16.師匠の凄さ
レルフリシラのお祝い会パーティーを終えて後片付けを三人でしていると、レルフリシラが俺にどうせならとお願いをしてきた。
「ソレイア先輩のお家に泊まってみたいです」
「別に構わないけど……何で泊まりたいの?」
「同じ年代の男の人の家に泊まったことがないからです!」
多分この年くらいで異性の家に泊まるってそういうことが大半の理由だけど……。
そもそも君は男の人が苦手なんだろ? ホイホイ俺の家に泊まるって言って良かったのか? 俺はノン気だからレルフリシラを食べちゃうかもよ?
「はい。では私と一緒に日課になっている夜のご奉仕をしましょう」
「ま、毎日の日課なんですか?」
「キュリー? 嘘は良くないな?」
「はい。冗談です」
最近のキュリーはよく冗談を言うようになってきた。
まぁその冗談がキュリーの表情と雰囲気によって聞き手には、全く冗談に聞こえないのは言うまでもない。
「ソレイア。私が片付けを行うので、二人はくつろいでいてください」
「ありがとう。じゃあお言葉に甘えるとするよ」
俺とレルフリシラは居間の椅子に対面するように座る。
「ソレイア先輩。ありがとうございました」
「どうしたの改まって?」
「私に魔法を教えてくれたことに関して凄く感謝しているんです。魔力量が他の人よりも少なくて劣等感を感じて、自分から魔法とは距離を取っていたんですけど、ソレイア先輩にオリジナルの魔法を作る楽しさを教えて貰ったら、いつの間にか苦手意識が無くなっていたんです」
「魔法は自分の可能性だからね、自分が無理だって思っていると何もできない。逆に何でもできるって思っていると無限の可能性が生まれる……それが分かって貰えただけでも俺が教えた甲斐があったよ」
「そうですね。苦手は自分から克服しないといけないですよね……」
レルフリシラは何かを思案するように下を向くが、すぐに顔を上げて俺に目を閉じるようにお願いする。
何を意図しているのかは分からなかったが、俺は促されるままに目を閉じた。
目を閉じて待っていると左の頬に温かく柔らかい感触があった。
何か頬に当てたのかな?でも何だろう?
「もう目を開けて良いですよ」
「目を閉じている間に何かしたの?」
「そうですねぇ……お礼とでも言っておきます」
俺が目を閉じているくらいの少ない時間で、できるお礼なんてあるのか? まぁ何でもいいか。
「ソレイア。終わりましたよ」
「ごめんね一人に任せっきりにして」
「いいえ。汎用型の本懐ですので気にしないでください」
片付けを終えたキュリーがレルフリシラの横に腰掛ける。
「そういえば、ソレイア先輩って髪の色を染めないんですか?」
「俺は髪の色を染めていたことなんてないよ?」
「え? だって今は頭が黒髪ですよね? 私と出会った半年前は趣味の悪い白と黒のモノクロカラーだったじゃないですか」
そうなのである今の髪の色は黒一色に染まっていた。
趣味悪いって思ってたのか……別にやりたくてやってた訳じゃないんだけど……。
「まあ、そんなことはどうでもいいんです。ソレイア先輩とキュリー先輩の認定試験は明日でしたよね?」
「そうだな。俺も訓練の成果を試すいい機会だと思ってるよ」
「はい。今度こそソレイアに勝ちます」
「……総当たり戦では魔法を使えないからな?」
「はい。何とかして勝ちます」
「お二人ならトーナメント出場は余裕だと思いますが、油断はしないでくださいよ?」
「分かってるよ。でもトーナメントに俺たちが出たら、レルフリシラが不利になるんじゃないか?」
「今の私にかかればソレイア先輩なんて生ゴミも同然です!」
「はい。ソレイアは生ゴミです」
……俺だって人並みに傷つくんだよ?
「……キュリーのはただの悪口だからな? それより明日は認定試験だからもう寝ようか。レルフリシラはキュリーと同じ部屋で寝てくれるか?」
「分かりました。じゃあキュリー先輩行きましょう?」
「はい。お休みなさいソレイア」
「ああ。お休み」
キュリーとレルフリシラはいつもキュリーが寝ている客間に向かって行った。
かくいう俺も居間を出て二階への階段を上り自分の部屋に入った。
明日で俺がどれくらい成長できたか試せる……間違いなくあの朝のときよりは強くなっている筈だ。もう少し待っていてくれ。
俺は明日に備えるべく、目を閉じて眠りについた。
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俺が眠りについてからそんなに時間が経たない頃、布団の中に潜ってくる気配で目が覚めた。
またキュリーか……。いつもいつも懲りない奴だな。
「ほら、自分の部屋に戻るん……」
掛け布団を捲って布団の中にいるであろうキュリーに、声をかけたがそこには常習犯とは違った人物がいた。
「レルフリシラ? そしてなんで下着だけ?」
「寝ないんですか? ソレイア先輩」
「なんで布団の中に入ってきたの?」
「どうしてだと思います?」
「想像もできません……」
「嘘ですね。本当はなんで私がこんなことをしているのか、いやらしいソレイア先輩なら分かっていますよね?」
その小さい身体に似合わない、艶やかな色っぽい表情に心臓が大きく跳ね上がった。
え? ま、まさか本当に夜這いですか!? ああ! いけません! お師匠怒っちゃうよ!?
「じゃあソレイア先輩も我慢の限界でしょうし、答え合わせをしましょうか?」
「こ、答え合わせですか!?」
色々と小さいレルフリシラとですか!? 背徳感がMAXです!! で、でもキュリーと違って使命感じゃない純粋な好意だったら、答えてあげるのもやぶさかではない!
「正解は……レルフリシラが考えたオリジナルの魔法を見せるためです」
そう言ったレルフリシラの姿が歪んでぼやけ、姿がはっきりしてきたと思ったらそこにはレルフリシラではなく寝間着姿のキュリーが居た。
「え? キュリー?」
「はい。汎用型自律人形のキュリーです。さあ先ほどの続きをしましょうソレイア」
その瞬間に俺の部屋の扉がレルフリシラに開け放たれた。
「どうですかソレイア先輩! 対象の物体を別の物体に見せる魔法です! 生物だと声まで変えたら全く見分けがつかないでしょう!」
おい……流石に今回は怒ったぞ! 純情なお師匠を弄びやがって! 許せねぇ! 師匠の恐ろしさ見せてやる!
「ああ。そうだな。じゃあお前も偽物かもしれないから、身包み全部剥ぎ取って本物かどうか身体の隅々まで確認してやるよ!」
「な、なんで怒っているんですか!? 私が考えたオリジナルの魔法を見せただけですよ!?」
「やって良いことと悪いことがあることをきっちりその身体に教えてやる!」
「い、嫌です! ち、近寄らないでください!」
「問答無用だ! レルフリシラの師匠が誰だったかを思い出させてやる! 覚悟しろ!」
「ひぅっ!ご、ごめんなさい~~~!!」
結局レルフリシラに師匠の凄さを朝まで解らせるのに、朝までかかってしまった。
そしてもちろん寝不足のまま、認定試験当日を迎えたのは言うまでもない。
やったね!今日はどっちも更新できたよ!えらいえらい!(自分の頭を撫でながら)
明日も一応更新予定ですが、力尽きたら更新はないです。。。ごめんなさい。(多分力尽きます。期待しないでください。)