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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第1章 神苑の守護騎士
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4.抜き打ち模擬戦トーナメント② これはもう――優勝するしかないでしょうっ⁉

◇ ◇ ◇


 本日、4月19日午前11時より、G専科5~7回生を対象とした模擬戦を実施する。


【試合規則】

 1対1のトーナメント制。第1~4体育館にて、合計24ブロックに分かれて行う。時間無制限。模擬戦の継続が不可能な状態に陥るか、10秒を超えて武器の具現が不可能になったとき、失格とする。


【服装・武器規定】

 通常の運動着を使用。武器は()(けん)またはそれに準ずる物。()(けん)以外の武器使用にあたっては、必ず事前登録を済ませておくこと。血液には即効性の麻酔薬を溶かした不純液を混ぜ込む。試合前、各ブロックの受付に採血管を提出し、専用カートリッジを作製してもらうこと。


【その他規定】

 参加者は武器の調達にあたり、AR専科の訓練生1名の助けを借りてよい。その場合は、ペアとなった訓練生にも賞品が授与される。ペアを組む場合は、事前登録を済ませておくこと。なお、対戦の振り分けは別紙にて確認のこと。


【優勝賞品】

 ①女神の間への入室権。②金壱萬円の進呈。③掃除当番の免除(2カ月)。


 文責:第23初等・高等訓練校学長セシル




 ……以上が、寮内の掲示板にでかでかと張られた掲示の内容である。別紙の対戦表によると、リュートの初戦は第一体育館のCブロックで行われる、第8試合になっていた。

 あれから着替えて(寝癖も直して)セラに連れられるまま、ここまで来たのだが……


「本っ気で抜き打ちだな。なに考えてんだよセシルのやつ」


 いらいらと頭をかく。

 午後はゆっくり授業の復習ができると思っていたのに、これでパーだ。

 テスターの方は、起きてしまえば機嫌はすっかり直ったようで、軽口をたたきながら頭の後ろで手を組んでいる。


「模擬戦かー。無駄に疲れそうだしめんどそうだな……でも商品はちょっと欲しいし、悩みどころだなー」

「ちょっとどころじゃないです!」


 と、セラ。


「女神の間なんて普通なら一生縁のない場所ですよ⁉ それがっ! これに勝てばっ! 入れるんですっ! 女神様の気を感じられるんです! これはもう――優勝するしかないでしょうっ⁉」

「あ、ああ。そう? うん」


 セラに詰め寄られ、若干引き気味に(あい)(づち)を打つテスター。ちなみにリュートたちと同じく掲示板を見ていた、周囲の生徒たちも引いている。

 横目でそれを見た後、リュートは掲示板へと視線を戻した。

 不意打ちに休みを潰されたことは恨めしいが……


「模擬戦、か……」

「お、なにリュート。やる気満々?」


 からかい気味に笑みを浮かべるテスターをぐいと――恐らくは無意識に――押しのけ、セラが目を輝かせる。


「さすがですリュート様! なんだかんだ言って、リュート様も立派な(しん)(ぼく)ですねっ!」

「リュートの場合は、掃除免除と1万円が目当てだろ?」


 負けじと、ぐいとセラを押し返すテスター。


「ん? ああ、まあ」


 曖昧に返事をして、リュートは再度掲示板を見た。目を細め、無機質な文字を見据える。

 女神の間。

 セラほど過剰ではないにしても、憧れる生徒は少なくない。


(まあたぶん、思い入れなら俺が一番だけどな)


 大切なものを失い、初めてはっきりと女神を憎んだ場所なのだから。


◇ ◇ ◇

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