2.期末テストの難② 仮にもゲストルームだぞ
◇ ◇ ◇
教えてやった結果、予想通り大荒れに荒れた。
「やだーっ! あたしも行く! 絶対行く! リュー君もセラちゃんもテス君も行くのに、なんであたしは行けないのっ⁉」
リュートの隣でアスラが騒ぐ。これがなかなかすごい声量で、耳にキンキンとくる。少し離れた場所にいるテスターですら、圧倒されたように片目を閉じている。
「メルちゃんがいるから? あたしメルちゃんに悪さしないよ⁉」
「君は襷野高校の生徒じゃないだろ?」
両耳を手で塞ぎ、リュートは言い返した。が、すぐに反論される。
「あたし地球人には見えないんだから、そんなの関係ないよっ」
「そういう問題じゃ――」
「許可しよう」
『⁉』
突如として会話に参加してきた声に、一同の動きが止まる。
「事前に届け出を行い、君たちがきちんと彼女の面倒をみるのであれば、彼女が襷野高校に同行することを許可しよう」
こちらの硬直をよそに平然と続く言葉を聞きながら、リュートはその発生源を探った。
ざっと室内を目でさらって目星をつけると、立ち上がって棚の上にあった『それ』を手に取る。
リュートはそれ――ごくごく一般的な目覚まし時計をローテーブルの上に置き、その場に座り直した。そして半眼で、目覚まし時計に向かってとげとげしく話しかける。
「お前……ずっと盗聴してたのかよ?」
「盗聴ではない」
時計のスピーカーから聞こえてきたその声は、まごうことなくセシルのものだった。
「これは懸念事項払拭のための消極的監視だ」
「だから盗聴だろそれ」
「違うと言っているだろう。仮にもゲストルームだぞ、そんな無礼な装置を置いているわけがない――そうそう。そういえば先日の、酒にのまれた君の醜態。あれは無様極まりなくて、聞くに堪えなかった」
「だったら割って入って助けろよ……」
「そんな義理はない」
「父親!」
「始終否定したがるくせに、こんな時だけ親子関係を持ち出すのか。都合が良過ぎるのではないかな?」
「んだと⁉」
「というか学長」
嘲る物言いにリュートが嚙みつきかけたところで、テスターが割り込んでくる。
彼は参考書を置くと、あぐらを組んでベッドから身を乗り出してきた。
「いいんですか? 盗聴するなら――」
「懸念事項払拭のための消極的監視だ」
「……その消極的監視とやらをするなら、今ここで『聞いています』とバラすのは無意味では?」
「構わん。どうせ彼女は入室早々、盗聴に気づいていたからな。すでに無意味だ」
やっぱ盗聴じゃん。
ものすごくそう突っ込みたい衝動に駆られたが、リュートはなんとか言葉をのみこんだ。今の発言で気にすべきは、そんな瑣末なことではない。
(アスラが盗聴に気づいていた……?)
そういえば確かにアスラは、入室した時いの一番に目覚まし時計を手に取り、物珍しそうにいじっていた。知識がないわけでもないのに、不自然だとは思っていたが……
(それだけ俺らより目ざといってことか)
一応警戒要素として、胸中にとどめておく。