3.アスラのドキドキ☆2DAYS④ 科学の未来を明るく照らそう!
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(つまりは出待ちってことだよね)
拾ったテニスボールを背中の籠に投げ入れながら、アスラは胸中でつぶやいた。
場所は特殊第2運動場。リュートと遭遇しないか少し気になったが、セシルに聞かされたリュートの予定からすると、恐らくは大丈夫だろう。
テニスボールをまたひとつ拾い、籠の中へ。それが今アスラに与えられている仕事だ。
幻出が運よく(?)起きるのを待っている間、ついでに研究資金も調達しようというのがフリストの案だった。というより定期的にここで――特殊第2運動場で有償奉仕を行っているらしい。
ボールを拾って籠の中へ。拾って中へ。中へ……
(……駄目だぁっ)
大事な仕事だと言われたから張り切ってみたが、もう限界だった。ボール拾いは苦ではないが、誰かがいるなら話をしたい。
すぐ近くでアスレチックの点検を行っているフリストに、アスラは問いかけた。
「ねえねえ。やっぱりリス君は、将来研究員になりたいの?」
「そうだねえ……」
フリストがバインダーから顔を上げ、片目を細める。
「なりたいというよりは、なるべくしてという感じかな。他の道が考えられない」
「それはやっぱメル……女神様のために?」
「もちろんそれが一番だけど、好奇心も大きな理由だよ」
「分かるよその気持ち。知るのって楽しいもんね!」
アスラが示した共感に、フリストはいたく感激したようだった。
「君は屑人君の関係者かもしれないが、知を尊ぶ心をもっているのは実に喜ばしいことだ」
じーんとこちらを見つめると、名案とばかりに指を鳴らす。
「決めた。君を我が研究会の副会長に任命しよう!」
「ほんとっ⁉」
「ああ、光栄に思いたまえ。ふたりで科学の未来を明るく照らそう!」
「うん! それであたしはなにをすればいいの?」
「差し当たっては研究資金の確保だな。まずはこの有償奉仕をしっかりこなそう。事務局員の目は厳しいぞ」
「副会長、りょーかいしました!」
アスラはずびしと敬礼をした。なにかしら役割がもらえるのがうれしかった。
「それでは張り切って――おやおや」
フリストが言葉を中断し、口の端を上げる。理由は言わずとも知れた。
「場所は第2運動場のようだ。急げば誰かが狩る前に誘導弾を試せるぞ。行こうアスラ君!」
「らじゃーっ!」
ふたりは科学の未来に向かって駆けだした。
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