生放送中に愛を叫んだ美少女トップアイドル~大炎上放送事故~
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それは突然だった。
「わたし、アイドルやめます! 普通の女の子になりたいんです! そして、幼い頃に大好きだったしゅーくんと結婚します!」
テレビに映っているのは、かつての幼なじみであり現在は国民的人気を誇るトップアイドルである玉瀞菜々美。
「しゅーくん! ずっと好きだったよーー! 今でも愛してるーー! わたしアイドル今日でやめるから結婚しようーーー!」
突然始まったトップアイドルの公開告白にスタジオは騒然。
観覧席からは驚愕の叫びと悲鳴。
「ちなみにしゅーくんの本名は越草修人です! もうわたし今日で絶対にアイドルやめるんだからぁ! 絶対にしゅーくんと結婚するぅううううううううーーー!」
菜々美、絶叫。
テレビ画面、暗転。
『しばらくお待ちください』
番組とは無関係な花畑の映像とともにテロップが出た。
しかし、音声は切り替え忘れたのか菜々美の「しゅーくんだいしゅきいぃー!」という絶叫と、スタッフの「おい早くとめろ!」とか「なに考えてんですか玉瀞さん!?」という怒号が響いていた……。
「……なに考えてんだよ菜々美……」
スタッフと同じようなことを呟いてしまう。
向こうのスタッフたちは怒り心頭だったが、こっちは呆然自失である。
もう十一年前とは、なにもかもが違う。
あの頃、確かに俺と菜々美は仲のいい幼なじみだった。
しかし、今の俺はただの陰キャ男子高校生。
菜々美は燦然と輝くトップアイドル。
まるで住む世界が違う。
容姿も違いすぎる。
「しゅーくん! わたし本気だからね! 絶対に結婚しよ――」
ブツッという音とともに、菜々美の絶叫も途切れた。
どうやら音声も切断されたらしい。
「……マジでどうなるんだこれは……」
美少女トップアイドルから名指しで結婚しようと叫ばれてしまった。
俺の今後の人生がどうなるのか……。というか、菜々美もどうなるのか。
完全に予測不可能である。
――ブィイイン!
スマホが振動した。
『どうなってんのよ修人っ!?』
いきなりメッセージを叩きつけてきたのはクラスメイトの戸川二三香。
陰キャの俺だが、二三香とは小学生の頃から中学、高校に至る現在までずっとクラスが一緒という腐れ縁なので連絡先を交換している。
下の名前で呼びあってはいるが、友人以上の関係ではない。
二三香は菜々美が芸能界デビューした中学一年の頃からのファンなのだ。
この歌番組を見ていないはずがなかった。
『俺のほうがどうなってるのか知りたい』
今思っていることを率直にそのまま返信した。
ほんと、どうなっているんだ。
そして、これからどうなるんだ。
『なんで菜々美ちゃんと幼なじみだったこと隠してたの!?』
『隠していたわけじゃない。あえて言うことでもなかったからだ』
そもそも人に触れ回ることでもない。
幼なじみだといったって、幼稚園時代に仲がよかったなんてノーカウント扱いだろう、普通は。
ちなみに菜々美は小学二年生の頃に東京へ転校。埼玉に住む俺とは接点がなくなってしまった。
結婚の約束をしたことは覚えているが、当然、幼稚園時代の約束なんてノーカウントに決まっているだろう。
菜々美が中学生になってアイドルデビューしたときは、本当に驚いた。
昔のこともあって、俺は密かに菜々美のことを応援し続けてはいたが……。
「まさか、菜々美が今でも俺のことを好きでいてくれただなんて……」
ありえない。ありえるはずがない。
でも、さっき菜々美は生放送中の歌番組で俺への愛を絶叫してしまった。
未だにテレビ画面は『しばらくお待ちください』のまま。
試しにツイッターを見てみると、菜々美の今回のことで一色だった。
当然、トレンド入りである。
ちょっとツイートを見てみたら、ファンたちの悲鳴と怒号によって阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
どうなるんだ、これ、本当に……。
俺は、ただ呆然とタイムラインを眺めるばかりだった。
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菜々美「みんなーー! 応援よろしくねーーー!」