表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第3章 悔恨エクソシズム
155/389

4.終息する変事③ なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ!

◇ ◇ ◇


 取りあえず、また機会を失う前に小用だけは済ませて。

 女子トイレから出てきた(りん)と目が合うと、リュートは軽く片手を上げた。


「よお」

「うわ待ち伏せとかキモッ」


 ゆがめた顔を身体(からだ)ごと背け、逃げ去ろうとする(りん)

 リュートはトイレ向かいの壁から離れ、彼女の肩を後ろからつかんだ。


「角崎、待てって」

「……まさかあんたもトイレ寄った? せめて手は洗ってるんでしょーね?」

「当たり前だ!」


 引き気味に振り返る(りん)に短く叫び、彼女の前へと回り込む。


「ひとりじゃ危ないだろ」

「うるさいわねっ。一緒にいたって大して役に立ってないくせに!」


 (りん)はズバッと切って捨てると、靴先で壁を小突きだした。


「あーもう、本当いい加減にしてほしいわ。死んだキモおやじに八つ当たりされたり変態守護騎士(ガーディアン)と一緒につながれたり……なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ! 一体私にどうしろっていうの⁉」


 昼休み中のため廊下には生徒が行き交っているのだが、(りん)はそんなことお構いなしに当たり散らしていた。

 被害ばかりを訴える(りん)にさすがにいら立ちが募り、リュートは腕を組んで皮肉を発した。


「さーな。須藤や山本に土下座でもしてみればいーんじゃねえか?」

「はぁっ⁉」


 (りん)は金切り声を上げると、限界まで眉をつり上げた。


「もういい! あんたウザいし!」

「おい、だから待てって!」


 早足で去ろうとする(りん)を追い越し、リュートは再び立ち塞がった。


「ちょっとついてこないでよストーカー!」

「そういう問題じゃねーだろ!」

「別にあんたに関係ないでしょ! なに? あんた私のことでも好きなわけ⁉」

「あ⁉ んなわけねーだろっ! つかお前みたいなクズ、誰ひとりとして好きにならね――」


 勢いでまくし立てて、はたと口をつぐむ。

 (りん)の目に涙がにじんでいた。

 その顔は、目にたまる水を意地でも流したくないとばかりに不自然に引きつっており、口はぎゅっと(いち)(もん)()に閉じられている。

 予想外の出来事に動揺し、半歩身を引くリュート。


「な……んだよ。お前だって、いつも俺のことぼろくそに言ってるじゃ――」

「るさいっ!」


 どんと肩口を殴られる。

 (りん)は拳をリュートの肩に押し当てたまま、下を向いて叫んだ。


「うるさいのよあんたは! もう、私のことなんてほっといてよっ!」


 とどめにもう一発拳をたたきつけ、(りん)は逃げるように駆け去った。

 取り残されたリュートは、不服げに口を曲げるしかなかった。


(……別にいいさ。()(しん)が関わってるわけでもねーし、あいつ自身が拒んだんだ。(ざん)(こん)に狙われるのだって、自業自得ではなくとも因果応報だろ。わがままなガキひとりに俺が構う義理は――)


 散々言い訳を並べ立て、到達した結論は。


「……くそ、年上って損だ」


 リュートは(りん)の姿を求めて駆けだした。


◇ ◇ ◇

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ