表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/17

14.スランくんのこころ

 ナロウくんは、あ、とこえをあげました。

 まさしくいま、きがついたのです!



 スランくんが『だれかのブクマをひっぱがして、もってきてほしかったんじゃないか?』といってきて、おもわずないてしまったときのこと――

 スランくんは、こういってあやまってました。

『おまえは、そんなやつじゃないの、わかってたのに、ごめん』と。


 そのときには、ちゃんときづかなかったけど、これは、ちょっとへんです。

 あのころのスランくんは、ナロウくんとあったばっかり。

 ナロウくんがどんなこかなんて、よくはしらないはずです。



 そういえば、そのすぐあとにも、いってました。

『おまえには、じつりょくがないわけじゃない。

 そこはこのオレが、ほしょうする。』


 これも、いまおもうと、やっぱりへんです。

 スランくんはナロウくんのしょうせつを、まだよんでいませんでした。

 なのに、じつりょくをほしょうなんて、できるわけがありません。



 でも、そういうことなら、なっとくです。

 ソラさんは、ナロウくんのせいかくも、じつりょくもしっています。

 そんなソラさんのこころから、スランくんがうまれてきたのなら……

 スランくんがソラさんとおなじように、ナロウくんのことをわかっていても、ひとつもふしぎじゃありません!



 ひとつぶ、ふたつぶ。

 ナロウくんのめから、なみだがこぼれはじめます。



 そうだ。そうだった。

 スランというなまえだって、ふたりでかんがえたヒーローのもの。

 ふたりだけがしっている、だいじなだいじな、なまえじゃないか。

 ナロウくんはやっと、おもいだしました。


 スランくんは、ソラさんのこころからうまれてきた、ようかいだった。

 そして、ソラさんのかわりに、ぼくをたすけてくれたんだ。

 じぶんは、ほんのいっときのいのちとしりながら、あかるくわらって、いっしょうけんめいに。

 ナロウくんはやっと、そのことをしりました。



 スランくんはというと、ふたたびソラさんをみおろし、しずかなこえでいうのです。


「こいつは、あといっしゅうかんもすれば、たいいんできるだろう。

 そしたら、やきもちなんか、きえてなくなるだろうな。

 おまえはぜんぜんにんきのない、ていへんさくしゃのまま。

『ミッドないとクルセイダーズ!』も、ぜんぜんすすんでない。

 それもこれも、こいつをまちわびてのこと。

 ――やきもちなんか、きえてなくなる。

 そうしたら、オレもきえてなくなる」


 そうしてスランくんは、かおをあげました。

 きれいなあかい、ふたつのひとみが、せつなくナロウくんをみつめます。


「だからせめてそのまえに、ラストがよみたいんだ。

 だれよりも、いちばんさきに。

 オレが、だれよりあこがれてる『さくしゃ:NAROUナーロウ』の……

 いちばんだいすきな『ミッドないとクルセイダーズ!』を、いちばんによみおえたいんだよ!」


 けれど、スランくんはすまなそうに、あたまをさげます。


「ごめんな、ひどいこといった。

 そんなひどいこと、やさしいおまえに、できるわけ、ないのにな。

 オレのいのちをたすけるために、ソラのきもちをうらぎるか――

 ソラのきもちにこたえてやって、オレをけしさるか――

 そんな、ひどいせんたく、できるわけがない。

 かえろう、ナロウ。

 いまきいたことは、わすれてくれ。

 オレはしばらく、おまえのへやにはいかないから……」


 きびすをかえしたスランくんですが、すぐにおどろいてたちどまりました。

 だれかが、ぎゅっとうでをつかんでいます。

 それは、けついのひょうじょうの、ナロウくんでした。


「じゃあ、あした。

 またこのくらいのじかんに、ここにきて。

 きみはソラさんをおこして、ふたりでまってて。

 いい、ぜったいだよ。ぜったいだからね!!」


 スランくんがぽかんとしてると、ナロウくんはぱっとはしりさっていきました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ