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愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第2章 共生のススメ
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4.学校ウォーズ⑦ 先鋭的に、攻撃的に

 一撃を食らう瞬間、威力を軽減するため自ら斜め後方へと跳んでいた。

 それでも容赦なく後方へと押しやられ、背中から地面にたたきつけられる。

 一瞬ぶれた(のち)回復した視界には、迫る()(しん)の左拳。


 左肩は地面に抑え込まれたままだが、精いっぱい身体(からだ)をひねって拳をかわす。

 (いな)、完全にはかわしきれず、鋭い爪が右肩口をかすった。

 それについてはリュートは無視し、逆手に持ち替えた()(けん)を、()(しん)の首へと突き刺した。


 ()(しん)がのけ反るように顔を上げる。()(しん)に痛覚はないから、その動きは負傷によるものではなく、単なる攻撃の予備動作だろう。

 そうやって予期できても、()けられないのがつらいところだが。

 眼前に迫る迫力に、生じないはずの風を切る音すら錯覚で聞こえてくる。


「ぐっ⁉」


 こめかみへの衝撃、次いで地面に激突した後頭部への衝撃が頭を揺らした。

 地面に縫いつけられたままではそれが限度だと思っていたが、予想外に身体(からだ)が飛ぶ。()(しん)(くさび)となっていた手を、リュートの肩口からどかしたのだ。

 解放されたのを幸いと、リュートは地面を転がるに身を任せた。


 止まったところで立ち上がろうとするが、視界が揺らぎうまくいかない。いや、揺らいでいるのは頭の中身か。それすらもよく分からない。

 それでも肘を支えになんとか半身を起こし、()(しん)との位置関係を確認する。

 ()(しん)はリュートから5メートルほどの距離にいた。つまりはそれだけの距離を、飛ばされ転がされたというわけだ。


「ち……っくしょ……()(けん)は……?」


 ()(しん)の首にそのシルエットを探すが、もはやそこに()(けん)はなかった。リュートの集中が途切れたことでただの鉄棒に戻り、()(しん)の足元に転がっている。

 ()(しん)の傷口からは、赤い粘液――リュートの血液が流れ落ちようとしていた。()(けん)の位置を触覚的にも視覚的にも補足できなくなったため、干渉はほとんど途切れかけている。


(今ならまだ、やつの因子に食われていない……いけるか……?)


 以前一度、()(けん)を通さず体外の血液に干渉し、(けつ)(じん)を創り出したことはある。それも大量に。

 しかしそれは、女神がとっさに力添えをしてくれたおかげらしい。これは当人から小馬鹿にするようにして聞かされた――「まさか貴様、本当に自分にそんな実力があるとでも思っていたのか? それはあまりにもずうずうしい思い込みであろう」――ので、間違いはないだろう。

 そうなると今からやろうとしていることに、なんの保証もついてこないことになるが……


 リュートは奥歯を()みしめ、再干渉を試みた。

 対象は、()(しん)の傷口に入り込んだリュートの血。自身の体内を巡る血液に干渉しないよう、慎重に、しかし迅速に意識を練り上げていく。

 ()(しん)が追い打ちをかけるべく、身体(からだ)ごとこちらに向き直った。

 血液が固形化していくのを感じる。

 が、思い描いた外形になる前に、ぎちりと変化が止まった。内側から、()(しん)の肉壁にぶち当たったようだ。

 ()(しん)は気にしたふうもなく、こちらへと向かってくる。


(もっと……もっとだ……!)


 息を()め、先鋭的に、攻撃的に創造する。

 ずぐん! と。

 複数の(とげ)に形を変えた血が、()(しん)の白肌を突き破り出てきた。実際に自分の手で貫いたような錯覚に、ぞわりと総毛立つ。


「やめて……」


 かすれた声が耳に届いた気がした。

 が、そちらに気をやっている余裕はない。()(しん)はもう目の前だ。


(……ぶち抜けっ!)


 リュートは胸中で()え、イメージを()ぜさせた。

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