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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第3章 悔恨エクソシズム
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1.垣間見える幻妖⑪ なんか心が疲れてるようだけど

「そういえば(りゅう)()君、今日はどうしたんだい? 変だったよ。まるでなにかに()かれてるみたいで」


 思い出したように言う銀貨に、リュートはがたりと反応した。いちるの望みにすがるように立ち上がり、


「もしかしてお前、幽霊とか詳しかったりするのか?」

「いや、そんなことは……って、え? じゃあまさか、今日のは全部幽霊が――って言いたいの?」

「お前今すっげー見下しただろ」


 半目でにらむと、銀貨は慌てて首を横に振った。


「そんなことないよ。君たち異世界人がいたなら、幽霊が実在してたっておかしくないし……」


 ごまかすように一息に言ってから、銀貨はゆっくりとまばたきした。


「えーっと……つまり(りゅう)()君は今、幽霊に()かれているの?」

「そう、だな……たぶん」


 面と向かって聞かれると自信がなくなり、リュートは控えめに肯定した。

 ()(たん)、ぱあっと顔を明るくする銀貨。


「そうなんだっ、すごいや。ねえねえ(りゅう)()君。()かれてるってどんな感じなんだい?」

「そのえぐり込んでくるような好奇心、抑えないと友達なくすぞ」

「確か左腕がどうとか言ってたよね」


 リュートの忠告をすんなり無視して、銀貨が左腕に()れてくる。


「だからな山本。世の中には遠慮ってもんが――」


 つかまれた左腕を離そうとした時、またもやその主導権が消え去った。

 左腕が銀貨の手を振り払い、その肩口へと振り下ろされる。


「――っ⁉ やば、よけろ(やま)も――」


 リュートは叫び声を出し損ねて、口を半端に開け放した。

 てっきり銀貨を傷つけるのかと思われた左腕は、予想外の動きを見せた。

 攻撃的な拳ではなく友愛の手のひらで、ぽんぽんと、銀貨の肩を優しくたたいたのだ。


(りゅう)()君……なんで?」

「いや……俺にもさっぱり」


 互いに答えを見つけられず、左腕を見つめていると。


「あーまーぎー君っ!」


 バンッと司書室の扉を押し開け、悦子が入り込んできた。


「あなた、大道具壊したでしょ⁉」


 『図書室では静かに』という張り紙の前でがなる悦子に、リュートは左腕を引き寄せて答えた。


「俺じゃない。(ざん)こ――例の悪戯(いたずら)する鬼の仕業だって」

「この際どっちでもいいよ、大事なのは大道具が壊れたってこと! 早く直して!」


 リュートは助けを乞うようにセラとテスターを見たが、涼しげな顔で無視された。


(覚えてろよ……)


 内心で(のろ)って、再び悦子へと向きやる。左腕のコントロールは戻っていたが、不安なので右手で押さえながら。


「いや俺もう、大道具係じゃないし」

「作った人が直した方が早いでしょ? 月曜には使いたいの!」

「でも俺、今日はちょっと調子が良くな――」


 ガシッと腕をつかまれる。


「なんか心が疲れてるようだけど、だったらなおさら身体(からだ)を動かして、心の健康取り戻さないと! そしたらきっと破廉恥な欲情も消え去るよ!」

(すこ)やか! 俺めっちゃ(すこ)やかだからお願いだから誤解しないで!」


 取りあえずそれだけは伝えたくて、リュートは必死に訴えながら引きずられていった。


◇ ◇ ◇

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