12.『ようかいブクマはがし』のひみつ
それから、ナロウくんはがんばりました。
できるかぎりのじかんをつかい、『ミッドないとクルセイダーズ!』をかきつづけます。
スランくんのアドバイスももらいながら、いちわ、にわ。じゅんちょうにかきすすめていきます。
けれど、さいしゅうかいまで、あといちわというところで……
ぱたっと、ナロウくんはつづきを、かけなくなってしまったのです。
どうしたんだ、つかれたの、ときくスランくん。
ナロウくんは、くびをよこにふります。
そして、こんなことをいいだしました。
「ねえ。スランくんは、ほんとうにしなないの?
スランくんは『ことばのあやだから』っていってた。
でも、ぼくにはそうはおもえないんだ!」
「そんなこと、……」
「じゃあ、オレはしなないよって、やくそくして。
それができないなら、ほんとのこといって!
ぼく、もう、ひとりになるのはいやだよ。
それも、わけがわからないまま……」
スランくんは、かくごをきめました。
ひとつ、しんこきゅうをすると、しずかにはなしはじめました。
「……なあ、ナロウ。
『ようかいブクマはがし』ってのは、どうしてうまれるとおもう?」
「えーと……そこに、ブクマがあるから?」
「だいたい、ちかいな。
おれたち『ようかい』は、ひとのこころからうまれるんだ。
『ようかいブクマはがし』は、ブクマがへったことをかなしむ、ひとのきもちからうまれる。
もっとせいかくにいえば、ブクマが『へった』ことがわかっちゃうくらい、ブクマがもらえないさくしゃの、『かなしみ』や『ねたみ』からだ。
おれたちがはじめにいて、ブクマがへったんじゃないんだ。
ブクマがへって、それをかなしむさくしゃがいて、『これはようかいブクマはがしのしわざだ!』ていいだして……それで、オレたちがうまれるんだ」
「へええ……
えっと、じゃあスランくんがうまれたのは、ぼくが『ようかいブクマはがしにやられてもいいから、ブクマがほしい』って、かなしいきもちでねがったからなの?」
「それはちょっと、ちがうな。
オレは、とあるさくしゃの『ねたみ』からうまれたんだ。
で、このよをフラフラしてるうち、おまえのこえがきこえた。
『こんなぼくのところには、『妖怪ブクマはがし』だって、きやしない。
ああ、『ブクマ』がほしいなあ。
すぐにブクマはがしに、はがされちゃってもいいからさ』
……って。
これはやばいとおもった。
おれがいって、まもってやらなきゃ……
きっと、もっとやばくて、ずるいやつにとりつかれて、たいへんなことになる。
そうおもったから、すぐにここにきたんだ」
「スランくん……!」
ナロウくんはおどろきます。
なんて、やさしいようかいなのでしょう!
ひとの『ねたみ』からうまれた、こわいこわいようかいだなんて、とってもおもえません!
「あっ、もちろん、おまえのさくひんにブクマがついたら、いくつかもらうぞ!
そこはぜったい、ゆずれない。
オレは、『妖怪ブクマはがし』だ。
ブクマはがしがブクマはがさなかったら、ブクマはがしじゃなくなっちゃうからな!
……でも、このままだとオレはもうすぐ、きえてなくなる。
オレをうみだしたさくしゃの『ねたみ』が、きえてなくなるからだ」
「それって……?」
「あした。となりまちのびょういんにいこう。
そこで、ぜんぶはなすから」




