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幸せの欠片

処女作です。拙い文章ですが温かい目で見てやってください。

「あぁ…やっと…分かったよ…」


今思えば、両親からは愛されていたのだろう。

教育熱心で、忙殺される程に習い事に行かされた。才能はあったから、勉強は勿論、習字やピアノ、芸能活動まで難なくとこなしてきた。

だから「1番が当たり前」という考え方に俺も染まっていたし、他の奴らを俺は見下していた。

当然そんな奴が好かれるわけもなく、小学校を卒業する頃には俺の周りには誰もいなかった。


中学にあがってもそれは変わらなかった。俺は変わらず全てにおいて1番だったし、

周りの奴らも俺の事を妬んでコソコソと悪口を言ってるだけ。

そうしてそのまま中学生最後の夏休みがきた。俺は家で受験に向けて勉強をしていたが、うだるような暑さに集中が切れてしまい、気分転換にアイスを買いに行こうと思い立った。

駄目だ、夏は好きになれない。暑いし、虫は多いし、世間は海だの祭りだのとはしゃいでいてとても鬱陶しい。

そうして向かったコンビニで、俺はそいつと出会った。

“本城 勇樹” 地元で有名な不良グループの頭だ。

本城もある意味有名な俺の事は知っていたのだろう。俺を見るなり声をかけてきた。


「お前なんでそんなクソみてぇな面してんの?」

「お前に関係ねぇだろ喋りかけんな社会のゴミが。」


人の顔見ていきなりクソだと?意味が分からん。

勿論何事もなく終わるはずもなく、大喧嘩になった。

俺は空手もやっていたし、ちょっかいをかけられる事も少なくなかったから喧嘩慣れはしていたし、負けるつもりなんかなかった。実際、今までの雑魚共は簡単に倒せた。 

だが本城だけは違った。いつまでたっても倒れない。いい加減疲れてきた、と思った所に、誰かが通報したのだろう、警察がきて取り押さえられてしまった。


警察署に迎えにきた親は大変怒っていた。まぁそれはそうだろう。コンビニに行ったはずの息子がなぜか喧嘩して警察に捕まっているのだから。親は叫んでなにかいっていたが、あまりよく覚えていない。俺は全く違う事を考えていたからだ。


(はじめて勝てなかった…あんな不良に。)

(動き見る限りなにか嗜んでる感じでもねぇ、素人だった。)

(だが、まぁそれはいい。次やっても負ける気はしない。しないが…)


「お前、寂しい生き方してるな。」

「どういう意味だ。」

「ずっと他人見下ろして生きてんだろ。そうやって自分以外のもん全部切り捨てて。」

「それの何が悪い?俺より劣った能力のやつに興味なんかねぇよ。」

「それで…お前…()()()()?」

「っ…」


俺は答えられなかった。

当たり前だと思っていた。俺は優秀で、優秀な人間に人は勝手についてくるもので。

いい会社に入って、30代になる頃には起業して金を稼いで。結婚も、まぁいい相手さえいればするのだろうと。順調な人生を送れるはずだと。

だが…


「お前…つまらねぇんだろ。今。それ、変わるのか?」


どうしてもあの言葉が忘れられない。

あれから日本で最高位の大学を卒業し、超有名企業にも難なく入社した。初めてのプロジェクトも大成功だったし、結婚相手こそ見つけてないが誰に恥じる事もない、順風満帆な人生だ。だが…


(俺は幸せ…なんだろうか。間違えては…いないはずだ。)


そんなことを心の中でぼやきながら、代わり映えのないいつもの帰宅路をとぼとぼと歩いていると、


「きゃっ、きゃぁぁぁあ!!」

「おい、あいつ包丁持ってるぞ!!」

「だれか警察を!!」


目の前から悲鳴と喧騒が聞こえてきた。ふと顔をあげると、

血走った目をして両手に包丁を構え、こちらに向かって走ってきている男と、

俺の1m程前に座り込んだ少女と、少女を庇うように抱きしめている女性が視界に映った。


(は…?こんな都会の真ん中で殺傷事件だと…?)

(いや…それよりあの親子が狙われてるのか?逃げれないのか…?距離的にはまだ回避できる位置だろうに。)


「逃げて!!」


その女性が、叫んだ。


(いやいやいや、お前が逃げろよ!?何言ってんだ…あぁ、くそっ!!)


俺は駆け出した。何故かは分からない。何故かその親子を助けたい、そう思った。

そして……


…目が霞む。腹が熱い。いや…他の部分が冷たいのか?…良く分からない…。

そして周りがなんだか五月蠅い。一体なにを…


「うえぇ、うっ、おにい、おにいちゃぁあん…」

「しっかりして、お願い!目を閉じちゃだめ!」


ちっ…腹に響く…

…あぁ、俺はこの親子を助けて…ミスって刺さっちまったのか…だけど…


「どう…して泣いて…るんだ…助かった…んだろ…?」

「貴方が!貴方が死んでしまいそうだからですよ!!」

「ひっく…お兄ちゃんっ、死んじゃだめ!!」

「俺と…お前らは関係…ないだろ、泣く、必要なんて…」

「貴方は命の恩人です!貴方が死ぬのはだめなんです!お礼すら言えてないのにっ!!」

「ひっく…ううっ…やだ…やだよう…っ」


…そう、か。俺は…俺が死ぬことを…悲しまれてるのか。

そう理解すると同時に、冷えていた感覚が、心が、ほんの少しだけ、あたたかくなった気がした。

俺は…誰かに必要と、されたんだな…。


「あぁ…やっと分かったよ…」

「これが…()()って…こと…か。気付くの…遅かったな…」



…そうして俺の視界は真っ白に…


「だい…ぶ。…たは…だ幸せ…る。」


…染まった。


そして、





「見て、あなた。なんて可愛らしいのかしら。」

「あぁ、君によく似た麗しい銀髪だ。それにこれほどの純度の魔力は見たことがない。この子は絶対に素晴らしい魔法使いになるだろう。」

「ええ、そうね。目はあなたに似たのかしら…?凛々しい琥珀色をしてる。将来が今から楽しみだわ。それで…」

「あぁ、この子の名は、エリン。エリン=ダイヤの如き(ディーア)・グランベル」


「おぎゃー!(なに言ってんだ誰だこいつら!?)」


視界が悪く判別がつかないが、目が覚めるとよく分からない状況になっていた。






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