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0.述懐
◇ ◇ ◇
何気ない日常が突然壊れることもある。
そんな当たり前のこと、誰もがきっと分かってる。
分かってはいても、目先の当たり前を疑う者など、そう多くはないだろう。日常の崩壊はあくまで可能性の話で、約束された惨事ではない。
勉学や部活、ボランティア活動に励んだり。ただ精いっぱい、今という時間を楽しむことに費やしたり……
僕らは大抵、明日を当たり前のものとして生きている。
学校に行けば当然級友に会えるし、友達と仲がこじれたって、そのうちきっと仲直りできる。
未来は常に開かれている。
鬱屈した中学校生活から一転、高校生活は毎日が充実していた。
だから、夏休みが楽しみで仕方なかった。きっとなにをしたって楽しいから。
高校1年生の夏休みは、はじける果汁のようにみずみずしく、輝くような思い出を残してくれるに違いないと……
僕は目先の愉楽に飛びついた。いわゆる青春を送ることに執着して、周りをよく見ていなかった。
数か月先の未来が見えていれば、僕はもっと、賢い選択ができていたのだろうか。
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