1.罪障のリフレイン⑥ 神の石
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(どうしたもんかねー)
草を引き抜きながら、テスターは顔をしかめてうなった。
村でできる限りの聞き込みを終えてはみたが、リュートとアスラに関する情報は全くのゼロ。なにかしらにかすりもしなかった。
ぐだぐだ過ごしてても仕方ないので、ひとまずはロザリアの小屋まで戻り、庭の草むしりにいそしんでいた。一宿一飯の恩義に報いるために。
「ねえテスター君」
少し離れた場所から、セラが声を上げる。口では「こんなことしている場合ではない」とか言っていた割に、律義にせっせと手を動かしているのが彼女らしい。
「なんだ?」
「もしあの店で、また情報ゼロだったら……明日は村の外へ出る?」
「そうだなあ……」
草に気をやっているふりをして、言葉を濁す。
『チェビスの水』の店主いわく、店は酒場も兼ねていて、夜になると一気に客が増えるとのことだった。村外からやって来た行商人が寄ることもあるらしいので、セラと話し合った結果、夜にまた出直すということにはなっている。
だが正直、期待はしていない。そうなるとセラの言う通り、『外』へ出るということになるのだが……
(問題は、どこまで捜すか……か)
ため置いた草山に新たな草を置き、テスターは難しげに口の端を曲げた。
(リュートたちがこの近辺にいなかったとして、じゃあ世界丸ごと回るのかってのも、現実的じゃないし……せめてあいつらが、この世界にいるかいないかの確証がもてればいいんだけど)
それともうひとつ。
「もしこの村を発つとしても、その前に確かめたいことがあるんだ」
「神の石のこと?」
察した声音で返してくるセラ。テスターはこくりとうなずいた。
「神の石だろ。どうしたって、放浪石との関係が気になる」
もし神の石が放浪石に関わりあるものであるならば、その存在は無視できない。
しかし、神の石については尋ねた者皆、忌避するように口を閉ざした。神の石そのものがというより、それにまつわる話を嫌がっているようだった。
最初に尋ねた男の反応を考えるとあまり踏み込むこともできず、いまだに神の石については分からずにいる。
「だったら……彼女に聞いてみる?」
セラの言葉に顔を上げると、森の茂みをかき分け、ロザリアが姿を現したところだった。
「そうだな……アルファードとやらの件も含めて、彼女はいろいろと、核心に近そうだしな」
ふたりの複雑な顔をよそに、手を振ってこちらへと歩いてくるロザリアは、にこやかな笑みを浮かべていた。
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