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21.強襲

 ルカちゃんの攻め手には劣勢を強いられ、且つ自分からは攻められないという、誰が見ても超優勢のルカちゃんが降参と言った。

 観客席の人達はどよめき、何か問題があったのか等の不安の声も聞こえてくる。

 かくいう私も釈然としない勝利宣言に呆然としていた。


「ど、どうして降参したんですか! あの状況で降参なんて……私が弱いからって馬鹿にしてるんですか!?」

「違うよ? あなたが強い人だからだよ?」

「う、嘘です! ルカちゃんが優勢のままだった筈です!」

「確かにそうかもね? でも、これ以上戦ったらあなたを死なせてしまうって感じたから」

「そんなの詭弁です! 私に対する侮辱とも取れますよ!」

「本当だよ? だってあなた、魔力量は少ないけれどこっちの攻撃に的確に対応して反撃してくる。焦らずに判断する冷静さと、そして何よりも……目が良いんだね? 羨ましいなぁ……その目と身体をルカにちょうだい?」

「な、何言ってるんですか!? あげれるわけないです!」


 冗談みたいなセリフなのに、顔がちっとも笑っていないのを見て背筋が凍り付く。


「そっかー。残念だなぁ。合意の上で貰いたかったんだけど、嫌だって言うなら……しょうがないよね?」

「だからあげませんよ!」

「君の許可は必要ないんだよ? そこのところ分かってる?」


 背後から掛けられた異質な声に危機感を感じ、その場から大きく飛び退く。

 私がさっきまで居た場所には、ソレイア先輩の妹さんが開けたみたいな黒い穴が存在していた。

 そしてその黒い穴から、ボロ切れを纏った男性が現れる。


「遅いよクトア様。ルカが何のために良い素材を見つけてから直ぐに、報告したと思ってるの?」

「ごめんね? 新しい素材をペル様からもらったから、ちょっと遊んでたら遅くなっちゃった」

「早く私をクルセントルナと同じくらいの自律人形にして? そしたら私があの御方に、いっぱい愛して貰えるんだから」

「本当にアルケディアは自分の欲に忠実だね?」

「……そういう風に作ったのはクトア様だよ?」

「そうだったね」


 間違いない! 見たことは無いけれど、この人が死神だってことは私にだって分かる!


「こんにちは。かわいい子リスちゃん? 君を回収しに来たよ」

「お呼びじゃ無いです! ソレイア先輩の妹さんの情報だけ吐いてさっさと帰ってください!」


 そんな私と死神の間に、試合の審判をしていた先生が割って入る。


「どこから入ってきたんだ! 大丈夫かいレルフリシラさ……」

「綺麗じゃない魂の人もお呼びじゃないよ?」


 言い切る前に審判の先生の身体が、右腋から左下にかけて大きく斜めに分断された。

 その光景を目にして会場全体が静まりかえり、誰かの靴音を皮切りに全員が蜘蛛の子を散らすように会場から逃げ出した。


「……今のはルカちゃんが斬ったんですか?」

「そうだよ? 別に貴重な素材でもないし要らないでしょ?」

「っ! 人の心は無いんですか!?」

「無いよ。だって自律人形だもん」


 ……これが自律人形ですか! ソレイア先輩の妹さんもそうでしたけど、ルカちゃんも狂ってます! キュリー先輩とは完全に違いますね!


 私は沸々と内から湧く黒い感情のままに斬りかかろうとした。


「落ち着けレルフリシラ。冷静にな」


 声と共に肩を叩かれ、後ろを振り返る。


「……ソレイア先輩。ごめんなさい」


 頼もしい師匠の登場に、私は完全に平静さを取り戻した。


「……久しぶりだなクソ野郎。聞き出せることを全部聞き出したら、ぶっ殺してやるから覚悟しとけ」


 ……私の師匠の方が、内心冷静では無かったみたいだ。






+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+






 まさか急に攻めてくるなんてな……待合室が遠くにあった所為で、審判の先生を死なせてしまった。


「君が子リスちゃんの師匠だね? ここまで育ててくれてありがとう。おかげで良い素材が手に入りそうだ」

「うるさい。黙れ。そして、死ね」

「私のお礼をなんでそんなに拒絶するの? 素直に受け取ってくれよ」

「は? 俺の大切な弟子を、ただの材料としてしか見ていない人格破綻者に何を感謝しろと?」

「だって本当に良い素材なんだよ? 見た目も良くて魂も色が付いていて、おまけに身体能力も悪くない! ああ、早くバラバラに分解して遊びたい!」

「バラバラになるのはお前だ。俺の前に現れたのを後悔するんだな」


 俺は既に抜いた剣を構えて戦闘態勢を取る。


「ソレイア先輩。キュリー先輩は?」

「ここから迅速に観客を逃がすために誘導してるよ」

「私達だけで勝てるんですか!?」

「心配するな。大丈夫だ」


 キュリーがここに来ないことを聞いたルカは心底残念そうな顔をした。


「ヴァルキュリエは来ないんだ。今度はルカがヴァルキュリエに勝って有用性を示したかったのに……」

「生憎とキュリーは多忙なんでね」

「そう? じゃああなたを斬り刻むね?」


 俺は咄嗟に横にいるレルフリシラを突き飛ばして、自身も横に大きく跳ぶ。


「へぇ、凄いね。見えない必殺の一撃を避けるなんて、やっぱりレルフリシラの師匠だね」

「……今のレルフリシラごと斬る軌道だっただろ」

「そうだよ? 別に手や足や胴体が千切れても、くっつければいいだけだし。無力化するならそっちの方が早いしね」

「人間は死んだら元には戻らないんだよ!」

「知ってるよ? だから優れた素材は、その子も含めてみんな自律人形になればいいの!」


 ダメだ! こいつらと話していると頭がおかしくなりそうだ!


「羨ましいなぁ。そんなに身体能力が優れているのに、私と同じくらいかわいいなんて……やっぱり欲しいなぁ。ねえクトア様? やっぱりあの子の身体は、ルカが使いたいな?」

「その身体はどうするの? それだって悪くはなかったでしょ?」

「う~ん。でも、やっぱり新しいのがいいなぁ。それにあの子の顔の方が、あの御方の好みに近いと思うの」

「じゃあその身体に、子リスちゃんの魂を入れようか。それでいい?」

「うん! それでいいよ!」


 既に俺たちに勝った後の話をしているそいつらに、レルフリシラと同時に斬りかかる。

 ルカが空間の位置をずらそうと手を振る前に、剣を下に叩きつけ魔法を妨害する音を出す。

 魔法が発動しなかったルカは、そのままレルフリシラの剣の峰を腹に食らい大きく後ろに飛んだ。

 俺も死神に斬りかかり大鎌と打ち合い、そのまま圧倒して死神を地面に押し倒し、喉元で剣を光らせる。


「ま、待ってくれ! 君の勝ちだ! 子リスちゃんも諦めるし情報だって何でも話す! だから見逃してくれ!」

「……じゃあ聞くぞ? 分割された魂はどうやったら元に戻る?」

「この鎌で混ぜられた魂を、綺麗に切り取って元の形に戻したら元の魂の形に戻る!」

「そうかそれが聞ければもう十分だ」

「だったらもう剣を退かしてくれ!」

「俺はお前を見逃すなんてひと言も話してないぞ?それに……お前は人が見逃してくれと言ったときに見逃したのか?」

「もちろんだ! だから殺さないでくれ!」

「俺の弟子に手を掛けようとしただけでも、お前が死ぬ理由には十分に足りてるんだよ」


 俺は死神の首元の剣を、無慈悲にも首に突き立てた。

 そして確実に再起させないために、そのまま首と胴体を分断した。もちろん死神はピクリとも動かなくなった。


「そ、ソレイア先輩? やり過ぎなんじゃ……」

「こいつらは心臓を突き刺しても死なないからな。ここまでやってようやく安心できる」

「だとしてもやり過ぎですよ……ソレイア先輩も十分危ない人に見えま……」

「レルフリシラ?」


 途中で固まったように喋らなくなったレルフリシラは前のめりに倒れた。

 その背中からは黄色の炎が噴き出していた。


 な、なんで! だってこいつはもう死んでる筈だろ!


 確かに自分の足元に、先ほど命を奪った死神が転がっている。

 そしてその不可解な出来事に、俺は背後から迫る大鎌に気付けなかった。

 俺の背中に刃物で斬り付けらる痛みが走り、そしてそのまま臓物を引きちぎられるような痛みが後から追うようにやってきた。


「おいおい。クトアが死んでるよ。誰がやったんだ?」

「この強い魂の輝きからして、多分こっちの男の方だろ」


 俺とレルフリシラの背後に一人ずつ、新たに死神が姿を現す。


 クソ……死神は三人居たのか……。


 魂を殆ど抜き取られたのか、身体に全く力が入らず身体を起こすこともままならない。さらには意識まで保っていられそうに無い状態だった。

 レルフリシラに吹き飛ばされたルカが、腹を押さえて立ち上がる。


「遅すぎだよー。遅すぎるからクトア様が死んじゃったよ?」

「まさか死神が人間に殺されるなんて普通は思わないでしょ」

「クトア様の代わりに、その子の身体の中にルカの魂入れてちょうだい? 残ったその子の魂は好きにして良いから」

「お! 良いのか! 色付きの魂なんて貴重だし、ありがたく貰ってくいくよ」

「こっちも色付きの魂だし、今日は良い収穫だったな!」


 レルフリシラの背後の死神が、レルフリシラから魂を全て引き抜いて、懐から取り出したビンに詰めた。

 顔から生気が消え、髪も白に染まったレルフリシラを見て、頭の中であの朝のことが思い出された。


 また俺は……目の前で大切な誰かを失うのか?


 レルフリシラの近くに居た死神は、大鎌でルカを斬って魂を取り出し、ルカの魂をレルフリシラの身体に入れた。

 魂が身体に戻ったレルフリシラは、失っていた顔の生気を取り戻し目を覚ます。


「おおー! やっぱりいい身体だね! 前のよりも大分馴染むようだよ!」


 レルフリシラは焦点が定まらない俺の方に近寄って来た。


「えっと確か……ソレイア先輩? かわいい弟子の姿を、最後に目に焼き付けてくださいね? どうです? 似てますか? これからはルカがソレイア先輩の弟子ですよ?」


 その言葉を聞いた瞬間に俺の中の何かが外れた。

 レルフリシラ視点から始まって、その後にソレイア視点に戻ります。


 本文中で明確に記載していないので、一人称と三人称で見分けて下さい。よろしくお願いします。

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