第一章 港町ラズーロと無法者達
はい、たいが~すです。
肉付けはやはり難しいと思う今日この頃でございます。後、やっとタイトルをほんの少し回収できたかな?と思います。まだまだ拙いですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは始まります。
「…自分じゃ駄目ですか、そうですよね…こんなひ弱な孤児を弟子にとる馬鹿はどこにもいませんよね…」
と悲観してネロはいう。その声は悲しみ、嘆き、辛さ、絶望を含み静かで暗い。そして、元々冒険者という危険な職業に誘われる子どもが往々にしてろくな生い立ちな筈もないだろうという竜也の予想は当たることになる。そして、ネロは自分の言葉を勘違いをしているなとも気づく。
「ああ、違う違う。弟子にとる気が無いのは仲間として一緒に強くなろうってことだ。孤児だなんてのは関係ない。第一俺と同じスキルだって言うのなら意思の強さを鍛えないと駄目だ。後、俺も元々孤児だったんだ。一緒じゃねえか。なら、弟子じゃなくて俺の隣に並んでみせろ。そっちの方が強くなれるだろ。」
と、さも当たり前の様に言う。その思い切りの良さと、その豪快さにネロは驚きながらも、
「本当に、本当にいいんですか…!隣にいて…!僕は弱いし、足を絶対引っ張ると思います…それでも本当に…」
「当たり前だ。いざ危なくなったら助けてやるさ。第一意思の強さが直接強さにつながるんだ。そんなにネガティブでどうする。男なら胸を張れ。足を引っ張ったっていいさ。お前も絶対強くなれる。だからもっと自信を持て。」
自信満々に、それでいてその自信に見合うようなまでの大きな態度は不思議と安心させる力があった。ネロは恐る恐る
「…何故そんなにしようとしてくれるんですか?」
と、問う。ネロは今まで頼るものもなく、かなり過酷な生活をしてきて、しかも自信を打ちのめされていたからこそ、そんな風な言葉が出たのだろう。それに対し、竜也は真剣に
「お前は俺に色々なことを教えてくれたんだ。だからこそその礼をしなきゃならない。これはその礼替わりにすることだ。これは俺の信念なんだ。」
と、一言一言に思いを込めて言う。騙すことなど微塵も考えずに、丁寧に紡がれていくその言葉はネロを納得させるには充分だった。
「ありがとうございます!よろしくお願いします!竜也さん!」
「おう、よろしくな。これから一緒に強くなっていこうな。俺とお前は同じ仲間だ。」
竜也とネロ・ブレーヴァはこの世界でお互いに信頼しあい、そして名前を馳せていく存在となる。その、物語が今始まったのだ。義理人情に厚い男と男に惹かれた少年が紡ぐ、大きな大きな物語である。
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竜也がネロと共に草原を歩いていると少し遠くになにかが太陽光を反射して煌めいているものが地面に刺さっているようだ。その姿に、竜也は思わず走り出した。驚くネロを置き去りにして。何故ならその刺さっているものに親近感と、そして確信を抱いたからだ。その刺さっているものの正体、それはーーーーーー
虎桜!?確かに死んだ時に握っていたが、それがこちらの世界まで飛んできたのか!?
それはまさしく日本刀。しかも、只の日本刀ではない。それは、竜也が持っていた、業物であり、相棒であった愛刀である虎桜である。鞘までもが地に刺さっていた。
「竜也さん、それはなんですか?剣…のようにも見えますけども…」
ネロが走って追い付き、息を少し切らしつつ問う。
「日本刀って言うんだ。で、これは俺の愛刀である虎桜って言うんだ。まさしく俺の剣術の相棒、いや、そのものだ。」
と興奮しつつ竜也は答える。その刀は一点の曇りもなく、そして刃こぼれも起こしていない。そしてその刀の姿は剣の道を知らないネロでさえも凄いものだと理解する程の業物であった。もちろん、刀は磨きあげられてこそのものであり、竜也の手入れも完璧に近い状態でされていたことも伺える、そんな至極の一品でもある。
かくして、竜也は刀を手に入れて、ネロと共に草原を歩き、近くの町に向かっていく。昼下がりの出来事であった。
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竜也とネロは2時間程歩いてやっと町に着いた。そこは人の往来が頻繁に行われ、海にも面しており、商業都市というに相応しい様相を呈していた。
「ここの町はラズーロと言うんです。人がいっぱいいるし、結構色々売ってるんですよ!」
と、ネロは少し得意気に言う。恐らくここで暮らしていたのだろう。そのネロの姿に竜也は微笑ましさを感じつつもラズーロの町並みを見てみる。
「へい、らっしゃい!ここの魚は旨いよ!安いよ!」
「お客さん!いい品物が沢山あるぜ!胡椒にシナモンに山椒に!安いよ!安いよ!」
「ほらほら!色々な交易品がよりどりみどりだよ!買った買った!」
などという商魂逞しい声が店先から聞こえてくる。やはり、活気があるというのは良いものだと竜也は一人納得しながらもふと気付く。そういえば身を立てるための手段が無い、ということに。つまるところ、この世界で使える金が一銭も無いのである。元手どころか何かを買うことすらできない。
これは不味いな。とにもかくにも金が無い。このままでは何も食えずに死んでしまう…どうにか金を稼がないと…
そう、危機感を募らせる竜也の元に、突如それは起こった。
「ヤバい、山賊だぁぁぁぁ!皆逃げろぉぉぉ!」
つまるところ、不届き者の乱入である。そしてそれは、打ちのめして日銭を稼げる可能性の高い出来事である。なぜなら、元の世界でも抗争を何回も経験しているのだから、乱戦とは十八番とも言えるような戦いであるからだ。しかも、相手はこちらを殺す気でくるだろう。男は殺し、女は連れ去る。そんな外道なら殺りやすい。後腐れも無いだろう。
タイミングが悪かったな。お前らは俺が生きるために糧になってもらう。お前らが今までに他人にしてきたようにな…
竜也は虎桜に手を掛けつつ山賊の方を見る。そして、
「山賊!?危ないです!逃げましょう!竜也さん!」
と言うネロを差し置いて、竜也は山賊のいる方面に向かっていく。遠くで大きな声で互いに意思確認をしているのか
「男は殺せ!女は連れ去れ!金品は全て奪え!」
などと喚いている山賊に対して、竜也は徐々に殺意のタガを外していく。その、人を殺した数が違う男の放つまごうことなき明確で研ぎ澄まされた殺意は山賊の乗る馬たちを怯えさせ、震えあがらせていく。ネロもそれに気付いて少し怯える。
だが、第六感が鈍ってしまっている人間である山賊達はその途轍もない殺意に気付くことができずに竜也の元に下卑た汚ならしい笑みを浮かべて突撃していく。その先が、その未来が自分達が殺戮されるものだということにも気付くことができずに、全く勘付きも怖気付きもせずに只殺されに向かって逝くのだった。
ご覧頂きありがとうございました。やっと少しタイトル回収できましたかね?後、ちょっとテンプレ的な展開でございます。お楽しみ頂ければ幸いです。これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。