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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第8章 終焉の守護騎士
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2.絶遠六花② 本の山に埋もれるようにして

◇ ◇ ◇


(もう、また借りられてる!)


 書棚のぽっかり()いた空間を見て、胸中で毒を吐く。

 精錬世界の真実を知って以降、セラは暇を見つけては図書館に通っていた。

 史実を――特に(しん)(ぼく)の歴史を調べ、もっと多くの真実を知るために。

 だけどここ最近、調べ物に必要な歴史書の類いが、狙ったかのように貸し出し中になっているのだ。高等訓練生にもなって、今更借りるものでもないだろうに。


(なんで私の邪魔をするのよっ)


 理不尽な主張だと分かってはいたが、吐き出さずにはいられない。

 自分は形から入るタイプなので、()(ばな)をくじかれるとそれだけでやりづらいのだ。


(仕方ないわね。この本だけでも確認しましょ)


 セラは抱えた数冊の本に目を落とし、座席を探して図書館内を移動した。

 しかし、いつも使っている座席一帯はなぜか満席だった。

 不思議に思ってから気づく。最近出されたレポート課題の分野は、この座席近くの書棚と同じだ。一時的に需要が増えているのだろう。

 お気に入りの席を使えないことに、さらにいら立ちを募らせながら、セラはその場を離れた。

 いちいち邪魔が入ることが腹立たしくて、いっそすねるように、セラは日当たりが悪い上に照明も少ない座席区画に移動した。この人気ワースト1席なら、さすがに()いているだろうと。

 そして、大机にいる先客を見て、慌てて書棚に身を隠した。


(テスター君っ?)


 本の山に埋もれるようにして大机にいたのは、テスターだった。


(課題を片づけてるのかしら……?)


 別に隠れる理由もなかったのだが、反射的に隠れてしまった流れで、セラは書棚の陰から様子をうかがった。


(! あの本、私が探していた……)


 山と積まれた本の背表紙に、探していた本のタイトルを見つけ、理解する。

 テスターも自分同様、精錬世界や、(しん)(ぼく)の歴史について調べているのだ。

 ()(たん)湧き起こった仲間意識に押され、声をかけそうになるが――

 額に手を当て、得られない答えにいら立っているようなテスターの顔。

 誰かに見つかるのを()けるように、わざわざ不人気な席に着いていること。


(……今は集中してるだろうし。今度会った時、調べ物してるから手伝ってって頼んでみましょ)


 なんとなく声をかけることがはばかられて、セラは黙って引き返した。


◇ ◇ ◇

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