13.ソラさんのやきもち
スランくんにつれられてきたのは、となりのとなりのえきのびょういん。
ナロウくんも、いったことがあるところでした。
こっそりと、しのびこむようにして、あるびょうしつをおとずれます。
そこにいたのは、ひとりのおにいさんでした。
ベッドのうえ、てんてきをうでにさして、じっと、しずかにねむっています。
いろじろで、きれいなくろかみ。めのいろはわかりません。
せはそんなにたかくないけど、とてもやさしそうなかおをした、おにいさんでした。
「スランくん。このひとは……?」
おにいさんのねがおをじっとみて、スランくんはゆっくりと、はなしだします。
「オレをうみだした、さくしゃだ。
びょうきで、にゅういんして、しゅじゅつして……
やっとたいいんできるとおもったら、さいはつして、またしゅじゅつ。
おかげで、ぜんぜん、しょうせつをかくことができなくて、くやしくてしょうがなかった」
「それって……!」
ナロウくんははっといきをのみます。
「そう。おまえのあこがれのさくしゃ『ソラ』だよ。
『ソラ』は、くやしかった。
やきもちをやいていた。
いまごろ、じぶんのいちばんすきなさくしゃは、どんどんはなしをかいて、とうこうして……
ほかのみんなにもじつりょくをみとめられて、すっかりにんきものになっているにちがいない。
たのしみにしていたはなしの、さいしゅうわももう、とうこうされているだろう。
リアルタイムでよみたかった。
いちばんに、おめでとうっていいたかった。
そいつにあこがれてつくったヒーロー『スラン』も、はやくとうじょうさせたいのに……
かっこいいねっていってもらいたいのに、じぶんはベッドからおきることもできない。
そうおもって、やきもちやいてた。
そいつとなかよくしてるであろう、まわりのやつらに。
そして、じぶんにはないセンスといきおいのある、そいつに」
ナロウくんのむねが、ちくっといたみます。
「そ、そっか……
だれだろうね、そのひと。
ソラさんにやきもちやかせちゃうような、すごいさくしゃさんって」
「おまえだよ」
ナロウくんは、え? とふりむきます。
スランくんは、かおをあかくしながらも、はっきりといいます。
「おまえだよ、ナロウ!
『ソラ』は、『さくしゃ:NAROU』がだいすきだったんだ!
やきもちやくほど、あこがれてたんだよ!」




