表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚神と愚僕の再生譚  作者: 真仲穂空
第2章 共生のススメ
102/389

3.ある家族のかたち⑪ 僕だって分かってるんだ。

◇ ◇ ◇


 本屋へ向かう道すがら。


「そういや勇人、こっち来てよかったのか? さっきはあれだけ手伝うって張り切ってたくせに」


 勇人の口数が減ったことを気にして――というわけでもないのだが、リュートは積極的に話を振っていた。


「うん、まあ別に……暇潰しになればなんでもいいし」


 勇人は明らかに、なにかを気にしているようだった。その問題に踏み込んでいく義理も権利もないのだが、こうも目の前でしょぼくれてしまわれると、なかなか対応に困るものである。

 商店街の歩道は狭く、リュートと勇人が並べばもう余裕もない。そんな距離感だからなおさら、沈黙の継続は決まりが悪かった。

 開店後すぐに本を取りに行く予定が、気づけばもう昼も間近。すれ違う通行人の中には、(わたり)(びと)の学生と児童の組み合わせにいぶかしげな顔を見せる者もいた。幸い問い詰められることはなかったが。

 そろそろ本屋に着くかという頃、勇人の方からその話題に()れてきた。


「僕だって分かってるんだ。母さんは悪くないってこと」


 顔は前を向いたまま、勇人が続ける。


「でもサキのことばっかりかまってさ。嫌なものは嫌なんだ」


 見下ろしたところで(とう)(ちょう)のつむじしか見えないが、リュートはそのつむじに向かって忠告をした。


「ま、思うだけならいいけど。くだらない気を起こして、変なことやらかさないようにな」

「なんだよ変なことって」


 勇人がぶすっと顔を上げる。


「あー、そうだな……」


 具体的な失敗例がある方が、参考になるかもしれない。

 その程度の考えで、リュートは自分の失敗例を勇人に話した。もちろん外部に漏らせないことは、適当に省いて。


「――ってわけだから、下手なことしても後悔するだけだぜ」


 リュートの話を聞き終え、勇人が発した第一声は。


「お前、妹をサンタに売ったのか? ひっでーやつ!」


 まあ順当な感想だった。

 驚き半分あきれ半分といった形で目を丸くする勇人に、リュートはごまかすように笑いかけた。


「だなー。それに比べたらお前はすねてるだけだから、まだマシかな」

「そんなんよりマシでも、別に全然うれしくない!」

「それもそうか。ま、嫉妬もほどほどに――っと、着いたな」


 勇人の髪をわしゃわしゃとなで、リュートは立ち止まった。

 目の前には小さなスーパーマーケット。用があるのはそこ……ではなく、その2階部分にある本屋だ。学校用の図書教材を扱っている割に、規模としてはそんなに大きくはない。そういうものなのかもしれないが。


「早く買おーぜ!」


 たん、たん、とリズミカルに階段を上っていく勇人に、リュートも続く。

 勇人の欲しがっている漫画は、店内の該当コーナーですぐに見つけることができた。しかし、


(ついでに俺もなにか買っとくか)


 と思い立ち、漫画を抱きかかえている勇人を連れて、参考書・問題集のコーナーをのぞいてみる。


(結構種類が多いな……あらかじめ絞ってきた方がよかったか……?)

「お前守護騎士(ガーディアン)なのに、勉強の本買うのか?」


 興味をもったのか、単に暇を持て余していることのアピールなのか、勇人が意外そうに聞いてくる。

 リュートは棚に並ぶ背表紙を目でさらいながら、


「俺は正規の守護騎士(ガーディアン)じゃなく、あくまで学生だからな」

「ふーん。頭いいのか?」

「想像に任せる」

「まあ結果出なくても、勉強だけが全てじゃないってアニメで見た」

「任せた手前言いづらいけど、当然のごとくそこに帰結されると多少へこむ」

「あ、いた。お兄ちゃーん」


 一瞬自分には関係ないと聞き流しかけてから、リュートはワンテンポ遅れて声に反応する。


「セラ?」


 振り向くとそこには、テスターとDAG(ダッグ)女の家を張っているはずの、セラがいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ