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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第4章 マネー! マネー! マネー!
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6.友達のつくり方⑦ 子どもが飲んでいいわけねーだろ!

 (けん)()はにまにまと笑みを浮かべて言葉を切った。ボリューミーな羽毛布団へと肉厚な手を伸ばし、そこに埋もれたなにかを取り出す。出てきたのは、


「……ってそれ酒じゃねーか!」


 リュートは顔を引きつらせて、(けん)()の抱えた一升瓶を指さした。


「なんだよ慌てて。まさか飲んだことないの?」

「当たり前だ! つか『まさか』って、お前は飲んだことあんのかっ?」

「当然だよ、酒は社交の飲み物なんだから。まあ父さんに見つかるとうるさいから、時たまこっそりだけど」


 やれやれとばかりに、頭を左右に振る(けん)()

 リュートは大股数歩でベッドまでたどり着くと、(けん)()の手から一升瓶を引ったくった。


「あのな! アルコール摂取は発育に影響を及ぼすんだよ! 子どもが飲んでいいわけねーだろ!」

「なんだよ、つまんないな」

「お前の身体(からだ)の話だろ!」


 リュートが詰め寄ると、(けん)()は疑わしげに眉を上げた。


「僕様のことを心配してるとでも?」

「ああ。だから――」

「じゃあ君たちが飲んでよ」

「……あ?」


 間髪()れずに返された言葉に、一瞬言葉を失う。

 見下ろされたのが気に食わなかったのか、(けん)()はベッドの上でドスンと仁王立ちになった。腕を組んでこちらを見下ろし、偉そうに言ってくる。


「僕様の身体(からだ)が心配で、飲ませたくないんだろ。でもそれだと、せっかく持ってきた酒が無駄になるし、僕様はつまらない。だから君たちが飲んでよ」

「話聞いてなかったのか? 未成年は酒飲めねーんだよ!」

「だったら僕様が飲んで、君らに無理やり飲まされたって学長に言おうかなー」

「くっだらねえことをっ……」


 ギリギリと歯をきしませるリュート。その様をにやにや眺める(けん)()


「せっかくのお泊まり会だよ? 楽しませてよ」


 リュートはぎろりと(けん)()をにらみ上げると、


「……分かった」


 見せつけるように、深く息を吐いてから承諾した。


「リュートっ?」

「ちょっ……リュート様なに言ってんですか! こんなこと知れたら厄介なことになりますよ!」


 背後から上がる不服の声。

 リュートは振り向き、ローテーブルの上にどんと酒瓶を置いた。そして近寄ってきた仲間ふたりの腕を両手に握り、部屋の隅へと彼らを引きずっていく。

 (けん)()に聞かれないよう限界まで声を潜めながら、


「心配すんなって。セラとテスターは飲まなくていいようにもってくから。お前らは未成年でも、俺の本当の年は19――(わたり)(びと)の成人年齢だ。もし飲酒がバレたとしても、セシルに(じか)(だん)(ぱん)すればなんとかなる」

()()(くつ)だなー……」

「ていうかお兄ちゃん、お酒飲んだことあるの?」

「ねえけど、あの鈍臭(ぼっ)ちゃん黙らすにはこれしかねーだろ」

「そうはいっても……」

「なんだよみんなで内緒話? 感じ悪いんじゃない?」


 作戦会議の外側から、不機嫌さを隠そうともしない声が送られてくる。

 リュートはテスターとセラの背中をぱしんとたたくと、


「な、任せとけって」


 とだけ告げて(けん)()の元へと舞い戻った。


「悪い悪い。さっきの話だけど、セラとテスターは駄目だ。その代わりに俺が飲む。それと」


 棚の上に伏せ置かれたグラスのひとつを手に取り、


「酒は社交の飲み物、だっけか? てことは俺が飲んだら、俺とお前は友達か?」


 顔前に掲げながら、(けん)()へと確認する。グラス越しに映った(けん)()が、疑問符を返してくる。


「え、なに、君は僕様と友達になりたいの?」

「まーな」

「なるほどね。確かに君、友達少なそうだもんねえ」

「……まーな」

「いいよ、考えてあげる」

「よし」


 (けん)()の返事に――多少引っかかるところはあったものの――満足し、リュートはどさっと座り込んだ。ローテーブルにある一升瓶の栓に指を掛け、不敵に笑う。


「で、将来の夢だっけか? 語ってもらおうじゃねえかお(ぼっ)ちゃま」


◇ ◇ ◇

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