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第1話

あれは、太陽が激しく照りつける夏の日だった。出会いは突然・・・だが必然。運命を覆してでも手に入れたい、自分の心を根底から揺るがす最愛の君、その日私は誓った。必ず君を手に入れる。どんな代償を支払ってでも貴方を手に入れてみせる・・と。


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「お前も今年からリザルの高等学校へ通うんだってな?」頬づえをつきながら、長年の幼馴染みでもあり、親友のレイモンドが話しかけて来た。

「ああ・・・てかお前もだろうが・・。」俺はぐったりと椅子に腰掛けたまま答える。

「しっかし今年は暑いよな〜。なんか異常気象だって言うぜ・・。俺んとこの国の作物も今年は出来が悪いみたいだし。」

「そうらしいな・・」本当に暑過ぎて頭が回らない。侍女がずっと大きなファンを持ってこちらを扇いでくれているが生暖かい風がくるだけだった。


「でもさー、ちょっと楽しみじゃね?今リザルにはドーラ大陸からスミルナの王女が来訪してるらしいぜ。」レイモンドが二人で遊んでいたチェスの駒を一つ進めた。


「スミルナって、あの砂漠の?傾国の美女とかって呼ばれてるっつー女だろ?お前さ、範囲広すぎないか?いくら美女でもかなり年上だろ?それに大体お前、婚約者がいるだろうが・・・」


「美しいものを愛でるのは良い趣味だと思うけどね・・・。ギルロイは興味がないのかい?傾国の美女。俺も絵師が描いたものしか見た事ないけど、結構な美人だったぜ。でもかなり結婚適齢期を過ぎてるのにまだ縁談がまとまっていないらしい。」大体ほとんどの王族や上流貴族の子女は20歳前には婚約者が決まっている事が多い。特に王女らは15歳で社交界入りすると同時に相手を見つけるのが主流だ。だが、スミルナの王女は現在22歳という年になっても浮いた噂一つなかった。


「レイモンド・・・お前って本当にそういった情報には詳しいよな。傾国の美女ねえ・・国が傾くほどの美貌ってことか。だけど、まあ俺は別に興味ないね・・。大体、大方そういった女って顔だけで、性格は最悪なんじゃねーの?結婚できねーのもその所為だろうよ。」


「お前って・・・・はあ。もういいや、ギルロイ・・お前人の事言えた義理じゃねーだろ。そんなんだからいつまでたっても縁談がまとまらないんだぜ。女は愛嬌があって可愛けりゃ十分じゃねーか。この間もお前んとこの親父、うちに来て嘆いてたぜ。選り好みが激し過ぎてなかなか縁談がまとまらないってな。」


「余計なお世話だよ。自分の相手ぐらい自分で見つけるさ。ただ今はあんまり真剣に思える奴がいないだけで・・・」そういって俺はじっとレイモンドの顔を見つめた。本当は・・・この人となら結婚しても良いと思える相手はいたのだ。だがそれは一足早く婚約が決まった親友の愛しい相手だった。そう、俺とレイモンド、そしてナディアは隣国同士で年も近く気のあう幼馴染みだった。ナディアは王族では無かったが、隣国エストラーダの上流貴族の子女で彼女の乳母が同じくレイモンドの乳母をしていた事もあり、よく隣国を訪れる度に一緒に遊んだものだった。


よく笑い、良く泣き、また笑う。お日様の様に朗らかなナディアに俺は密かなあこがれを抱いていた。彼女に早くに亡くした母の面影を見ていたのかもしれない・・。

「あのね、ギルロイ、すごく良い報告があるのよ!何だと思う?ふふ、私とレイモンド、婚約したの。この間、王宮から正式な使いが来たのよ。本当にびっくりしたわ。でも、私とても今幸せよ。あなたも喜んでくれるわよね?!」


「あ、ああ・・・おめでとう、ナディア・・・。そうか、君とレイモンドが・・」頬を染めて嬉しそうに微笑む彼女を前に俺は気の利いた台詞ひとつ言えず帰ってきた。だが、君が幸せならそれで良い・・。俺はうまく笑えているだろうか・・?


「おい、ギルロイ!お前の番だぞ!」

「え、ああ、悪い・・ちょっと考え事をしていた。」俺はあわててチェスの駒を進めた。

「チェックメイトだな!」レイモンドが勝ち誇った声で叫んだ。


「どうしたんだ、お前、今日はやけに弱いじゃないか・・疲れてるのか?」


「いや・・・暑過ぎて頭が回らないだけだよ・・。」

「そうか、そうだな・・確かに今日は本当に暑い。」そういってレイモンドはテーブルの上に両手を投げ出した。

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