表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/23

10.誓い

 団体戦の模擬試合の授業を終えて学校から帰ろうと四階から階段を降りる。すると三階に降りたときに声を掛けられ呼び止められた。


「あの! 前の首席だったソレイア先輩ですよね?」

「そうだけど? 何か用があるの?」

「わ、私はレルフリシラって言います! 元首席のソレイア先輩にお願いしたいことがあって……」


 レルフリシラは恥ずかしそうに下を向く。その様子を見たキュリーが俺の肩を叩き自身の方に振り向かせた。振り返ると親指をグッと立てたキュリーが居た。


「ソレイア。ここは男を見せましょう。彼女の勇気を汲み取ってあげて下さい」

「え? どういうこと? ま、まさか!」

「はい。そういうことです」


 告白!? 一年も騎士学校に来ていなかったから、また学校から居なくなると思って今のうちに俺に告白しに来たとか!? なんて健気な子なんだ!


「レルフリシラだったよね? 君の気持ちは嬉しいよ」


 キュリー程じゃ無いとはいえこの後輩ちゃんも十分にかわいい見た目をしていた。薄茶色の髪にくりくりした目、背はかなり小さいので小動物……具体的に言うと全体的な色も相まってリスみたいな子だった。


「え!? じゃ、じゃあ!」

「でもごめんね。君のことはまだよく知らないから付き合うことなんてできないんだ」

「そ、そんな! じゃあ私はどうしたら良いんですか!?」

「まずはお友達からってことでどうかな?」

「お友達から……ですか?」

「そうだよ。まずはお友達から始めてお互いのことを知っていこう。そうやってお互いを知って行くことが恋人への近道かも知れないよ?」


 俺はレルフリシラを諭す様にそう話した。


「え?」

「ん?」


 レルフリシラの予想外といった返事は、その反応が俺にとっては予想外だった。


「お、俺と恋人になりたいんじゃないの?」

「いえ。ソレイア先輩のことは尊敬してますけど恋人になりたいなんて思ってないです」

「じゃ、じゃあ恥ずかしそうに何を言おうとしてたの?」

「私もいつか首席になりたいので、元首席のソレイア先輩に指導して頂こうかと……」


 う、嘘だろ! もしかして、ただの頭がおかしい恥ずかしい奴って思われた!?


「あ、因みに横にいるソレイア先輩のお人形さんにしている様な卑猥な指導じゃ無いですよ? それに、私なんかが鬼畜で卑劣な生ゴミみたいなソレイア先輩と恋人同士になるなんて……恐れ多いですよ」


 もっと酷い奴って思われたみたいだ。


「……ねぇ? 尊敬って言葉を調べたことはある?」


 この子は本当に人に教えを請う気があるのだろうか?


「ソレイア。どうするのですか?」

「……別に教えるのは構わないけど俺から教えることなんて何も新しいことなんて無いぞ?基本的に騎士学校で教えてもらうことの踏襲でしかないしな。それでも良いなら教えてあげても良いけど?」

「本当ですか!? じゃあ明日からでもお願いしますねソレイア先輩」

 俺からの指導の約束を取り付けて満足したのか、レルフリシラは伝えたいことを伝えたらすぐに階段を降りて行った。






+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+






 騎士学校からの帰り道に俺とキュリーはベルードさんにお礼と今の状況を伝える為に街の警備隊の詰所に向かった。


「お! ソレイア! 騎士学校の制服を着てるってことは学校にもう一度行き始めたんだな」

「はい。色々とお世話になりました」

「気にするな。何でもできる後輩の滅多にない緊急事態に助けを出せたのは俺の誇りだよ。そうだな……立ち直ったのなら教えても良いか、ソレイアの家の近くの広場に一年前に亡くなった人達の慰霊碑があるから、おじさん達のお参りをしてやりな」

「はい。行ってみます……そうだ! そのことに関してなんですけど!」

「なにかあるのか?」

「髪が白くなっている人達は死んでいないかも知れないんです! なのでしっかりと確認してから弔ってあげて下さい!」


 重要な情報だと思うことをベルードさんに話したが、特に驚いた様子は見られなかった。


「あぁ。みんな知ってるよ。しっかりと時間をかけて調査して、死亡を確認してから弔ってるよ。まだ生きているって判断された人は街の至る所の施設に安置されてるよ。」

「そうですか……任せて下さい!俺が時間が掛かってもなんとかしてみせます!」

「なんのことだか分からんがお前ならできるさ。ただ、一人で気負うなよ?」

「はい! ではまた!」


 俺とキュリーはお辞儀をして警備隊の詰所を後にして慰霊碑のある広場に向かった。

 その広場には、あの黒い朝に亡くなった人の数々の名前が刻まれた黒い大きな慰霊碑が鎮座していて、見慣れている筈の広場の筈が別の空間に感じた。

 そしてその慰霊碑の中に父さんと母さんの名前があるのを確認し、改めて父さん達は遠い存在になってしまった現実を突きつけられた気がした。


「父さん。母さん……改めてここで誓うよ。俺がルネを必ずこの街に連れて帰るよ」


 俺が慰霊碑の前で目を閉じ、手を合わせて宣誓をする。


「はい。ソレイアだけでなく私もお手伝いします。なので心配しないで下さい」


 キュリーも慰霊碑に向かって手を合わせ礼をする。


「……ありがとう。多分父さんと母さんもキュリーにそう言ってもらって嬉しいと思っているよ」

「はい。私とソレイアの新しい門出には、ご両親へご報告するのも大事なことだと思ったので」

「うん。別な意味に聞こえるけど今は素直にありがとうって言っておくよ」

「はい。どういたしまして」


 俺とキュリーは日が沈みかけて赤黒く染まった夕闇の空の下、慰霊碑の前で改めて父さん達と誓いを交わした。

明日は更新なしです。ごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ