4.終極のリベリオン② もちろん全力で止めた。
◇ ◇ ◇
「うっわあー。いろいろ売ってるね。朝市かなっ?」
アスラが胸を躍らせる。
大通りの両脇には、多種多様なお店が立ち並んでいた。屋台が多いが、地面に布を敷いておのおのの商品を売り込む、いわゆる露天商もいた。この世界では女神への信仰が深く根づいているらしく、売買の折も、所々で「女神様のご加護を」という挨拶が交わされていた。
道行く人の人種もさまざまだ。白色人種を彷彿とさせる顔が多数だが、褐色肌の人間もおり、まばらには顔に紋様を描いた、特定のコミュニティーに属すると思われる者たちもいた。
情報収集したいならここだと、宿の主人が薦めてくれたのだが、なるほど納得だ。ここなら街の外から来た商人にも、話を聞けるかもしれない。
(気をつけないと、がっぽりふんだくられるかもしれねーけどな)
心に刻みつけて、リュートは腹ごしらえできそうな店を探した。
値段と量で選んだ串焼きの屋台で、謎の肉を1本分購入し、口に含む。実は戦々恐々だったのだが、普通に鶏肉のような味で、薬草茶の悲劇は回避された。
「すみません、俺たち人を捜してるんですけど。特徴は――」
せっかく金を使ったのだから、聞かねば損だとばかりに店主に尋ねるリュート。しかしこれは空振りに終わった。
「いや、知らねえなあ。それより兄ちゃん、そっちの姉ちゃんにも1本どうだ」
丁重に断り、次の店へ。
アスラのご希望でベラルーダの皮包みなるものを購入すると、彼女は実においしそうに食した。その勢いでプラス10食分ほどを追加注文しようとしたのは、所持金の関係でもちろん全力で止めた。
何軒か聞き込んだところで、リュートは顔を上げて太陽の位置を確認した。
「にしても、時間が分からないってのは不便だな」
明確な基準がないと、どうにも動きづらい。詮無いことだが、腕時計が壊れてしまったのが悔やまれる。
と、
「へへへー♪ 今は9時半(仮)だよっ」
アスラが得意げに懐中時計を掲げる。
「そっか、君も時計持ってたな。でも(仮)っていうのは?」
「こっち用に合わせたんだ。日の出を6時にしておいたの」
指で太陽と文字盤とを、交互に指し示すアスラ。
「へえ……って、そういえば、この世界は24時間刻みなのか?」
「っぽいよ、細かいズレはあるかもしれないけど。日の出日の入りでチェックしたから、大体は合ってる」
「それは助かる。ありがとな」
昨日今日の間で律義に確認していたことに、リュートは単純に感心した。
「やったぁ、褒められたー♪」
「よし。んじゃあ、どんどん聞き込みしていくか!」
「りょうかーい!」
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