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6.入学試験

 俺とキュリーは入学試験場所に着くなりすぐにスロイン先生から軽く説明を受ける。


「これから三つの試験を受けてもらう。一つ目は魔法の試験、二つ目は魔法なしの戦闘試験、そして最後に魔法ありの戦闘試験だ。この三つのうちの二つが合格点に届いていれば入学出来ることになっている。分かったかい?」

「はい。問題ありません」

「戦闘試験は誰が相手になるんですか?」


 俺は戦闘試験の相手がまだ試験場所に来ていないんじゃないかということを危惧してスロイン先生に問いかける。


「いや。私が相手をする」


 いや! 無理でしょ! この学校が好きで先生をやりたいからって理由でこの国の近衛騎士団長の誘いを断り続けている人だぞ! 間違いなくルネと同じ天才の部類の人間が戦闘試験の相手なんてしちゃダメだろ!


「スロイン先生だと試験にならないと思うんですが……」

「私に勝てるくらいならば、すぐにでもソレイアと同じ学年に入学しても文句は出ないと思うよ?」

「そ、そうかもしれないですけど」

「ソレイア。私なら問題ないです」


 何が問題ないか根拠と理由を三十文字以内で教えてほしいくらいなんだが?


「よし。ならもう始めようか。あそこに大きめの木の人形があるだろ?あれに向かって攻撃魔法を放つんだ。試験項目は魔法陣の展開速度、魔力量、魔法の威力を試験する。人形が層になってて中心に近くなる程硬くなる。命中精度もとわれるからしっかり狙ってくれ。ちなみに魔法の種類は何でも構わないよ」

「分かりました。どうぞ始めて下さい」


 スロイン先生はペンと紙を取り出して開始の合図を出した。


「では。始め!」


 その開始の合図と共に大きな音を立てて人形が、中央を中心に木っ端微塵に弾け飛んだ。


「「え?」」

「どうしましたか。何か問題でもありましたか?」


 問題も何も魔法を撃つのが速すぎる……そもそも魔法陣を展開してなかったけど?


「一応余裕で合格点だが……今のは魔法だったのか? そもそも魔法陣を展開したようには私の目からは見えなかったが……」

「はい。魔法陣は展開していないです」

「じゃあ魔法ではないのだな?」

「いいえ。魔法です。私は無数の魔法陣を脳の記憶領域の中に構築された状態で作られていますので魔法陣の展開をしなくても魔法を使えます」

「言っていることは良く分からんが魔法なんだな?」

「はい。その認識で合っています」

「まぁ本人が魔法って言い張るならそうなんだろうな。人形が木っ端微塵になったんだから凄い魔法だとは思う。なので魔法の試験は合格点で問題はない」

「はい。ありがとうございます」


 え? 汎用型ってこんなに魔法に特化した性能をしているの? 魔法特化型とか居たらキュリーより凄い奴なんだろうか……。


 スロイン先生はペンで紙に何かを記入し、試験場所にあらかじめ置かれてある木剣を二つ取り。そのうちの一本をキュリーに手渡した。


「それじゃあこのまま二つ目の試験を始めようか。魔法は使わない戦闘を見せてもらう。俺が君から一本取るか、君が俺に一発でも当てられたその時点で戦闘試験は終了だよ。ソレイア君開始の合図をお願い」

「あ、はい。では……始め!」


 開始の合図を聞いたキュリーはすぐには間合いを詰めずにその場から木剣を投げつけた。


 スロイン先生は飛んできた木剣を弾き飛ばしたが、木剣に気を取られて既に間合いを詰めていたキュリーに気が付くのが遅れた。木剣をキュリーの肩から斜め下に薙ぐように振るうが、キュリーはそれを元々低い姿勢からさらに下に潜って躱し、スロイン先生の腹に拳をめり込ませた。


「そこまで!」


 俺の合図でお互いにそれ以上の動きを止めた。


「まさか木剣をすぐに捨てるなんてね。普通は考えつかないことで不意を突かれてしまったよ。この試験も合格だ」

「はい。ありがとうございます」

「今の試験段階でもソレイアより強いんじゃないか? 本当に同じ学年で良いのか?」


 俺がそう思っていても考えないようにしていたことを口に出して言わないで欲しい。


「そもそも騎士学校に入学が必要なのか? そのまま仕官しても良い役職に就ける気がするが……」

「いいえ。私はソレイアの物ですので、ソレイアが騎士学校にいる間は私も在籍します」

「キュリー!? 何を言ってるんだ!」


 スロイン先生は面白い事を聞いたとばかりに顔をにやけさせた。


「ほう? ソレイア君は傷心とか言って、この子とよろしくやってたんだな」

「はい。よろしくしました」


 おぃい! マジで何言ってんだ! いつ俺がキュリーとよろしくなんてしたんだ!


「キュリー! 適当なこと言うなよ! スロイン先生に誤解されるだろ!」

「いいえ。嘘はついてません。ソレイアとは昨日の夜によろしくしました」



 は!? してないよ! もしかして……俺が寝ている間に何かしてたのかこの子!? 夜伽も任せろとか言ってたし勝手によろしくしたんだろ! 命令されないと何もしないとか言ってたのに……とんだムッツリさんだな!


「昨日の夜って……お熱いねぇ。こんなかわいい子を泣かせるようなことはするなよ? 早く騎士学校を卒業して騎士隊にでも入って養ってあげなさい」

「待ってください! スロイン先生は勘違いをしてます! 俺の話を聞いてください!」

「はいはい。試験が終わった後で聞いてあげるよ。取り敢えずはソレイア君のお人形さんの最終試験をしないとね」


 絶対に勘違いしてる! 面白がって学校中に広められたらたまったもんじゃない!


 スロイン先生はキュリーに木剣を手渡してから距離を離し説明を始める。


「最終試験は魔法ありの戦闘試験だルールはさっきの魔法の使用が可能以外はさっきと同じルールと思ってもらって良い。何か質問は?」

「いいえ。ありません」

「よし! じゃあソレイア君またよろしく頼むよ」


 俺はすぐにでも疑いを晴らしたいため、渋々といった顔をしながらも開始の音頭をとる。


「……始め!」


 またキュリーが先に動いた。今度は木剣を持っていない方の手から光を発生させ辺りを眩い光で包む。スロイン先生は瞬時に反応して目を閉じる。それと同時にキュリーは木剣をまた投擲し、間合いを詰める。だが、その木剣はスロイン先生が目を開けてから余裕で弾かれた。


「さすがに同じ様な攻め手は通用しないよ!」


 だが弾かれて宙を舞う木剣はそれだけでは終わらなかった。魔法試験のときの人形のように木剣が中心から弾け飛びその破片がスロイン先生に襲いかかる。

 スロイン先生は咄嗟に頭や胸などの重要な場所を本能的にガードするがそれで前が見えなくなり、キュリーの両手に握られた魔法で作られた氷の鋭利な槍を突き付けられた。


「ほんとに凄いな……降参だよ」


 その言葉を聞きキュリーは氷の槍を捨ててスロイン先生に問いかける。


「スロイン先生。これで私はソレイアと同じ学年ですか?」

「あぁ。問題ないよ。ソレイア君と同じ学年で入学する事を許可します」

「はい。ありがとうございます」


 こうしてキュリーは俺と同じ学年で騎士学校に入学した。そしてスロイン先生はソレイアのお人形さんが入学したと生徒の間にこっそりと広めた。

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