3.けいやくせいりつ!
『妖怪ブクマはがし』は、ずいっ、とナロウくんにせまってきます。
「さっき、おまえはいったな。
ああ、『ブクマ』がほしいなあ。
すぐにブクマはがしに、はがされちゃってもいいからさ、って」
たしかに、いってました。
ナロウくんは、がくがくとうなずきます。
『ブクマはがし』は、ふふんとわらってこういいました。
「いいだろう、オレさまがおまえに、『ブクマ』をゲットさせてやる。
おまえはその『ブクマ』を、オレさまによこすんだ。
なあに、ぜんぶよこせとは、いわないさ。
『ブクマ』がついてるさくひんのほうが、あたらしい『ブクマ』もつきやすいからな!」
ナロウくんはおどろきました。
『ブクマはがし』は、みんながこわがるようかいです。
だって、せっかくつけてもらえた『ブクマ』を、はがしてたべてしまうのです。
そんなことをされれば、これまでのがんばりが、みずのあわになってしまう。
そういって、みんなが『ブクマはがし』をこわがり、きらっていました。
でも、この『ブクマはがし』はどうでしょう。
ナロウくんに、『ブクマ』をゲットさせてくれるというのです。
かわりに、そのなかからいくつかは、もってくようですが……
それにしたって、ぜんぶじゃありません。
まるで、ゆめみたいなはなしです。
ナロウくんには『ブクマはがし』が、『はくばのおうじさま』にみえてきました。
あっというまにナロウくんは、ですますことばになりました。
きっちり、せいざにすわりなおして、あたまをさげます。
「いいんですか、ほんとうに?!
ぜひ、ぜひ、おねがいしますっ!」
「よーし、けいやくせいりつだ!」
『ブクマはがし』は、ナロウくんのおでこにてをふれました。
ちょっとだけ、ちりちり、としました。
でも、てがはなれたらもう、なんともありません。
「え、なに、したんですか?」
「『けいやくしゃのしるし』をつけたんだ。
これも、おまえいがいにはみえないから、あんしんしていいぞ!」
そっとかがみをのぞけば、まえがみのした、おでこのまんなかに、あかいほしがた。
ナロウくんのこゆびのさきくらいの、ちっちゃなしるしがついています。
これが『けいやくしゃのしるし』。なんだかまるで、まんがみたい!
ナロウくんは、ドキドキワクワクしてきました。
「いいか、ナロウ。
こまったときには、そこにてをふれて、オレをよべ。
すぐに、たすけにいってやる。
でも、オレのことは、だれにもいうな。
かくしても、すぐにそのしるしから、わかるからな。
もしも、やくそくをやぶったら……」
『ブクマはがし』はにやりとわらいました。
くちもとから、するどいやえばがのぞきます。
みぎがわだけおおきな、まっしろなやえばは、まるできゅうけつきのきばのよう!
「はわ、はわ、はわわわっ……」
ナロウくんはすっかり、ちぢみあがってしまいました。
『ブクマはがし』はそのあとも、なんだかいろいろ、いってました。
でも、おかげでちっとも、おぼえてませんでした。