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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第8章 終焉の守護騎士
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2.絶遠六花⑥ 雪降る空を見上げていた。

◇ ◇ ◇


 暗がりの中、アスレチックの台にひとりの少女が座っている。

 銀髪の少女は膝を抱え、雪降る空を見上げていた。

 セラはテスターとふたり、彼女のそばまで歩いていく。

 気づいた少女――アスラがこちらを振り返った。膝より下を、台の(へり)から投げ出すようにして座り直し、


「リュー君に言われて来たの?」

「ええ。『俺は少し離れるから、アスラを頼む』って」


 言い終えぬうちに、テスターがアスラの真正面へと回り込み、彼女を見上げる。その横顔はどこか硬い。


「アスラ。リュートはどこだ?」

()(しん)の所」

()(しん)って……顕現したあの⁉ ()(けん)も通じないのに⁉」


 声が裏返る。

 顕現絡みだとはうっすら分かっていたが、セシルの呼び出しかなにかだと思っていた。


「そんな()(ちゃ)な……」

「大丈夫だよ。あたしが力をあげたから」


 アスラはそう言って説明してくれた。顕現した()(しん)の特徴や、その対処法を。


「……つまり今現在、お兄ちゃんだけが顕現した()(しん)を葬れるってこと?」

「そう。そしてそれが、メルちゃんの望みでもある」

「女神の……?」


 セラは眉根を寄せた。意味が分からない。

 しかしそれをセラが問いただす前に、テスターが右手を挙げた。


「質問いいかな?」

「どーぞ。アスラ先生はなんでも答えるよ? 答えられることならね」


 おどけたように、アスラ。

 いつものテスターなら付き合って冗談を言ったりするところだ。

 が、彼にしては珍しく真面目な調子を崩さずに、手を下ろして後を続けた。


「存在の共有は、いつまで持続するんだ? 互いに()らい合う存在が、(きっ)(こう)し続けるなんて無理だろう」

「テス君はいつも冷静だね。冷静に、痛いところを突いてくる」


 曖昧に笑うアスラに、テスターが追い打ちをかける。


「君は()うのか? それとも……」

「⁉ それって――」

「いいの」


 セラの言葉をアスラが遮る。控え目な口調のはずなのに、有無を言わさぬ圧を感じた。


「いいのあたしは。リュー君もこの世界も好きだから、後悔はないよ……でも」


 アスラはここで初めて、迷いを見せた。


「ごめんね。それでもやっぱり、仲間が死ぬのは嫌なの。斬られる時に痛いのは、(しん)(ぼく)だって地球人だって……()(しん)だって同じ。その痛みだけは知ってほしい。そう思うのが……()められないの」

「アスラ……」

「ごめんねセラちゃん。きっとリュー君はこれから先、あたしのせいでつらくなる……本当に、ごめんね」


 アスラは泣きそうな顔で、「ごめんね」と繰り返した。


◇ ◇ ◇

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