第一章 日本の食事とUnknown
はい、たいが~すです。今回は食事回です。飯テロな文章を書ける他の筆者様は凄いな…と痛感いたしました今日この頃でございます。自分めではやはり限界しかないですな。才能が羨ましい…
お楽しみ頂ければ幸いです。
では、始まります。
試合が終わり、竜也とネロとアイシャはギルドの建物内に戻る。そして、アイシャが指示した通りにその中にある相談室に入る。アイシャは別のところで鎧や剣を置いて受付嬢の格好へと着替えて遅れてやって来た。そして、竜也とネロは机を挟んでアイシャと向かい合わせの状態でソファーに座る。そこからアイシャは質問を始める。
「ふむ、顔合わせも実力査定も行った。人柄もある程度は把握した。後は…そうだな。竜也とネロは泊まるところはあるのかな?」
「無いです。野宿でもしようかな…って考えてました。」
「じゃあ無いな。今から決めようとは思っていたんだが…そういう口振りから察するに泊めてくれるか、手配をしてくれるのか?」
「そうだ。もし、あったとしたらその場所をあらかじめ聞いておこうと思っていたが…無いならどうする?ここに泊まるか宿に泊まるか。どちらでも良いがここでは食事は出ないのでな。右も左もわからぬならここにするも良いのだが。ここに泊まるのは宿に比べればただ寝るのみ、という感じだ。どうする?」
「なら、ここに泊まるしかないな。ツテも市場価値もわからない。だから良い宿がとれるかどうかもわからない。ネロもそれでいいか?」
「はい。というより、寝る場所を頂ければそれだけでも贅沢です。ありがとうございます。アイシャさん。」
「決まりだな。因みに支部や本部は冒険者なら基本無料で泊まることができる。…のだが、やはり簡易的なものだ。良いものではないことに気を付けてくれ。とはいえ、安心でもあるがな。」
辺境などで宿屋が無い所への応急措置といったところか。もしくはぼったくられたり、嵌められたりして冒険者が使い物にならなくなることを避ける…なんて目的もあるのだろうか?なんにせよ助かるなこの制度は。
竜也は邪推しつつも、その制度に喜ぶ。今日だけでなく常に使える寝床がある、それはかなり安心できる。ネロも同じように考えているようだ。その様子に不思議そうに思ったのだろう、アイシャが
「ふむ、不思議なものだな。普通冒険者というものは己の身を賭して日銭を稼ぐ。故に金があれば、贅沢に使うことが大半だ。それに比べ君達は浪費する様子ではなく、堅実だ。特に竜也。君程の実力者なら普通は驕っても不思議ではない。なのに、驕りは微塵も感じられなかった。もし機会があれば、君の話も聞いてみたいものだ。」
と言う。確かに普通ならそうかもしれない。竜也が表社会で生きていたならそう思ったのかもしれない。だが、裏社会で生きていた竜也は安全・安定の価値がどれだけ計り知れないものかを知っている。まあ、話す必要は無いだろう。そう竜也は考えながらアイシャの話を聞いている。ネロもまた、真剣にアイシャの話を聞いている。
「因みに冒険者ギルドから外に出るとすぐに様々な店が並んでいるよ。商魂逞しいとは正にこのことだな。商人同士で常に鎬を削っているようだ。だから、食事に困ったりぼったくられたりする、ということはまあ無いだろう。それと寝た後は寝具を洗う、なんてことは考えなくてもいい。してくれれば助かりはするが、そこで時間を取ったりするよりは依頼をこなしてくれる方が我々にとって儲けが大きいのでな。後、もし何かあったら私やギルド員に相談してくれ。」
と、アイシャは色々な捕捉をしてくれる。そして、一通り説明を受けて、話は終わった。
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竜也とネロは食事するために町に繰り出す。盗賊のことで避難していた商人はもう既に戻って商売を始めている。商魂逞しいことだ。人の往来も活発に戻っている。活力に満ち満ちている。食事処だけではなく、装飾品店や雑貨屋に服屋もある。素材買い取り、売り出しなんてのぼりを掲げた素材屋まであるようだ。
もしかして、アイシャは商人が戻るまでは何も買えないと踏んで先に所用や説明を済ませたのか…?流石と言うべきかなんというか。後、飯のために町に繰り出したが…ネロの服を調えてやらないといけないな。流石に麻の服をそのまま、という訳にもいかないしな。幸いまだ時間があるし、馬を売って得た金もあるな。まあ、先ずは飯だな。
恐らく時刻としては午後3時程。腹拵えをしないと出る力も出ないだろう、と竜也は他にも色々考えながら食事処に入る。店の中は木材と石材を使ったまさしく中世ヨーロッパの食堂といった感じだ。
「よく来たな!竜也とネロといったか。盗賊を倒してくれたんだって?やるじゃねえか!おまけしてやる!ほら、食ってけ食ってけ!」
店の店主らしき男が好意的に話し掛けてくる。どうやらあの短時間でアイシャは通達までもこなしていたようだ。有能さがよくわかる。
「店主、お勧めをくれないか?二人前で頼む。」
「あいよ!お勧めなら唐揚げ定食だな!旨いのを食わせてやる!」
唐揚げ定食だと?いやいや待て待て。異世界に偶然そんな呼び名のものがあったんだろう。おかしいことは無いはずだ。大丈夫…
数分後、その唐揚げ定食とやらが出てくる。その定食に竜也は訝しむ。間違いなくそれは日本でもあった唐揚げ定食だったからだ。味噌汁や、箸までもある。唐揚げの量や飯の量が半端では無かったが。
「どうだ、旨そうだろう。さあ、食いな!」
気前よく主人は言う。ネロは目を輝かせている。そして、箸と共に置いてあるフォークやスプーンで食事を始める。
まあ、食ってから聞いてみるか。それにしても旨そう、いや旨いのか。間違いなく日本の料理を知っているとは思うがな、これは…
そう思いつつ、箸で竜也も食べ始める。
黄金のような唐揚げはその大きさからもよくわかる、肉厚さとそれを包み込むサクサクとした衣の食感。丁寧に付けられた醤油ベースの下味。ニンニクも混じったそのジューシーな味と溢れる肉汁。
茶碗によそわれているその白米は雪のような白さがあり、そして出来立てであることを示す湯気が上品に立ち上る。そして、一口食べてみればふっくらとした、それでいてベタつかず固くなく滑らかともいえる口触りで、それが如何に適切な水分量で適切な温度で炊きあげられたかを物語る。
そして味噌汁は濃すぎず薄すぎもしないで溶かされている味噌としっかりと出汁をとったことによる僅かに上品に隠れて香る海鮮の旨味の二重奏。そしてそれに入れられた具は豆腐にキノコに葱と様々な食感が味噌汁の奥深さを深めていく。崩れずにしっかりとしたままの豆腐。味噌汁と相乗し、味の引き立つキノコ。そして、それらを引き締めつつ食感を楽しませる刻み葱。組み合わされた味がお互いを高めることで生まれる旨味。
付け合わせである漬物や山菜も瑞瑞しい上にさっぱりとした味で唐揚げの重さを中和する。
完成されているといえる組合わせ。完成されている各々の一品。その旨さ。
竜也とネロが大量にあったそれをすぐに完食してしまうのも無理はない。それ程に旨かった。完璧だった。下手をすれば、日本のものより…いや、当然だ。なにせ、創意工夫と信念を持って料理された出来立ての品々。日本でそこら辺に売っていた弁当とは比べ物にならない。いや、比べてはいけない。それだけに、竜也とネロは途轍もない満足感と幸福感を感じた。特にネロは今までにないくらいの満面の可愛く美しい笑顔だ。店主はその様子を見て満足げに話し掛けてくる。
「どうだ?竜也とネロ。旨かったろう。因みにお代はこの量なら一人8銀50銅貨…ってところなんだが盗賊を倒してくれたサービスってことで二人ともタダにするぜ。これからも贔屓にしてくれ!」
「はい、とても美味しかったです!ありがとうございます!」
店主は気前よく、そして商魂逞しく笑っている。ネロは店主に丁寧にお辞儀までしている。
「ああ、旨かった。これからも通いたくなってしまうほどにな。ところで店主、この料理はどうやって知ったんだ?」
そして、竜也は店主の腕前を褒めながらも気になったことを聞く。当然だ。気にならない方がおかしいというものだ。その質問に店主は
「ん?これか?ヒノモトって国から渡ってくる料理でな。ある名前も知らない旅人が教えてくれたんだが俺はこれらの料理に惚れたんだ。だから、俺はこれらの料理を作ってんのさ。」
と、今度は商人ではなく料理人としての顔を見せて言う。旨いわけだ。ただ売るだけではなく、研究して意思を、自信を持って売り出すのだから。
それにしても、教えた旅人って奴が気になるな…。明らかに日本のものそのものだ。しかも、教えることができるのか。とはいえ、名前も知らないならどこに行ったかもわからない。今はまだわからないままで置いておくしかないな…。
竜也は謎の旅人のその後が気になったがこれ以上は聞いても無駄だと理解して、その話を切り上げて、店主に感謝を述べる。
「わかった。ありがとう店主。また来る。その時もまたこんな旨い料理を頼む。」
「当然だ!旨い料理を出すのが料理人の矜持ってもんだからな!いつでも食いに来い!」
そして、竜也とネロは食事処から出る。その後、服屋でネロの麻の服をしっかりとした布の衣服に変えたり靴を履かせたりする。今までにみすぼらしい感じの美少年が綺麗な身なりへと姿を変えた美少年へと変わり、店員や道を行く女性が思わずネロを見ている。見惚れている。それ程に美しくなったネロと共に竜也も服を変える。
自分の服装はカチコむ時の動きやすいメンズスーツで、この世界では違和感がある、と竜也は思っていたのだがそうでもなかったようで、変えられるのですか?と店員に聞かれた。中世とも近世ともとれる服に着替えて、金を払い、店から出る。
因みにだが、竜也は間違いなく二枚目で、男前である上に服から垣間見える美しく鍛え上げられたしなやかで強靭な肉体のせいで、女性達が思わず振り返って見てしまったり、見惚れていたり、更には鼻血を流していたりと、女性の注目の的ではあったが、慣れていたので竜也は気にも留めなかった。
ご覧頂きありがとうございました。筆者が好きな料理は勿論唐揚げでございます。その魅力が描き切れていた自信はございませんが、唐揚げのあの味を想像していただけたのなら、自分めも嬉しいです。
ありがとうございました。