表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第8章 終焉の守護騎士
386/389

5.リバースデー⑪ やり直したいなら

◇ ◇ ◇


 夜明けが近づいている。

 守護騎士(ガーディアン)車の後部座席から、窓を通して空を見上げ、セラははやる心を抑えていた。

 明け方近くになり、明美の家に交代の護衛が到着した。といっても彼らは家の外で待機するため、明美のそばに付けるわけではない。だからセラは引き続き、明美と共にいなければならない。

 そのもどかしさが伝わってしまったのか、目を覚ました明美が笑って言ってくれた。

 自分が外に出て、守護騎士(ガーディアン)たちのそばにいるから大丈夫だと。


「休日は早朝ジョギングしたりもするから、書き置き残しておけば、お母さんも心配しないだろうし。その後は、友達と遊びに行くとでもなんとでも理由つけられるし」


 まあジョギングなんて、いつも三日坊主で終わっちゃうんだけどね、と冗談めかして笑う明美に、セラは心の底から感謝した。

 その後はテスターと共に、交代の護衛と入れ替わりで守護騎士(ガーディアン)の車に乗せてもらい、訓練校へと戻ることになったのだが。


(なに、この感じ……?)


 ざわざわと、どうしようもなく胸が騒ぐ。

 (どう)()が収まらない。

 怖い。


(お兄ちゃん、無事なの……?)


 ぎゅっと拳を握る。

 突き詰めて考えていけば、恐慌の波にのまれてしまいそうだ。

 怖い。

 と――

 緊張して汗ばんだ握り拳の上に、とんとなにかが()れた。

 驚いて右隣を見やると、テスターがこちらの拳に左手を置いていた。それは少し前まで外気にさらされていたため、ひんやりと冷えている。なのに不思議と、ぬくもりも感じた。


「大丈夫さ。そうでなきゃ残酷過ぎる」


 テスターはこちらを見てはいなかった。にらみつけるように正面を見据えている。

 吐き出された言葉は彼の願望で、全くフォローになっていない。

 心が限界なのは、自分だけではないのだ。

 役割を果たすため、誰もが必死になっている。だから、


「お兄ちゃん、無事でいて……」


 願う内容くらいは、欲張ったっていいではないか。


◇ ◇ ◇


 目の前の()(しん)(やいば)を突き立てようとした時、背後に顕現の気配を感じた。

 今や訓練校のあちこちに()(しん)(げん)(しゅつ)・顕現している。援護は期待できない。


(って、そもそも俺がもたついているせいか)


 反省もそこそこにして、リュートは剣柄(たかみ)を逆手から順手に持ち替えた。そのまま()(しん)を横なぎにして、勢いままに振り返る。


(……? なんだ……?)


 剣を振るっているからだけではない(どう)()に、心が騒ぐ。

 空間そのものが――ここではない、どこか別の次元が振動し、膨張し、収縮し、また拡散し……とにかく荒ぶっている。


(もしかして、始まったのか……?)


◇ ◇ ◇


 視界がぶれる。(ごう)(おん)が響く。身体(からだ)がねじ切れる。


「ぐっ……」


 メルビレナは歯を食いしばった。


(もっと……もっとだ!)


 もはや元始世界は存在しない。一時的にゼロ次元へと収納したからだ。他の次元がそれに引きずられるのをなんとか押しとどめながら、力を調整する。

 次元の(しゅん)(どう)に刺激され、光と闇の奔流が、全てを塗りつぶそうとする。それは再生への胎動でもあった。

 だけどそれに身を任せるだけでは駄目なのだ。


(やり直したいなら、もっと、もっと必要だ。せめて取り戻したいなら、もっと(ささ)げねばならぬ……!)


 メルビレナはゼロ次元の(くさび)へと手を伸ばした。


◇ ◇ ◇

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ