第一章 自己紹介とオーク詐欺
はい、たいが~すです。全然たくさん書けませんね…書いてみてわかる長文を毎日投稿される作者様の凄さ。そして上手さ。まだまだ及びませぬ…
お楽しみ頂ければ幸いです。
では、始まります。
竜也とネロは冒険者達と共にラズーロの町に戻った。避難していた商人たちも、ぞろぞろと戻りつつあるようだ。そんな中でラズーロの町の冒険者ギルド支部の建物へと辿り着いた。その建物は、流石に絢爛豪華とはいかないまでも、その敷地は相当大きく、壁や屋根などもしっかりとした煉瓦作りであり、立派なものだった。
ここが冒険者ギルドの建物なのか…成る程、立派なものだな。
竜也はそう思う。ネロも同じ事を考えていたようで
「ここが冒険者ギルド…!凄い建物なんですね…!」
と呟いている。見たことのない規模の建物だったのだろう。その呟きを聞いた冒険者達は
「だろう!すげぇよな!やっぱ!」
「こんな大きな建物に住めたら良いよな!」
「実力者なら充分この大きさの建物に住めるなんて話を聞いたことがあるぜ!」
などと口々に話かけてくる。とはいえ、いつまでも外でたむろしている場合でもないだろう。竜也は入口の扉を開けて入っていく。それにネロも続く。
どうやら、山賊達が攻めてくるのに対して迎撃の準備を済ませて今から立ち向かおうとしていたのだろう、別の冒険者達と運が良いのか悪いのか思いっきり鉢合わせした。
「手前は誰だ!山賊の一味か!」
「くそ!先行してくれたスワロウズのメンバー達は全滅しちまったのか!?」
「でも、ここから先になんて行かせるつもりはないわ!ここで倒す!」
「くそが!なめんじゃねぇぇ!」
と、笑えない勘違いをされている。とはいえ、当然だ。ついさっきまで山賊達がいたのだ。しかも、この町に実力者は居ないと想定されていたからこそ、こんな短時間で片付いた、なんて普通は考えない。スワロウズ達は山賊達の惨殺体を見ていたからこそ把握できた訳だが、もしそこで遭遇していなかったら、町中の人々に山賊と勘違いされていても、全く可笑しくはなかっただろう。
「しかも、子どもまで連れてっ……!」
「ふざけるなっ……!」
「成敗してくれっ……」
「はい、皆ちょっと待て待て待てぇぇぇぇ!」
スワロウズ達がすぐに割って入る。
「この人らは山賊達を全滅させたから違うぜ!」
「滅茶滅茶強いと思うぜ!なんせ俺らが着いたときにはもう山賊達は全滅してたんだからな!」
「だからこの人は山賊なんかじゃあないぜ!山賊のことも含めて一緒にきてもらったんだぜ!」
と、フォローしてくれた。
成る程、後始末とかもあるから俺達見知らぬ者でも冒険者ギルドに連れてきたのか。
と竜也は得心する。そして、同時に存在を知ってもらうチャンスなのではないかと理解する。この世界でも恐らく知名度は必須だろうと思った竜也は自己紹介を始めた。
「俺の名前は竜也と言う。異国の土地からやってきた、と理解しておいてくれ。それとこいつはネロ・ブレーヴァだ。相棒として一緒にいる。」
「ネロ・ブレーヴァです。まだまだ弱くて竜也さんには全然及びません。ですが、頑張ります!よろしくお願いします。」
と、ネロもともに挨拶した。冒険者達は興味津々な様子で話しかけてくる。
「へぇ、竜也とネロっていうのか!山賊達を全滅させるなんてやるじゃねぇか!強いんだな!」
「おっ、それは和の国のカタナ、とか言うやつだな!成る程、そこら辺から来たんだな!よろしく!」
「それにしてもとんでもない男前と美少年よね。本当に冒険者なの?充分その容姿だけで食べていけると思うのだけれどもねぇ…」
と、それぞれに興味を持つ点は違っているようだ。それにしたって、流石に身売りなんてしないが…と女冒険者の言葉に竜也は思わず苦笑いをする。ネロも同感のようだ。と、そこへ受付嬢と思われる女性が駆けつけてくる。
「はぁ~男前なんだなぁ…そこの君も美少年だ。この二人が山賊達をこの僅かな時間で殲滅させるなんてなぁ。にわかには信じられん話でもあるが、スワロウズ達は正直だ。本当のことなのだろうな。竜也とネロと言ったな。私はオーク族のアイシャ・ノエルリンデというものだ。よろしくな。」
と、自らをオークと紹介した受付嬢は言った。
…なに?オーク?よく色々なもので見掛けるあのオークなのか?むぅ、創作と実物ってのは大きく違うものなんだな…
そう、竜也は内心でカルチャーショックを受ける。それもそのはずである。なにせ、目の前にいる自らをオークと語る女性は色々なところで描かれる、醜悪で、巨体で、臭く、下品で、そして雄ばかりである、というイメージとはかけ離れている、なんてものではなく最早正反対と言っても差し支えない、まるでエルフのような姿であったからだ。
確かに豚の体脂肪率ってのは15~20%が標準で、それを人間に換算すると、女性はグラビアアイドルにも匹敵する、とか言ってたな…その上、確かオークってのは豊穣の妖精で、エルフのような妖精よりも益のある存在ではなかったか?そうだと考えれば、これにも納得はいくが…
竜也は思考を張り巡らせつつ、もう一度アイシャをみる。
陶磁器のような白い肌、それを引き立たせるように差す朱色の唇とほんの少し桃色の頬。零れるようにサラサラで透き通る絹のような金色の髪。野性的であり、それでいて滑らかで力を湛える鋭さを持ち合わせた美しい碧色の眼。健康的で、それでいて黄金比を実現している芸術的な大きさと形を持つ美しい四肢と顔貌。母性を、無条件の偉大なる愛とも言えるそれを湛える豊満で美しい形を保つ胸。そして、気品溢れるその佇まい。
オーク詐欺
竜也の脳内にそんな言葉が浮かび挙がってしまう程には健康的でどの世界でも男性を振り返らせるような、下手をすればエルフよりも美しい、絶世の美女が目の前に居た。
事実、男の冒険者達はアイシャに釘付けになっていたり、女の冒険者達はアイシャのその美しさに嫉妬したり、胸に手を当てて絶望した顔を晒していたりしている。
「ふむ、で、君たちの実力はまあ、相当なものなのだろう。だが、まだまだ実績がないな。冒険者になるとしてもまだ知識もないだろう。ちなみに、私が冒険者ギルドについて説明した方が良いかな?」
と、アイシャが問うてくる。願ったり叶ったりだろう、竜也はすぐさま頷いて承諾した。
「うむ、承知した。まずは、冒険者ギルドというのは互助会のようなものだ。どうしても一人で出来ることは少ないからこそお互いに助け合うために設立されたものだ。そして、ここは実力者が第一、ではない。やはり、実力者であろうとも信頼がなければ話にならんからな。つまるところ、評価によって立場が良くなっていく。後、その立場を示すものが等級であるのだが…この等級の向上は信頼と実力両方求められる。
等級の段階は銅・青銅・鉄・銀・鋼・金・ダイヤ・オリハルコンと8段階ある。
銅は初心者、青銅は一人前、鉄は一流、銀は超一流、鋼は天才、金は傑物、ダイヤは化け物、オリハルコンは英雄だと定義されている。
基本的に大抵の冒険者は鉄で終わる訳だが、恐らく君は銀以上に駆け上がれるだろう。だが…銀以上は少ないし、現状では金が最高位だ。このアルヴェーダ王国も相当大きいが如何せん等級の判断が厳しい。銀以上なら普通にどこでも優遇が受けられる程だ。ここまではいいな?」
アイシャは言う。竜也は頷く。ネロは理解ができていない、わからない表情をしているが、続く。
「これでも銀以上は私たちには化け物と呼べる存在だ。故にそこから上の等級は国からも引き抜きの話を持ち掛けられることもある。まぐれでは上に昇れないからこそ等級は実力証明にもなるわけだからな。勿論冒険者ギルドはそれらの戦力とも言える者達が所属しているわけだし、そんな者達が集まってくる可能性もあるわけだから強引な圧を掛けてくることは殆ど無い。とはいえ冒険者は常に危険と隣り合わせだからこそ安定を求めて国の誘いに応じる者も勿論いるがな。
つまるところ、冒険者とはかなり自由で見返りも多いがその分責任が大きい。理解したかな?」
アイシャは説明を終える。
成る程、実力だけでは上がれないからこそ、恩恵も途轍もない訳だ。だからこそ信用も大きいのだな。
竜也はアイシャの説明に納得する。ネロはやはり、理解できていないみたいだが。
「わかった。なら質問だ。冒険者ギルドで、指定されるようなルールはあるのか?」
竜也はアイシャに問う。アイシャは、
「ああ、あるさ。犯罪となるようなことは全面的に禁止されている。当然だな。もう一つは、等級は年に一度更新される。後は基本的には無い。」
と、答える。そして続け様に、
「入る気にはなってくれたかな?」
と、問いかけてくる。
「確かにノーリスクハイリターンってわけか。わかった。加入手続きをさせてくれ。」
かくして竜也とネロは冒険者となることにした。果たしてどんなことが待ち受けるのか、まだまだわからない。だが、少なくとも今より状況は良くなるだろうと思いながら竜也は手続きを済ませていく。
ご覧頂きありがとうございました。やはり、表現というものは難しいですな…拙作ですが、精進してよい作品に近づけていけたらなと思っております。またご覧頂ければ幸いです。
ありがとうございました。