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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第4章 マネー! マネー! マネー!
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2.至極まっとうで謙虚確実な報酬の取得手段すなわち有償奉仕② 歓迎するぜ

◇ ◇ ◇


 椅子の背に手を添えながら、ゆっくりと立ち上がる。特に負荷は感じない。

 ぎしぎしときしむ骨に若干の不安は残るものの、体重の方は無事元に戻ったようだ。


(ったく。ようやくまともに動くようになったぜ)


 リュートは(あん)()の息をついた。昼食も兼ねて、体重が戻るのを食堂で待っていたのだが、なかなか変化が起きないから心配になってきたところだった。

 午後は用事が詰まっている。身体(からだ)が戻ったのなら、食堂に長居は無用だ。

 空のランチプレートを返却すると、リュートは数時間ぶりに軽くなった身体(からだ)を存分に動かし、すたすたと食堂を出た。寮室から取ってきた()(けん)が、歩みに合わせて揺れる。向かうは駐車場だ。


(約束は14時だったよな。ってことはセラのやつ、もういるんだろうな)


 基本的に、妹は時間に(ちゅう)(じつ)だ。10分前ともなれば、いると思って間違いない。


(……そうか。時計ってのもいいな)


 左手首の腕時計を見ながら、思いつく。

 それをきっかけにいろいろな考えが浮かび、あーでもないこーでもないと脳内会議をしているうちに、駐車場へとたどり着いた。

 案の定そこにはすでに、金髪の少女の姿があった。駐車上脇のコンクリートブロック塀に腰掛けながら、こちらが近寄る一挙一動を、じっと視界に収めている。

 リュートが目の前に来ると、セラは叱るように言ってきた。


「遅いわよお兄ちゃん」

「言うほど遅れてないぜ。ちょうどくらいだ」

「10分前行動! 基本でしょ」

「すべき時はしてんだからいーだろ」

「へえー。私との約束は『すべき時』じゃないんだ」


 目をすがめるセラに、リュートは片手のひらを向けた。


「突っかかるなって」

「突っかかりたくもなるわよ。そのせいで、なんか面倒くさそうな子に絡まれたんだから」

「面倒くさいって?」

「異様なまでの女神信奉者」

「それお前じゃん」


 ズバリ言うが、セラは首を横に振った。


「表向きの、でしょ。本当は『これ』なんだから、相手するだけで疲れるのよ」

「そっかそっか。ならその気持ちを大切にして、お前も普段のテンション調節してくれよな。俺だって結構疲れるんだぜ」

「そんなこと知ったこっちゃないわ」

「せめて仕方ないふうは装えよ」


 非対称に顔をしかめ、リュートは駐車上の入り口へと目を向けた。そろそろ到着するはずだった。

 セラもつられるようにして、身体(からだ)ごと視線を動かす。

 今か今かとふたりで待ち構えていると、それはもったいぶるように、ゆっくりと駐車上に入ってきた。


 守護騎士(ガーディアン)の出動車ではない。世界守衛機関(WGO)の公用車だ。黒い車体が反射した日光に、リュートは目を細めた。

 邪魔にならないよう注意しながら、セラと共に車へと近づいていく。


 バック駐車で停止した車の後部ドアが(ひら)き、若い女守護騎士(ガーディアン)が出てくる。目が合ったので会釈すると、彼女も同じように返してきた。

 女守護騎士(ガーディアン)が車の後ろから回り込み、反対側の後部ドアを()ける。

 中から出てきたのは、リュートの見知った顔だった。


「ありがとうございます」


 彼女はドアを()けてくれた守護騎士(ガーディアン)に礼を言うと、こちらの姿を捉えて顔を緩めた。普段縁のないものに囲まれ緊張していたところに、ようやく見慣れたものを見つけてほっとしたのだろう。


「こんにちは。(あま)()君、(みず)(たに)さん」


 とてとてとうれしそうに駆け寄ってくる彼女に、リュートたちは歓迎の意を示した。


「こんにちは。ようこそ(わたり)(びと)の学校へ」

「まあ面白いもんなんて特にないけどな。歓迎するぜ、()(どう)


◇ ◇ ◇

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