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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第4章 マネー! マネー! マネー!
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1.極めて健全かつ堅実身近な資金調達方法すなわち学内バイト③ 君もあの男には気をつけなよ。

◇ ◇ ◇


「うし、これで最後だな」


 ゴミ袋を収集BOXに投げ込み、トントンと肩をたたく。

 3往復してようやくゴミ出しが終わった。といっても収集BOXはクラブ棟のすぐ近くにあるので、いうほど面倒でもなかったが。

 リュートはクラブ棟へと戻りながら、ふと気づいた。


(そういや謝礼のこと聞きそびれたな)


 別にフリストの誠実さを疑うわけではないが『多額の謝礼』というふわっとした情報だけでは、やはり心もとない。


(事務局から募集の許可を得たってことは、不当な内容じゃねーんだろうけど……それとなく聞いてみるか)


 すたすたとクラブ棟の前まで来たところで。

 ガチャリと扉が()いた。


「あ」


 ()いたのはギジケンではなく、その隣――(ざん)(こん)研究会の部屋。


「リュー?」


 扉から出てきた女生徒がこちらを見て、()(いろ)の髪とそろいの丸い()(がん)をしばたたかせる。(ざん)(こん)研究会の会長、ツクバだ。


「おはようございます。ツクバ(せん)ぱ――」


 言葉半ばにデコピンを食らう。

 ツクバは両手を腰に当て、ずいと身を乗り出してきた。


「君ねえ、あれから全っ然研究会に来ないじゃないの。もっと会員としての自覚をもってほしいわね」


 それがさも当然の苦言だとでもいうように、形のいい唇が言葉を紡ぐ。

 リュートはそれを半眼で見返しながら、


「自覚っていうか、会員になってることすら知りませんでした」

「なに言ってんのよ、考えとくって言ったじゃない」

「言いましたけど」

「つまりはオッケーってことでしょ」

「社交辞令って知ってますか?」

「既成事実って知ってる?」

「負けました」

「よろしい」


 満足げにうなずき、ツクバがすとんと両手を落とす。彼女は扉に鍵をかけると、振り返って頭をかいた。


「でも来てくれたところ悪いんだけど、私ちょっと用事があんのよね」

「大丈夫ですよ。また来ますから」


 勘違いしているらしいツクバに、適当に調子を合わせる。彼女はギジケンとは犬猿の仲だったはずだ。助手のバイトをしているだなんて知れたら、後が怖い。

 と、ツクバが思い出したように口を(ひら)いた。不快げに目をすがめながら、


「そういえば君、香水かなにか付けてる?」

「え? いや、付けてませんけど」


 ぎょっとして否定する。どうやら例の()()()()()な香りが、身体(からだ)に移ってしまっていたらしい。たった少ししかとどまっていないのに、なんともすごい香気だ。


「じゃあまたギジケンから漏れてきてんのね。あの(こう)(がい)男」


 ツクバが厄よけの仕草をしながら、ギジケンの扉をにらみつける。


「君もあの男には気をつけなよ。会員いないもんだから、すーぐに取り込もうとすんの。うっかり話そうものなら、こっちの意思も都合も無視して、いつの間にか会員にされてたりするわよ」

(いや)(おう)なしですか。それは怖いですね」

「でしょー」


 こちらの皮肉は無視してツクバがうなずく。もしかしたら、素で気づいていないのかもしれない。


「それじゃあ私急ぐから。またね」

「ええ、また」


 小走りに去っていくツクバを見送り、リュートはギジケンの部屋へと戻った。


◇ ◇ ◇

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