのに……」


 瑠莉奈は遠い目になって、つぶやく。

 多感な年頃である瑠莉奈に教育上よろしくない影響を与えてしまったかもしれない。


 まさか菜々美があんなにエキセントリックに変貌してしまうとは……。

 テレビでも暴走キャラだったが、現実はさらに想像を超えていた。


 俺も遠い目になってしまう。


 そんなふうに兄妹揃って黄昏(たそがれ)ていると――。

 ドアがガチャリと開かれた。


 入ってきたのは神寄さんだった。

 最初に会ったときのような有能なマネージャーといった雰囲気である。


「……ひぃっ……!?」


 瑠莉奈が喉を引きつらせる。

 よほどハイパーお仕置きモードの神寄さんが恐ろしかったのだろう。


「ふふふ~♪ 大丈夫ですよ~、とって食べたりしませんから~♪ でも~、こうして見てみるとしゅーくんさんの妹さん、なかなかの美少女さんですよねぇ~? よかったら、うちの事務所に入りませんか~?」


「……ひぃいっ……!?」


 瑠莉奈は悲鳴をあげて、あとずさった。

 よほど恐ろしいものを目撃したのだろう。

 いつもは感情の起伏に乏しい瑠莉奈が悲鳴をあげるなんて。


「……まぁ、それはおいておいて~……しゅーくんさん、マネージャーの話受けてくれませんか~? うちの社長もオッケーって言ってるんですよ~……バイト代はたんまり弾みますから~」


 さすが大人。金でものを言わせにきたか。

 うーむ……。いったい、どうしたものか。


「あの……ところで、菜々美は?」

「反省室にいますよ~」


 反省室だと?

 そんなものがあるのか。


「……と、ともかく菜々美と話させてください」

「わかりました~。それじゃ、ついてきてください~」


 神寄さんに案内されて、俺と瑠莉奈は部屋を出て廊下を進み……なぜか非常階段を降りていく。


 照明が暗い。

 どこまでも続く殺風景な階段は不気味だ。


 というか、エレベーターはないのか?

 そう疑問に思いながら進むうちに、階段がなくなった。


 つまり、非常階段で降りられる最下層へ達したというわけだ。

 俺のいた部屋が何階かわからないが、ここは地下だろうか?


「…………う、うぅ……ぐすっ……しゅーくぅうん…………」


 すすり泣く声。

 間違いない。菜々美だ。


「こちらです~♪」


 神寄さんに続いて奥へ進むと鉄格子のついた部屋に出た。

 反省室というか、これ、完全に牢屋なんだが……。


瑠莉奈「……みんなの応援が励みになっている……感謝……」


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