9.ナロウくんの『りゆう』
「ぼくは、……ソラさんをまってるんだ。
ぼくの、あこがれのさくしゃさん。
さんかげつまえ、にゅういんするっていって、それっきりだけど……
ぜったい、かえってきてくれるって、やくそくしてくれた。
だから、やめたくない。
もしぼくがやめちゃったら、もうソラさんは、もどってこない。
そんな、きがして、……」
ナロウくんのめから、ぽろり、ぽろり、なみだがあふれだしました。
それでも、ひっしにいうのです。
「ソラさんが、はじめてだったんだ。
ぼくがとうこうした、さいしょのしょうせつを……
『ミッドないとクルセイダーズ!』を、よんでくれた。
ブクマをくれて、やさしいコメントまでくれたんだ……」
それは、とてもしあわせなじかんだったのでしょう。
ナロウくんのかおが、ちょっとだけ、ほころびます。
「ソラさんは、いっぱいおもしろいさくひん、かいてたんだ。
どれもどれもおもしろくって……
おもわず、おもしろいですってコメントしたら、すっごくよろこんでくれて。
それでまた、『ミッドないとクルセイダーズ!』にコメントくれて……
ぼくはうれしくってうれしくって、まいにちつづき、かくようになったんだ!」
いつのまにかナロウくんは、いっぱいのえがおです。
なみだののこるめも、きらきらとかがやいています。
「ソラさんにもらったアドバイスは、みんなすっごくためになったんだ。
ぶんしょうのつくりかたや、きまりごと、こんなさくひんもよんでみるとやくにたつよとか、いろんなことをおしえてもらった。
それだけじゃないんだ。みのまわりのこととかも、いろいろたのしくおはなししてくれて。
そのいいかたも、わかりやすくてやさしくて、それでておもしろくって……
ぼくはソラさんのこと、せんせいみたく、おにいさんみたくおもうようになった。
まいにちすっごく、たのしかった。
おたがいのさくひんに、かんそうとかかきあって。
メッセージも、いっぱいやりとりして。
えっと、しんキャラ……も、ふたりでかんがえたりして……。」
でもすぐに、かなしいかおになってしまうのです。
そうしてうちあけたのは、つらく、かなしいできごとでした。
「でも、ソラさんは、びょうきになっちゃって。
しゅじゅつするっていって、にゅういんするっていって、そのまま……
ソラさんは、やくそくをまもるひとなんだ!
ぜったい、かえってきてくれるはずなんだよ!
でも、でも、ソラさんがいなかったらぼく、もう、さびしくて、かなしくて……
『ミッドないとクルセイダーズ!』を、かけなくなっちゃったんだ……」
なみだながらのこくはくに、スランくんも、なきそうになりました。
ナロウくんが、いくつものはなしをかきはじめては、やめてしまった……
そこにはこんな、かなしいじじょうがあったのです。
「でも、こんなじゃだめだとおもって……べつのさくひん、かいてみたけど、……
やっぱ、だめで。
どうやってもやっぱり、だめで……
でも、ぼく、しょうせつかくことぐらいしか、できることなくって!
スポーツも、ゲームも、おんがくも、えも、ぜんぶぜんぶだめで!
ともだちも、いなくって……」
ナロウくんは、かたをふるわせてうったえかけます。
「ぼく、ソラさんにあいたいよ!
それでまた、しょうせつのはなしして……いろんな、みのまわりのこともはなして……
かおもしらないひとのことなのに、へんかもしれないけど!
ソラさんがいなくっちゃ、ぼくは……」
わんわんと、こえをあげてなくナロウくん。
スランくんは、ナロウくんをそっとだきしめました。
そして、おちつくまで、ぽんぽんとせなかをたたいてあげるのでした。