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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第2章 共生のススメ
83/389

1.共生暴力⑨ 心配するだけ損だって。

◇ ◇ ◇


 つまらないことに時間を取られてしまった。

 舌打ちしたくなる気持ちを抑え込み、セラは急ぎ足で歩を進めた。


(まったく、地球人はいちいち(うっ)(とう)しいんだから!)


 (げん)(しゅつ)が原因で(こうむ)った損害は、世界守衛機関(WGO)に一定限度まで補償請求することができる。ただしその請求書には、現場にいた(わたり)(びと)の署名が必要だ。

 そのためセラとテスターは、「(げん)(しゅつ)騒ぎで高価なインテリアが損壊した」と主張するカフェ店員に捕まり、被害状況の確認やら承認やらをせざるを得なくなったのだ。

 おかげで兄を追うのに出遅れて、聞き込みながら(そく)(せき)をたどる羽目に。


「まったくもう!」


 今度は声に出し、風で顔に張りついてきた髪を乱暴に払いのける。

 いら立ちが先行したため、痛みは後追いでやって来た。なにかしようとするたびに右肩が悲鳴を上げ、先日の事件を(いや)(おう)でも思い起こさせる。


「落ち着けよセラ。リュートがちゃんと追ってるって」


 隣を歩くテスターが、なだめるように言ってくる。

 その目が一瞬ではあるがこちらの右肩を捉えたことに、セラは気づいていた。

 ()(かつ)に痛がるそぶりすら見せられず、


「別にそういう心配してるわけじゃないわよ」


 眉間に(しわ)を寄せ、セラは進行方向を見据えた。

 守護騎士(ガーディアン)の少年が沿線に向かっていった、という情報は得たのだが、まだそれらしき姿は見えない。


「まだ()()治りきってないのに……大丈夫かしら。あの女、結構攻撃的だったし」

「大丈夫だろ。本調子じゃないとはいえ、地球人相手に突っ伏すようなことにはならないさ」

「親友でしょ? もっと心配しなさいよ」

「いやーだってあいつ、殺しても死ななそうじゃん? 心配するだけ損だって」


 気楽に構えるテスターをひとにらみし、兄の追跡へと意識を戻すセラ。

 テスターとふたり連れ立って、線路下の地下道を下りていく。


「お、あれじゃないか?」


 先に気づいたらしいテスターが右手を掲げ、


「おーいリュー……」


 ぶつりと声を途切れさせる。その理由は、言われなくともよく分かった。

 テスターに並び、セラが見た光景は。

 ひくひくと(けい)(れん)しながら――なぜか地球人の男児にのしかかられるようにして――地面に突っ伏しているリュートの姿だった。


◇ ◇ ◇

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