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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第7章 月影の哀悼歌
310/389

1.罪障のリフレイン⑥ 神の石

◇ ◇ ◇


(どうしたもんかねー)


 草を引き抜きながら、テスターは顔をしかめてうなった。

 村でできる限りの聞き込みを終えてはみたが、リュートとアスラに関する情報は全くのゼロ。なにかしらにかすりもしなかった。

 ぐだぐだ過ごしてても仕方ないので、ひとまずはロザリアの小屋まで戻り、庭の草むしりにいそしんでいた。一宿一飯の恩義に報いるために。


「ねえテスター君」


 少し離れた場所から、セラが声を上げる。口では「こんなことしている場合ではない」とか言っていた割に、律義にせっせと手を動かしているのが彼女らしい。


「なんだ?」

「もしあの店で、また情報ゼロだったら……明日(あした)は村の外へ出る?」

「そうだなあ……」


 草に気をやっているふりをして、言葉を濁す。

 『チェビスの水』の店主いわく、店は酒場も兼ねていて、夜になると一気に客が増えるとのことだった。村外からやって来た行商人が寄ることもあるらしいので、セラと話し合った結果、夜にまた出直すということにはなっている。

 だが正直、期待はしていない。そうなるとセラの言う通り、『外』へ出るということになるのだが……


(問題は、どこまで捜すか……か)


 ため置いた草山に新たな草を置き、テスターは難しげに口の()を曲げた。


(リュートたちがこの近辺にいなかったとして、じゃあ世界丸ごと回るのかってのも、現実的じゃないし……せめてあいつらが、この世界にいるかいないかの確証がもてればいいんだけど)


 それともうひとつ。


「もしこの村を()つとしても、その前に確かめたいことがあるんだ」

「神の石のこと?」


 察した声音で返してくるセラ。テスターはこくりとうなずいた。


「神の()だろ。どうしたって、(ほう)(ろう)(せき)との関係が気になる」


 もし神の石が(ほう)(ろう)(せき)に関わりあるものであるならば、その存在は無視できない。

 しかし、神の石については尋ねた者(みな)、忌避するように口を閉ざした。神の石そのものがというより、それにまつわる話を嫌がっているようだった。

 最初に尋ねた男の反応を考えるとあまり踏み込むこともできず、いまだに神の石については分からずにいる。


「だったら……彼女に聞いてみる?」


 セラの言葉に顔を上げると、森の茂みをかき分け、ロザリアが姿を現したところだった。


「そうだな……アルファードとやらの件も含めて、彼女はいろいろと、核心に近そうだしな」


 ふたりの複雑な顔をよそに、手を振ってこちらへと歩いてくるロザリアは、にこやかな笑みを浮かべていた。


◇ ◇ ◇

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