どうしてやらないのか、それはやりたくないの一言に尽きる
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途中で目線が切り替わっています。
ある街に魔物の大群が押し寄せているという情報が入った。
その街の冒険者ギルドは直ちにその対策を行った。
食料や水の確保、住民の避難や魔物の侵入を阻む為の障害の補強。
そして、戦力の増強を行った。
対策をしていたものの、不安があったギルドマスターと領主はもう一押しの対策の為にある人物の元へと向かっていた。
その人物はかつて魔王を打ち滅ぼした勇者一行の弓兵だった。
是非とも力を借りたい。
そう思い、ギルドマスターと領主はその弓兵の元へと向かった。
しかし、弓兵の返事は二人の期待を裏切るものだった。
「私は戦闘に参加することはしない。補給や住民の避難などでは力になれるのではないかと思う。」
その答えは戦力の増強を考えていた二人にとっては落胆せざるを得ないものだった。
その二人は口々に言った。
勇者一行として奮っていた力をこの有事に使って欲しい。
あなたの活躍でこの街を救って欲しい。
あなたが必要なのだ。
それを聞き、弓兵は大きく息を吐いた。
「私はあなた方な言うような活躍はできない。周囲に期待させて実は大したことないなんてしれたらそれこそ士気に関わるだろう。」
しかし、それを聞いてもなお二人は食い下がった。
その姿に弓兵は何かに耐えるように言った。
「わかってほしい。私は以前のようには戦えない。」
ゆっくりと頭を下げる弓兵にギルドマスターと領主は息を飲んだ。
弓兵が戦えないということを考えてはいなかったのだ。
今なに不自由無いように生活していたとしても、魔王との戦いで何も怪我をしなかったわけではないはずだ。
その怪我が原因で戦えず、この様な首都から離れた場所で静かに暮らしているのか。
ギルドマスターと領主は恥じた。
勇者一行の一員であった弓兵であるなら、この街の危機に力を貸してくれるだろう。そうなんの疑いもなく思っていたのだ。
弓兵がどうしてこのような少し街から外れた場所で静かに暮らしているのか、それを考えていなかったのだ。
ギルドマスターと領主は弓兵への非礼を詫び更なる対策をするために戻っていった。
え?何が以前の様に戦えないだって?
ホントのことだよ。
もう、あの勇者たちと一緒にいた時みたいにやりがいだけでは戦えなくなった。
結局あのギルドマスターも領主も報酬の話は一切しなかったしね。
リスクがあるならそれだけのものがないと動けない。
あの時は誰かのためにって戦ってた。
そのうちじゃあ全部やって、やって当たり前でしょ。
みたいになって。
王様からお給料でてるって足元見られるし。
王様からお金なんて貰ってなかったのに。
やっと倒して成果がでたと思ったら任命した王様の手柄見たいになってるし。
報奨金だって王宮の貴族の年収のくらい。
魔王倒したのにだよ?道中のお金も貰ってなかったのにだよ?
もう、やってらんねーって私はなったわけで。
でもその先で演劇でもみてゆっくり過ごそうかとおもっていたらあれだったわけで。
もう、こりゃ大陸でも渡って自分を誰も知らないところまで行かないとダメだなと思い立ったのですよ。
ん?街は大丈夫だったのかって?
大丈夫だよ。正直言って私が行くまでもなかったよ。
あの二人は本当に保険のために私に協力して欲しかったのだと思う。多分。
トップは大変だ。
勇者?勇者は今でもがんばってるよ。
みんなが平和に過ごせるようにって。
あの勇者こそ勇者の鏡だと私は思うよ。
とてもじゃないけれど私はマネできない。
心からの最大の賛辞だよ。
一応ここで言っておくと弓兵はギルドマスターと領主が相談に来た時点で魔物の襲撃の対策に自分がいなくても対応できるな。という考えがあり断っています。
こいつら全然報酬も何にもくれずにタダ働きさせる気だ!
とういうわけではありません。
けれど、これ以上その土地にいたら手を貸してくれるかもみたいな考えで来られるのはいやだ。
静かに暮らしたい弓兵はその土地を後にします。
海を越えて、少し腰を落ちつけられる様なところでどうしてこちらにきたのかということであの話をしています。