表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第5章 明日讃歌
226/389

2.期末テストの難② 仮にもゲストルームだぞ

◇ ◇ ◇


 教えてやった結果、予想通り大荒れに荒れた。


「やだーっ! あたしも行く! 絶対行く! リュー君もセラちゃんもテス君も行くのに、なんであたしは行けないのっ⁉」


 リュートの隣でアスラが騒ぐ。これがなかなかすごい声量で、耳にキンキンとくる。少し離れた場所にいるテスターですら、圧倒されたように片目を閉じている。


「メルちゃんがいるから? あたしメルちゃんに悪さしないよ⁉」

「君は(たすき)()高校の生徒じゃないだろ?」


 両耳を手で塞ぎ、リュートは言い返した。が、すぐに反論される。


「あたし地球人には見えないんだから、そんなの関係ないよっ」

「そういう問題じゃ――」

「許可しよう」

『⁉』


 突如として会話に参加してきた声に、一同の動きが止まる。


「事前に届け出を行い、君たちがきちんと彼女の面倒をみるのであれば、彼女が(たすき)()高校に同行することを許可しよう」


 こちらの硬直をよそに平然と続く言葉を聞きながら、リュートはその発生源を探った。

 ざっと室内を目でさらって目星をつけると、立ち上がって棚の上にあった『それ』を手に取る。

 リュートはそれ――ごくごく一般的な目覚まし時計をローテーブルの上に置き、その場に座り直した。そして半眼で、目覚まし時計に向かってとげとげしく話しかける。


「お前……ずっと盗聴してたのかよ?」

「盗聴ではない」


 時計のスピーカーから聞こえてきたその声は、まごうことなくセシルのものだった。


「これは懸念事項払拭のための消極的監視だ」

「だから盗聴だろそれ」

「違うと言っているだろう。仮にもゲストルームだぞ、そんな無礼な装置を置いているわけがない――そうそう。そういえば先日の、酒にのまれた君の醜態。あれは無様極まりなくて、聞くに()えなかった」

「だったら割って入って助けろよ……」

「そんな義理はない」

「父親!」

「始終否定したがるくせに、こんな時だけ親子関係を持ち出すのか。都合が良過ぎるのではないかな?」

「んだと⁉」

「というか学長」


 嘲る物言いにリュートが()みつきかけたところで、テスターが割り込んでくる。

 彼は参考書を置くと、あぐらを組んでベッドから身を乗り出してきた。


「いいんですか? 盗聴するなら――」

「懸念事項払拭のための消極的監視だ」

「……その消極的監視とやらをするなら、今ここで『聞いています』とバラすのは無意味では?」

「構わん。どうせ彼女は入室早々、盗聴に気づいていたからな。すでに無意味だ」


 やっぱ盗聴じゃん。

 ものすごくそう突っ込みたい衝動に駆られたが、リュートはなんとか言葉をのみこんだ。今の発言で気にすべきは、そんな()(まつ)なことではない。


(アスラが盗聴に気づいていた……?)


 そういえば確かにアスラは、入室した時いの一番に目覚まし時計を手に取り、物珍しそうにいじっていた。知識がないわけでもないのに、不自然だとは思っていたが……


(それだけ俺らより目ざといってことか)


 一応警戒要素として、胸中にとどめておく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ