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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第3章 悔恨エクソシズム
129/389

1.垣間見える幻妖⑥ 神だからな。

「どこにいるんだ? つかお前には分かるのか?」

「神だからな。力が衰えていても、貴様らごとき愚鈍な生物とは能力が桁違――」

「いですね、さすが女神様です分かったから早く場所言え」


 自慢を強引に中断され不服そうではあったが、女神はきちんと答えてきた。


「場所は2階の……お前たちの教室、か?」

「よし! 行くぞ!」


 明確な目標が現れたことで、やる気も回復する。女神が付いてきていることを確認しながら階段を駆け上がり、リュートは1年1組の教室へと急いだ。

 遠慮のない足音で静けさを打ち破り――響けばテスターたちも、なにかあったと気づくだろう――教室に近づいたところで、こころもち足音を忍ばせる。

 その身に含まれる女神の因子でどうせ存在は気取られるだろうが、なにぶん今回の()(しん)は得体が知れない。少しでも様子をうかがう時間があるのなら、それに越したことはなかった。

 なにか――音からして木製か――が壊れるような音が、聞こえてくる。

 リュートは教室前側の扉に身を隠し、顔だけをそっと出して室内をうかがった。


(……本当にいるし)


 もちろんその前提で来たのだが、にわかには信じ(かた)いものがあった。

 もし遠目から見たなら、2メートル強の、全身白タイツ人間に見えなくもない。

 ただし肘・膝(かん)(せつ)から先が異常に腫れ上がった身体(からだ)と、赤い軟物質が大きなひとつ目のように埋め込まれている顔を無視すれば。


()(しん)……だよな?)


 それはどう見ても()(しん)だった。女神の命を狙い、その身を()とした神の成れの果て。

 その()(しん)が今、目の前の教室内にいる。加えて、


「ほう。確かに悪戯(いたずら)をしているな」


 追いついてきた女神が、耳元でささやく。その息に()れれば身が凍る――というわけでもないのだが、リュートは半歩分右によけ、改めて室内に視線を定めた。

 女神に関すること以外には全く興味を示さないはずの()(しん)が、教室後方の隅に置かれた、ベニヤ板と角材で作られた創作物を踏み砕いていた。


「俺が作った大道具……」


 作り直しに要する時間を思い浮かべ、リュートは恨めしくつぶやいた。が――実際に直すのは、リュートから大道具係を引き継いだテスターであるということも手伝い――すぐに頭を切り替える。


(テスターの言う通りだ。次元はずれていない……し、俺たちに気づいた様子もない。つーかなんで悪戯(いたずら)なんだ?)

「おい、どういうことだ?」


 言葉少なに女神に問う。言いたいことは伝わったらしく、彼女は間を置かずに要点だけを返してきた。


「あれは()(しん)ではない――(ざん)(こん)だ」

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