6.なかよしのあくしゅ
『ブクマはがし』はきょとんとしました。
ナロウくんは、もうしわけなさそうに、あたまをさげます。
「しってるひとにたのんで、かたちだけの『ブクマ』をもらっても、いみがないとおもうんだ。
それで、ちょっとだけめだって、ほかのひとにしょうせつをみてもらえても……
けっきょく、おもしろくなかったら、そこまでだし」
「ふうん?」
『ブクマはがし』は、ふん、とはなをならします。
「きのうとずいぶん、たいどがちがうな?
きのうのおまえは、そんなじゃなかった。
『ブクマはがし』のちからをりようして、とにもかくにも『ブクマ』をふやしてもらおう。
そう、かんがえてたよな?
かたちだけ、どころか、ほかのやつらから、ひっぱがしてきたやつかもしれない……
そんな『ブクマ』をおまえは、ほしがっていたんじゃなかったか?」
「ちがっ……」
ナロウくんは、びっくりしました。
「たしかに、ぼくはきみが、『ブクマはがし』だってわかって……
それで、ちからをかしてもらおうっておもったけど。
でも、そんなじゃないんだ。
そんなこと、おもいつきもしなかった……
そんなひどいこと、とても、かんがえつかないよ……」
いいながら、なみだがでてきました。
おとこのこは、ないちゃダメ! なんていわれたことも、もちろんあります。
でも、そんなことふっとんでしまうくらいに、ナロウくんはかなしかったのです。
「……ごめん」
すると『ブクマはがし』は、ぺこっとあたまをさげてきました。
「ごめんな。
ひどいこといって、ごめん。
おまえは、そんなやつじゃない。
わかってたはずなのに。ほんとに、ごめん!」
なんどもあやまって、あたまをさげます。
みれば、『ブクマはがし』も、なきそうなかおです。
ナロウくんはいそいでいいました。
「だいじょうぶ!
あやまってくれてありがとう。
ぼくはもう、だいじょうぶだよ!」
そうして、にっこりとわらいかけると、『ブクマはがし』もわらってくれました。
なかなおりのあくしゅをすると、ナロウくんはいいます。
「あのさ。ぼく、やっぱりほんとのブクマがほしい。
おもしろいっておもってつけてもらえた、ほんとのブクマが。
そのために、ちからをかしてほしいんだ。
それと、その……
きみのなまえを、おしえてくれないかな?
だって、やっぱ、おかしいじゃん。
きみはぼくをなまえでよんでるのに、ぼくはきみを、なまえでよばないなんて。
だめ、かな? いきなり、こんな……」
『ブクマはがし』のかおが、ぱっ、とあかくなりました。
ぽりぽり、とほっぺをかきながら、そっぽをむきます。
そのまま、しばらくだまっていましたが……
「『スラン』」
ちいさな声で、そういいました。
ナロウくんはあれ、とおもいます。
このなまえ、どこかで聞いたような気がする。
でもだめだ、おもいだせない。
それにいま、なんっかどっかが、ひっかかったような……
まあいいや。スランくんはスランくん。
ぼくのあたらしい、おともだちだもの!
「ありがとう!
よろしくね、スランくん!」
こんどはなかよしのあくしゅです。
ナロウくんはにこにこです。
いっぽう、『ようかいブクマはがし』あらため、スランくんはというと……
それまでのかっこよさは、どこへやら。
なにか、もごもごいいながら、ますます、てれてしまうのでした。