表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第2章 共生のススメ
121/389

5.立場の選択⑩ 窓から差し込む日の光を浴びながら

◇ ◇ ◇


()(けん)だ」

「あぐ……」


 目の前の机上に投げ置かれた()(けん)を見下ろし、リュートはうめき声を上げた。

 穏やかな物腰で、セシルが手を組みかえる。

 日曜の朝に呼び出しをくらい、嫌な予感はしていたのだ。その予感はズバリ的中したが、まったくもってうれしくない。


「今朝世界守衛機関(WGO)の事務局宛てに、これが届いた。手紙と一緒にな」


 机の端に置いてあった紙を指でスライドさせ、セシルが()(けん)のそばまで持ってくる。読めということだろう。


『天城君へ。長いこと取り上げちゃってごめんね。私の考えは譲れないけれど、そっち側のシンポジウムとかにも参加して、いろいろ考えてみたいと思う。(まも)ってくれてありがとう。月島未奈美』


 リュートが読み終わる頃合いを見計らい、セシルが手を組み直して口を(ひら)く。


「どうやら()()()()()()は、地球人と友好的な関係をつくるのに一役買ったらしい。褒められるべきことだな……しかしまあ、それはそれとして」


 セシルが再び手を組みかえる。

 一見なんの変哲も無い動作だが、リュートは知っていた。

 机に肘を突き、やたら手を組みかえる。これはセシルがいら立っている時に出る癖だ。


「私の記憶によれば、君から()(けん)の紛失届は出ていないはずだが?」

「いや、これは……」

「どういうことかね?」

(あの女……俺に連絡しろっつったのに……!)


 最後まで迷惑を届けてくれた未奈美に、リュートは(じゅ)()を送り返した。

 組んだ手をほどき、セシルがぱんと机をたたく。さも寛大な処置を言い渡すかのように慈悲の笑みを浮かべ、


「処罰に関しては追って通達する。腹部の傷が完治していてよかったよ。こちらとしても遠慮無く罰せられる」

「はは……」


 窓から差し込む日の光を浴びながら、リュートはただただ引きつり笑いだけを浮かべていた。






《第2章》共生のススメ――了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ