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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第2章 共生のススメ
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1.共生暴力② なんなのよもう!

(……っていうか、確かに俺が原因なんだよな)


 彼に対し多少申し訳なく思っていると、


「まあそーだな。ここはお前のおごりってことで手を打っといてやるよ」

「はあ? なんでそーなる調子に乗んな」


 椅子の背もたれに肘を預けて偉ぶるテスターに、申し訳なさも吹っ飛び、片眉を上げて切り捨てる。

 我ながらがめついとは思うが、財布の中身が有限である以上、おいそれと放出するわけにもいかない。

 と、セラが落胆するように小さく息を吐いた。


「なんだ。おごりじゃないのね」

「お前もかよ⁉」


 正直セラに関してはおごってやってもいい――というかそのつもりだったのだが、(はな)から当然と思われているとその気も()せてくる。


「ったく。ナチュラルにずうずうしいんだよお前らは」


 リュートは(ほお)(づえ)を突き、()みつくようにしてストローを加えこんだ。


「まーまー。せっかくの初カフェなんだし、楽しもうぜ」


 アイスコーヒー片手に二切れ目のトーストに手を伸ばし、テスター。

 朝食は訓練校で済ませてあるというのに、その食欲はどこから来るのか。

 リュートの方はというと、食べ残すと店員の心証を悪くするかとも思い、一応食べてはみた……のだが、数口胃に収めたところで限界に達した。普段はともかく、静養明け直後では食欲が湧かない。

 セラの方は試みるまでもなく限界のようで、テーブル中央に置かれたトーストに手を付けてもいない。


(ま、なんだったらテスターに押しつければいいか。全部)


 明らかに()(ちゃ)なことを憂さ晴らしの代わりに思い浮かべ、リュートは椅子に背を預けた。機能性を損ないそうなほど曲線的なデザインのくせに、座り心地は意外と悪くない。


(テスターの言う通りせっかくの外出だし、楽しまなきゃ損か。暴れなければ傷もそんなに痛まねーし)


 どのみち同期の仲間から「なんかおいしそうなもんをいっぱい買ってこい」と、ひどく漠然とした買い出しを頼まれてもいる。どうせ寄り道するのなら、自分の好奇心も満たしたい。

 今日の予定について思い浮かべながら、後ろ脚2本を支点に、前後に椅子を傾ける。守護騎士(ガーディアン)スタイルの時は抑えようとしている癖なのだが、気を抜くとこうして、つい出てきてしまう。


「なあ」


 結構気が乗ってきたので、買い出しのプランについて相談しようと口を(ひら)き――ガタン、と音を立て椅子ごとひっくり返りそうになる。

 とっさにテーブルに手を突きなんとか持ちこたえるリュートに、周囲の(わずら)わしげな視線が突き刺さる。

 しかし、そんなことを気にしている場合でもない。

 体勢を崩した分反応が遅れたリュートに先んじて、テスターとセラはすでに立ち上がっていた。


「なんなのよもう! ここの(げん)(しゅつ)率は平常値のはずなのに!」

「単に運が悪いんだろっ」


 言葉を交わし、テラスを抜けた先の歩道へと視線を投げるふたり。

 リュートも腹を押さえながら――倒れかけた時反射的に力んでしまったため、割と傷に響いたのだ――席を立ち、同じ場所を見やった。

 リュートらに地球人。この場にいる者たちの注目を独占しているのは、歩道に突如出現した白い巨人だった。

 全長は2メートルを軽く超え、顔には大きな赤い《()》がひとつ。

 ――()(しん)

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