第三章 湿地とスライム
はい、たいが~すです。今回はスライム回!ぷるぷる、僕悪いスライムじゃないよ!(勇者すら差し向けられそうな極悪面)
拙作ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは始まります。
深沼、それは沼地に囲まれ、湿林とも言うべき植物と水に恵まれた場所。しかし、水捌けがかなり悪く、水が飽和しておりそこかしこがぬかるんでいる土地。
竜也達とフォーナム達の脱初心者パーティー一向はそんな場所に到着していた。竜也達は初めての、フォーナム達にとっては何度目かの地帯である。
この場所はラズーロを南に2時間程行った先にある。深沼に着いた時は10時くらいだった。
因みに難易度としてはそこまで高くはない。が、魔物の森と違うのはかなり拓けた場所である、ということ。つまり、かなり魔物を発見しやすいし、されやすいということ。
そして、何より危険な魔物としてスライムが確認されている。
スライム、それは体が液体で構成され、体を保つための核を体内に持っている魔物。
それゆえにここでは水を吸って肥大化したのが現れることが多く、危険な魔物として扱われる。
スライムはまさしく大きさが強さに直結している。特にスライムキングと呼ばれる大きさを持つスライムの魔物は滅多に現れこそしないが、その大きさ故に刃物が通っても核に届かない、魔法すらも届かない、なんて事もよくあり、銀級ないしは鉄級パーティー2団のクエストとして扱われるなど、その特殊性と危険性は折紙付きだ。
滅多に現れないと言ったな、あれは嘘だ!
そう言わんばかりに竜也達とフォーナム達の目の前にスライムキングの大きさを持つウォータースライムは現れた。
フォーナム達は戦慄している。大きさもあるが、なにせ、スライムは子供に寝るときの脅しとして使われるそうなのだ。
いい子にして寝ないとスライムが枕元に寄ってきて窒息させちゃうよ!と。
それを聞いた時、竜也達はなんて具体的な脅しなのだろうとかすかに笑ったぐらいである。特に竜也はよくスライムが
ぷるぷる。僕悪いスライムじゃないよ。
なんていう台詞を言っていたことも思い出してしまったものだが。
それは一旦置いておいて。
今の状況としてはかなり不味い状況でもあった。なにせ、スライムキングはフォーナム達では役不足だろう。ここは一旦退くべきなのかもしれない。しかし。
ネロとフェンラルとサタシャは既に戦闘態勢に入っていた。サタシャはどうやら獣の魔物で心を通わせる者は傷を治し、心を通わせる時もあるのだが、基本的には冒険者達のように相手取るようだ。
ネロとフェンラルはフォーナム達よりも果敢に前へと躍り出る。そして、迷わず近接戦闘を仕掛けている。
スライムキングはその巨体を活かしてのしかかったり、体当たりしたりしようとするが、ネロが刀で足下を斬り裂き、フェンラルが牙や爪で体中を削いでゆく。
スライムとは言え体を分断されればそこは元の液体へと変化していく。勿論再吸収することもできるし、スライムキングはそれを試みている。が、それを上回る速度でネロとフェンラルが体中を滅多斬りにし、ズタズタに削いでゆく。
竜也はスライムキングが怯む隙を一切見逃さない。
居合い一閃。
別に居合いは強い訳ではない。だが、相手の懐に潜り込めば潜り込む程に届く範囲が伸びる。
刀は構えてる状態よりも鞘に納めている方がやはり潜り込みやすい。それを相手の性質に合わせて判断した。
スライムキングは生半可な傷ではすぐに体を接収し、完全に元通りへと直してしまう。しかし、コアは相当に深い場所にあり、届かない。
それを見越しての大切断。体の半分まで切り込みを入れる。そして、そのまま斬り返し、核を切断しようとする。
しかし、それは届かなかった。竜也達は危機を察知して思わず後方へと飛びずさる。竜也は斬り返しは危険だと察知して攻撃を中断した。
飛びずさる直前にスライムキングの体が一瞬縮み、飛びずさった直後にスライムキングの周辺に体から超高水圧の水が吹き荒れたのだ。
まるで水爆弾。スライムキングの辺一帯はその吹き出た水流が見事に抉り、僅かながらも地形すら変えている。その水流にもし巻き込まれていれば、体が様々に分断され、即死していたかもしれない。それ程に強力な無差別範囲攻撃だ。
最も当たれば、の話ではあるが。
凶悪だろうが関係無い。上回ればいい。竜也達は一切戦意が衰えていないし、集中も緩んでいない。しかも、その攻撃はスライムキングにとって体を使った捨て身に近い攻撃だろう。死にはせずとも体が一回り小さくなっており、スライムキング討伐がより一層簡単になった。
「暴風裂断刃!」
サタシャはその弱った瞬間を逃さず、詠唱していた風上級魔法をキングに放った。それは局所的に暴風を起こし、風の刃、すなわちかまいたちを生み出す。それをスライムキングを包み込むようにして放ったのだから、スライムキングは成す術もなく体を分断され、切断され、切り落とされ、そして核を晒し始める。
それをどうにか核を守ろうと水の体を総動員して核を包み込むのだが、暴風に曝され、核を守ろうとする体は減っていく。
そして、暴風の魔法が消える頃にはその体はキングと呼ぶにはあまりにも小さくなり、キングと呼ぶに相応しい大きさを持つ核とそれを僅かになんとか包む水のみが残っていた。
サタシャはそれに躊躇なく近づいていく。
そして一閃。サタシャが近づいて短刀で止めをさした。
核を傷つけられて体が保てなくなり、スライムキングは水をその場に吐き出して力尽きた。
「凄いっすねぇ、出番なかったっす。はえぇ…」
と、僅かながら震えてタロスが、
「アイシャ殿や竜也殿並みか。ネロ殿もフェンラルもサタシャ殿も。恐ろしく、そして頼もしいものだ。」
と、尊敬と畏怖を込めた目でペルーナムが、
「凄…私まだ中級までしか使えないのに…エルフてやっぱ凄いのね…」
と、呆然としながらもサヘルが、
「…一方的。組んで良かった。」
と、信頼を込めてトリンドルが、
「やはりお強いのですね。本当に憧れますね。竜也さん、ネロ君、フェンラル。そしてサタシャさんも恐ろしくお強い。」
と、敬意を込めてドンモが呟いていた。
それにしてもサタシャは対人戦には不慣れでも対魔物戦なら充分良くやってくれる。いや、状況次第ではこの場の誰よりも切り札たり得る。これは、とんでもないな…
竜也はサタシャのその魔法に思わず舌を巻く。闘ったとしてもサタシャに負ける気は微塵もしていないが、殲滅においては自分すらも遥かに上回る。適材適所。間違いなく仲間としても穴を埋めるに足る人材をこうも偶然に拾えたことに感謝していた。
「どっ、どうでしたか!?お役にたてましたでしょうか!?」
「ああ、充分すぎる程に貢献してくれた。よくやってくれた。サタシャ。ここからも頼むぞ。」
「ありがとうサタシャさん。物凄く助かりました。」
「えっ、あっ、はい!ありがとうございます!」
竜也達はスライムキングの戦闘でお互いに認め合ったのだった。
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スライムキングを倒したが、これは依頼目的ではない。元々採取依頼なのだ。
「ありました!ここら一帯の薬草はまあまあですね。」
冷静に手際よくサタシャは目的の月下美人草と他に効能がある薬草や解毒草などを集めていく。
「これは…癒し葛。これは…月下美人草。これは…水泡菫。これは…ゲドクドクダミ!稀少ですね!やった!」
どうやら彼女は戦闘でもあれだけのことができるが、医療薬学の方が得意なようだ。しかも、恐らく好きなことでもあるのだろう。稀少だ、というゲドクドクダミを手にした時に興奮していた。それ程の熱意と知識があるようだ。
ドンモはそれをまじまじと観察しながら時折サタシャを手伝っている。ドンモは確か狩人を志望していた。その知識を貪欲に吸収しようと集中して観察しているのだろう。
これならペルーナム達もいつかは採取依頼をこなす日が来るのだろうな。そう竜也は予感じみたものを考えながらも周囲を見渡していた。
スライムキングを倒した後も何度か小さなスライムとの戦闘があったが、生まれたてだったのかそこまでフォーナム達も苦戦することなく、倒して採取を続けた。
「集め終わりました!」
深沼に来て3時間。ついに採取依頼の数量を超えた。その後も携帯食を食べながら1時間ほど採取を続け、サタシャがほくほく顔を見せている。
判明したことなのだが、サタシャは収納空間という収納袋の上の魔法を身に付けており、採取した素材をその空間にいれていた。
することを終えて、皆が依頼の品を確認し、そして深沼から出発しようとした。その時だった。
地響き。
異常なまでの地鳴りと共にある魔物が一向の前に現れた。
それはエンペラースライム。
キングすらも上回るまさしく皇帝と呼ぶに相応しい魔物が、いやスライムが脱初心者パーティー一向の前に現れたのだった。
ご覧頂きありがとうございました。キングスラ●ムは有名ですよね!あのド●クエの!作者のはそれより遥かに凶悪ですが。
またご覧頂ければ幸いです。
ありがとうございました。