第一章 異種族達と冒険者のシステム
はい、たいが~すです。今回は説明回ですね。申し訳ございません。ですが、必要でございますので、平に平に御容赦と御温情の程よろしくお願いいたします。
それでは、始まります。
竜也とネロはアイシャが示す手続きの通りに従う。
「この書類が示すのは、もし怪我をして死んでしまったとしても自己責任だ、ということと、先程話したルールが書き込んである。わかるか?」
アイシャが説明しながら、文字が書かれた書類を渡してくる。
…しかし、わからない。言語自体はある程度通じていた。だが、文字はどうやらその限りではなかったらしい。識字ができないのである。
「言うことはわかったが、文字が一切わからない。すまないな。」
「成る程。確か遠い異国の地から来たのだったか。大丈夫だ。そういうのも想定の内だ。というか、冒険者の識字率は案外高くない。内容を話していくが、殆どのかい摘んだ内容は先程話した通りだ。そこのネロとやらも大丈夫だな?」
「は、はい。なんとかわかりました。大丈夫です。」
「では、これに同意するなら、このプレートを受け取ってくれ。ちなみに、これはネームタグだ。クエストを受けて、遂行するときに手渡す。身の安否と、受けているクエストを知らせるものになる。いくつか渡しておくが、必要に応じて受け取ってくれ。」
「わかった。合理的なものだな。」
「ちなみに、遠い異国の地から来たのだったか。一体どんな字が書けるのだ?」
「あぁ、日本語というが平仮名や漢字が書ける。こんなものなのだが…わかるのか?」
「ん?あぁ、ヒノモトゴじゃあないか!成る程。どうやら教育を受けていたのだな。ネロとやらは…どうやら無理みたいだな。」
日本語が通じるのか…?不思議なものだな。だからこの言葉が通じているのかもしれないな。
そう竜也は思案する。ちなみに、ネロはオタオタしていた。アイシャは、
「ヒノモトゴがわかるならまあ、すぐにこの国の言語にも慣れるさ。…よし、これで、入会完了だ。これからよろしくな。竜也、ネロ。」
と、話しつつも、業務をしっかりとこなしている。その様子も充分様になっているところを見ると、案外歴も長いのだろうか。
「ところで、俺はこの国に来て日が浅くてな。周辺事情と情勢に疎いんだ。できればそれも教えてくれないか?後、この後、何をすればいいのかもな。」
竜也はアイシャに頼む。アイシャは快く教えてくれた。
「この国はアルヴェーダという。その他に様々な国がある。大国はこの国以外にはガーランドとグレズガルがある。他に帝国があり、ハルトリーとケストの2つがある。後は連合国が3つ。トラミネルとヨフラン、エスキアだな。今は戦争は起こっていない。というより、起こしている余裕がない。魔物がどうも多くてな。衛兵や兵隊などは魔物鎮圧の為にかなりの数が出払っている。」
成る程、どうりでこの町に衛兵などがいなかったわけだな。留めておく余裕なんてなかったわけだ。
竜也は山賊襲撃の時に衛兵がいなかったことと、冒険者が国に引き抜かれる訳を同時に得心する。そのままアイシャは説明を続ける。
「後、人間以外の種族もたくさん存在している。主に魔法のエルフ、鍛冶のドワーフ、雑貨品や日常品のゴブリンやコボルト、農産のオーク、建築や力仕事のオーガなんて感じだな。勿論、結束も能力も人を上回る。下手に喧嘩を売ったりするのは得策ではないな。
後、奴隷制度も存在する。」
「奴隷制度?前時代的なことをしてるもんだな。」
「恐らく、想像しているのは違うぞ?奴隷とはいえ、大抵は債務奴隷だし、戦争奴隷も犯罪奴隷もいることはいるが、無意味に傷付ける、食事を与えない、なんてことは禁止されている。戦争奴隷も、子どもまでは引き継がれず、孤児として扱われたりする。奴隷に犯罪をさせると持ち主も一緒に問われかねないし、債務奴隷は借金を返済しきると解放される。その時に持ち主が奴隷に用途以外の不適切なことをしていたと訴えられると、情報探索魔法が掛けられて、不適切だったとされれば罰せられる。つまるところ、奴隷、とは言っても国にもよるがそこまで酷い扱いは無いさ。」
「成る程。でも、かなり甘い気もするがな。何故だ?」
「確か大分昔はかなり酷い扱いだったみたいだ。だが、それで不満が爆発してな。強国で奴隷が国の大半を占めていた国が一夜にして滅びたことがあったそうだ。それから、すぐさま奴隷の扱いが今に準じたものになったそうだ。今そんなやつを見掛けたら国の衛兵が飛んで来てしょっぴかれるがな。」
「下だと思って舐めているからそうなるんだ。当然と言えば当然だ。
…んで、これからどうすればいい?」
「そうだな。まずは…まあ、連れてきた馬を買い取ろう。スワロウズが教えてくれたやつをな。その時にこの国の通貨と、その単位を教えよう。後は、冒険者ギルドのシステムを教えようか。」
すぐさまアイシャは馬を二頭買い取ってくれた。どうやら馬はやはり物入りなようだ。その時にこの国の通貨はアルダといい、銅・銀・金・白金がある。因みに次の単位に上がるには元の単位が100居る。つまり100銅貨は1銀貨。そして滅多に見掛けぬ真貨というのもあるらしい。これは100枚の白金貨と同等らしいが…馬二頭の値は2白金貨34金貨56銀貨だった。まあまあの値段だが、市場ではもっとするとアイシャは言う。まあ、維持費とかも掛かるし、関係を作るのを考えればこれくらいは構わない。
「まあ、相当稼いだな。そのくらいあれば、無駄に使わなければ、一年は暮らしていけるぞ。」
と、アイシャは言う。どうやらかなりの大金のようだ。丁寧に懐に仕舞いつつ、アイシャの続きを聞く。
「さて、冒険者ギルドとは互助会だ、と言ったな。とはいえシステムはかなりしっかりしている。まず、パーティなのだが、基本的に不足していれば、別の者と共に組むことを推奨する。後、クエストなのだが、難易度が低くてもある程度、高ければできるだけしっかりとブリーフィングをする。この時に難しい、もしくは専門的であれば道具を貸与、ないしは支給する。消耗品は支給だが、道具は貸与だから返却必須だ。覚えておいてくれ。」
「成功率を高める為には全力を尽くすということか。わかった。取り分は?」
「基本的にはイーブンだが、情報が少ない、あるいは支給品が少なければ4:6や3:7なども存在する。とはいえ、難易度が高いものはやはり稼げる。だが、受けるにはそれ相応の等級が必須だ。こんなものだな。後は、必要の無い道具ができたら此方では買い取るぞ。これらは貸し出す道具にもなる。一応覚えておいてくれ。」
これはよくできたシステムだな。成功率をできるだけ高めようとする工夫を感じる。だからこそ、依頼がしっかりと舞い込み、それを達成させるから、信用ができる。そして、冒険者の近くは安全圏だ。故に商売が繁盛する。そうなると、通商を広げるものが多くなる。そうするとまた人材が集まり、どんどん大きくなってゆくわけだ。そうして町が形成されるのか。面白いな。
「よくわかった。ありがとう、アイシャ。じゃあ、次に俺がすべきことはなんだ?まだ時間があるんだ。教えてくれないか?」
「ふむ、どうやら竜也は聞きたがりやさんのようだな。…そうだな。よし、次は私と手合わせしよう。」
…手合わせだと?
ご覧頂きありがとうございました。説明回でございました。本当に申し訳ございません。ですが、お次は麗しのアイシャ嬢の戦闘シーン(?)です。次回もお楽しみ頂ければ幸いです。
ありがとうございました。