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7.ソレイアのお人形

 スロイン先生に今日は一旦帰って明日から学校に来て欲しい旨を伝えられたので、家に帰って明日からの学校に備える。


「家の掃除を手伝ってくれないか? キュリーに手伝ってもらった方が何倍も早く終わるしな」

「はい。掃除を手伝います」


 キュリーと一緒に家の中全体を掃除した。一人だったら一日くらい掛かるような量だったが、二人で掃除したら三時間程度で全く掃除されてなかった家を掃除し終わった。


「キュリーが手伝ってくれると早く終わるな。家の中がもういつも通りになったみたいだ」

「はい。家事でも何でもお任せ下さい」

「……キュリーは料理とかも出来る?」

「はい。汎用型ですので料理も出来ます」


 なんだって!? 汎用型凄い! 強いし、かわいいし、家事も全般が出来るなんて最高じゃないか!


「じゃあお願いしていいかな?」

「はい。ではお時間をいただくので座ってお待ち下さい」


 そう言ってキュリーは夕飯を作り始めた。しばらくするとキュリーは出来上がった料理を運んできた。


「ソレイア。出来ました」

「本当にうまそうだな。冷めないうちに早く食べてもいい?」

「はい。どうぞ召し上がってください」


 俺はキュリーが作ったトマトのスープを食べる。母さんの味とは違うが、これはこれでかなり美味しいと感じた。


「美味しいよ。さすが汎用型だな」

「はい。ソレイアに喜んで貰えて良かったです」


 そう言ってキュリーも自分の口にスープを運び始めた。そして俺もキュリーもすぐに夕飯を食べ終え、流れるようにそのままキュリーは食器の片付けをしようとした。


「あ、いいよ! 片付けくらいは俺がやるから」

「いいえ。私に任せて下さい」

「……じゃあ手伝ってくれるか?」

「はい。分かりました」


 さすがに何でも任せっぱなしだと悪いと思ったので俺が後片付けをしたかったが、キュリーが片付けると言い張るので食器を拭くのを手伝ってもらい、二人で食べ終えた食器を片付けた。


「じゃあ夕飯も食べたしお風呂に入って寝るだけだね」

「はい。夜伽はお任せ下さい」

「いや! しなくていいから!」

「はい。分かりました」


 本当にこの子は汎用型なんだろうか? 夜戦特化型とかなんじゃないかと思ってくる。


 俺はキュリーに先にお風呂に入るか聞いたら、後でが良いと言うので俺が先に入ることにした。


 ふぅー。やっぱり湯船は落ち着くな。


 湯船に浸かりながら今日のキュリーの入学試験の事を考える。


 本当に戦闘も出来てたなぁ。料理も掃除も出来て、本人も完璧な見た目なんて……汎用型って言葉で全て片付けてるけど、何でも出来る凄い子だよなぁ。


 そんな事を考えていると浴室の扉が開かれた。


「ソレイア。お背中を流しに来ました」

「ちょっと! 何で入ってきたの! そして何で服を着てないの!」

「はい。風呂場で服を脱げとソレイアに教えられたからですが?」

「そ、それはそうだけど……そう言う意味で今は言ったんじゃない!それよりも何で身体を洗いに来たの!?」

「はい。汎用型ですので」

「そういうのはいいから! いいかいキュリー? 許可もなく人が入ってる風呂に入らない!」

「はい。これからは許可を取ってからにします。……では許可を頂けますか?」

「ダメです」

「いいえ。浴室に入れてください」


 何でそんなに俺の身体が洗いたいんだ! でも、何故だか引いてくれない気がする……さっきの片付けのときもちっとも引こうとしなかったし、中々に強情なのかもしれないな。


「……分かった。じゃあお願いするよ。でも! その前にせめてタオルを身体に巻いてくれ!」

「はい。お任せ下さい」


 一度キュリーは外に出て浴室の扉を閉めた。そしてすぐに身体にタオルを巻いて戻ってきた。


「失礼します。では、お背中を流すのでここに座って下さい」


 俺はキュリーに言われた通りに浴室の椅子に座ると早速キュリーが背中を洗ってくれた。


 ……ルネと一緒にお風呂に入ってた小さい頃はお互いに背中を流し合ってたな。


 キュリーに背中を洗って貰ったら昔のことを少し思い出した。


 必ず連れて帰るからなルネ。


「はい。終わりました」

「ありがとうキュリー」

「はい。では失礼しました」


 そう言ってキュリーは浴室から出て行った。……前を洗われなくて良かったと少し思った。






+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+






 翌日キュリーと一緒に騎士学校へ向かう。昨日スロイン先生から貰った騎士学校の生徒の証の襟章をキュリーも付けて学校の門を潜る。昨日とは違い監視員の人にも呼び止められる事は無かった。


「一応スロイン先生に挨拶に行こうか」

「はい。その方がいいと思います」


 キュリーも引き連れて一階の職員室の中に入り、スロイン先生が居るかを近くにいた先生に聞く。その先生は一旦席を離れてスロイン先生を連れてきてくれた。


「おお、ソレイア君と……ヴァルキュリエ君だったかな? ここに寄ってくれたんだね。因みに君たちの担任は私だからよろしく頼むよ。あぁそうだ君たちの教室は四階の一番端の教室だ」

「ありがとうございます。またよろしくお願いします」

「はい。ありがとうございます。それと私のことはキュリーとお呼び下さい」


 スロイン先生は頷いて肯定を示すと、俺たちに先に教室に向かうように指示した。俺たちは先生に従って先に教室へと向かった。

 五階建て校舎の一階の職員室から、四階の自分達の教室へと向かう。その道中で色々な学年から声を掛けられた。前の首席の学校復帰を祝ってくれる声や、どうして学校に来なかったのかという声など俺の事を想ってくれていた事に軽く感激する。だが、


「おいおい。学校をサボってお人形遊びしてた噂がある()首席様が今さら騎士学校に何のようですか?」

「……グレイズか。別にサボってた訳じゃない。騎士学校に来れなかっただけだ」


 俺が首席のときの次席に就いていた、いいとこの貴族様で去年まで同級生だったグレイズ・ベルンが俺に食ってかかる


「嘘を言うな! お前が自分のお気に入りのお人形を前首席のコネで入学させたって噂は学校中に知れ渡ってるんだよ!」


 キュリーならそんなの要らないけどな。


「大方そこに侍らせてるソイツがお前のお人形なんだろ!?」

「はい。私はソレイアの人形です」


 キュリーは喋らないで欲しいんだけどなぁ。


「どうせ自分が首席だからって騎士学校にも来ないで家でソイツに色々やらせてたんだろ!」

「はい。ソレイアの色々な事を手伝いました」

「キュリー? それは語弊があるよ?」

「いいえ。手伝いました。例えば……ソレイアのお背中を流したりしました」


 なんでそこだけをピックアップするんだよ!


「お前は風呂でその美人な子にそんな事させてたのか!?」


「はい。ソレイアからお風呂場では服を脱げ等の色々な事を教えられました。それなのに私に色々な事を教え込んでおいて、私が入れて下さいと懇願しても中々入れてくれませんでしたが、かなり焦らした後にしっかり入れてくれました」

「きゅ、キュリー! 浴室にって言葉をしっかり付けて! 周りの人が騎士学校首席に向ける尊敬の目から、夏場に二週間放置した生ゴミを見る目になってるから! 語弊が無いようにちゃんと訂正してくれ!」


 この子本当はわざと言ってるんじゃ無いだろうか? 俺のことを陥れたいだけなんじゃなかろうか?


 周りから、元首席様はゴミだとか女の子を自分好みに改造するだとかそんな声が聞こえて来る。


「やっぱりお人形と色々やってたんだな! 騎士学校を舐めやがって……お前なんかこの学校にはもう要らないんだよ! さっさと出て行った方が皆のためにもお前のためにもなるんじゃないか!?」


 そう言ってグレイズは五階への階段を登って最上級生の教室に行ってしまった。そして、その様子を見物していた人達もなるべくなら関わりたくないといった感じで散り散りにそれぞれの教室へと戻っていった。


「はい。私は浴室に入れて欲しいとソレイアにお願いしました」

「……もう色々と遅いよ」

「はい。訂正しました。問題がありましたか?」

「問題だらけだよ!」


 俺はキュリーを連れて重い足取りのまま四階の自分の教室へと向かったのだった。

ある程度人物像固めてるとすごく書きやすかったです。


一作目の反省を踏まえて今度からはこうやって行こうと思いましたまる


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